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悪役令嬢とストーカー  作者: 丘/丘野 優
第二章 獣に愛されし少女
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第74話 保護者達の暗躍

「そういえば、今更だけど、ジョゼ」


 話が一通り落ち着いたところで僕はジョゼに尋ねる。

 ジョゼは首を傾げて僕に言う。


「ええ、どうしました?」


「さっき、迷宮攻略のメンバーの話をする前に、それをお金で思い出したって言ってなかった?」


 そう、ジョゼは確かに最初にそう言った。

 コンラートが自分の価値をつり上げる、とかお金の生臭い話をしていたら、そのお金の話で迷宮攻略のパーティーメンバーをどうするかについて思い出した、と。

 普通に考えれば迷宮から湧出する魔道具の類を売りに出したときに結構儲かることがあるため、そのことから、と考えるべきかもしれないが、うまく言えないがそういう感じとは少し違ったような気がしたのだ。

 僕の言葉にジョゼは、あぁ、という顔をして言う。


「よく覚えてますね……確かに、お金で思い出したと言いました、私」


「どうして? 魔道具の値段のことを頭に思い浮かべて、というわけじゃないんだろう?」


「ええ。勿論、価値の高い魔道具を得ることが出来て、それで一儲けできたら私みたいな平民にとってはこれ以上無い喜びですけど、そこまで一攫千金染みた話はあんまりないんですよね? 確か」


 これにはコンラートが答える。


「まぁ、そうはないな。もちろん、普通の魔道具でも売ればそれなりだし、頻繁に迷宮に潜ってそういうものを定期的に見つけて売ってけば、結構な高給は約束されるがよ。一回で家が買えるほど儲かる、みたいな夢みたいな話は難しいな。迷宮でも相当に深い階層まで行けるような実力があるなら話は別だが、浅層じゃ、出てもせいぜい日用魔道具くらいだぜ」


 日用魔道具とは、たとえば灯火の魔術が込められたランプとか、魔力を十分に込めれば何回か水が湧く水筒とか、そういうもののことだ。

 こういったものは一般的な魔道具職人でも作成できるし、もの凄く安いということもないにしろ、それなりに出回っている品なので売りに出したところでそこまで大きく儲かることは無い。

 一日に数個、迷宮で見つけたとしてもせいぜい、そこそこの宿に数泊出来る程度だろう。

 それでも平民の中では十分な高給になるだろうが、一攫千金とまでは言えない。

 そうではなく、それこそ家が買えるほどの価値のある魔道具、となるとこれはアーティファクトとか神具とか呼ばれるが、迷宮でも相当に深い階層まで潜らないと見つけることはほとんど出来ない。

 ほとんど、というのはごく稀にだが浅層でも見つけられることがあるからだ。

 余程の幸運に恵まれれば有り得ない話では無い、というくらいのそれこそ宝くじレベルの話になってくるが。

 流石にそれに期待する者はいない。

 ジョゼもそうだ、ということだ。

 ジョゼは言う。


「ですよね……まぁ、そんなアーティファクトが見つかったら嬉しいですが、それに期待するほど現実見えていないわけでもないので。私がお金で迷宮攻略のことを思い出したのは……学園見学してる子達のことで、ですよ」


「……それはどういう意味かしら?」


 マリアが首を傾げて尋ねると、ジョゼは言う。


「ミラナ先生のお話だと、生徒が作ったパーティーに一人ずつ、見学者をパーティーメンバーとして入れる、ということだったじゃないですか。それでちょっと、不穏な動きがありまして……」


「というと?」


「生徒のそれの中でも特に有望そうなパーティーに自分の子供を入れようと、金銭で話をつける保護者というのが結構いるみたいで……」


「あぁ、なるほど……」


 言われて僕は理解する。

 特にそういった行為は特に禁じられていない。

 それに、常識的な金額であればそこまでおかしくもないというのがまずある。

 というのは、迷宮の潜るに当たって、生徒が学園内の売店で薬剤や武器防具の類を揃えることは想定されており、それについては基本的なものについては支給されるにしても、それに追加で自らの懐からお金を出してものを揃えることも出来るからだ。

 不公平感が出るような気もするが、そこのところは仕方の無い部分もある。

 そもそも持っている武具からして質が違う、ということはあるからな。

 ただ、試験のときは全員横並びの武具とアイテムで挑まされるのでそこのところが決まっているのなら、という感覚でそこまでの不公平感は無いようだ。

 実際、学園を出た後、どのような資金力や武具で迷宮に挑むかについては個々人の事情によって異なるし、むしろ理にかなっている部分もあるというのもある。

 まぁ、そういうわけなので、常識的な金額を、これから属するパーティーに提供する、というのは普通だ。

 だが……。


「必要以上にお金を出して、ということだよね?」


 僕がジョゼに尋ねると、彼女は頷く。


「ええ。中には学園を卒業した後の官位なんかまで提示する方もいるみたいです」


 そうして、自分の子供を有望なパーティーに入れ、好成績を残させてもらう、ということだ。

 そうすれば学園の入試でも優位に立てる、と。


「でも、考えてみれば逆効果では無くて? あの学園長が、そういった方法で好成績を残した見学者を優位に取り扱うとは思えませんわ」


 ラーヌが尊敬すべき学園長の考えについてそう述べる。

 僕は確かに、と思い、言う。


「あの人なら、本来の実力を見極めた上で入学について考えることだろうね。つまり、お金で単純に解決しようとしても無駄だろう。そもそも、そういった行為をしたことがマイナスに評価される可能性もある」


 これにジョゼも言う。


「大半の方はそれが分かっているようで、あまり多くはないようでした。ただ、上級生の方から毎年のことだから、と注意喚起が来たんですよ。それで、お金の話で思い出した、とそういうことでした」


 ジョゼはこれで相当顔が広いようだった。

 ラーヌもラーヌで貴族側の生徒には顔が広いはずだが、今回のことについては知らなかったようだ。

 その理由を尋ねると、彼女は言った。


「おそらく、平民生徒の方にしか行かないのでは? 貴族生徒にお金だ官位だと言って釣ろうとしても……中々うまくはいかないでしょうから」


「なるほど……あぁ、それに君たちのところにも来ていないようなのは、そういうわけかな」


 マリアを見ながら僕が言うと、ラーヌも頷く。


「私たちはここのところずっと一緒にいますから、パーティーを組むものと見られているでしょうけど……マリア様がいますもの。お金も官位もちらつかせたところで意味がないというのは、この国の貴族ならよく分かっているでしょうね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 待っていた分それだけ楽しかったです。
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