ご飯はちょっと…
生まれてから一ヶ月が経ったという所。
この日は、イタチにとって大きな転換期となる、ある事をする日だそうです。
それは成長によって食べる物が変化するタイミング…
つまりは乳離れでした。
私達の目の前には、ネズミ、トカゲ、虫食いがあるリンゴ、サクランボみたいな赤い木の実、そしてG…
恐らく今の私の目は、他所から見れば、いつもは綺麗な赤い目が、暗い死んだ目になっていたことでしょう…
それぐらい、私の気分はどん底まで落ちていました。
「恵那〜。これ、おいしそうだね〜」
そんな私をよそに、二匹の兄は、本当に美味しそうな物を見たように目を輝かしていました。
まあ…、確かにこれに上手く慣れないと、この先餓死するかもしれないし、どうせ逃げられないのだから、早めに吹っ切れた方が良いんですよね…
嫌なもんには違いありませんけど…
「これがネズミ?ちっちゃ〜い!」
そんな事を言うのは、次男の野鎌です。
今はもう、生まれた頃からどんどん大きくなって、目算ですけど五十センチくらいになっています。
立派に妖怪サイズですね…
そんな姿を見ると、昔は野鎌も、貴方が持っているネズミと同じくらいだったんだよ…って思わず言いたくなりますね。
それで飯綱?。その手に持っている物はなんですか?。
よく見なくても分かりますから、その黒い虫を持って近づかないでください…。欲しく無いですよ、本当ですから。
えっ、何で目を輝かしてこっちに来るんです?(震え声)
ギャー!!
「つ、疲れました…」
飯綱め…、私があれに怯えているのが分かって楽しいのか、ずっと鬼ごっこするハメになりましたよ…。
しかも、私、ご飯食べてなかったんですよ.....。もうお腹がペコペコです。
幸い、Gは飯綱が食べたみたいで、もう眠った口にそれっぽい脚が引っ掛かっています。
あとに残っているのは、野鎌が食べたネズミの食べ残しと、木の実とかですね…
とりあえず…、虫食いがあるとはいえ、見慣れている林檎でも食べましょうか。
シャクッ!!
酸っぱい…
甘みもありますけど、やっぱりちょっと渋みもありますね…まあ、食えなくは無いので、種などの変な所以外はペロッと食べてしまいます
それでも、まだお腹に入りそうです。そして残ったネズミ…
これも経験ですし、生の虫よりは抵抗無く食べれると思います。比較が酷すぎますけど…
クンクン…
うっ、ドロ臭い変な匂い…。
しかし、此処で食べ残して逃げるのは何か嫌です。
これでも、私は一度も食べ残しはしなかった事を誇りに思っているんです!。
給食の時に、吐き気がするぐらい大嫌いだったグレープフルーツも、時間ギリギリでしたが頑張って完食しましたから!。
あの時は運悪く牛乳が残ってて、一緒に…うっ、頭が…
「まあつまりは、あれに比べたらネズミの肉くらいどうって事ないって事ですよ!。HAHAHA!」
何かヤケクソになって頭が変になっている気がしますが、こういうのは勢いです!。鼻を摘んでさっさと食べちゃいましょう。
ブチッ モグモグ
ん?意外と食べれる?。
確かに匂いは強くて血の味も濃いけど、何故か美味しいと感じる…。
これって、イタチの味覚になっている所為ですかね?。正確に言うと鎌鼬ですけど、ちゃんと食べれる事が分かったのは嬉しいです!。
これなら虫も…いや無理ですね!
あれ外見が問題で駄目ですし…
何で虫ってあんなに変な姿をしているんですかね?。哺乳類と違い過ぎて、宇宙から来た生物だと言われても真面目に信じますよ、私は!
うん?。まさか、虫の正体は妖怪だった?。
それで虫と同属という事になったりするのは、心の底から嫌ですね…