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悪役令嬢とストーカー  作者: 丘/丘野 優
第二章 獣に愛されし少女
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第72話 四人目について

「……ジョゼ。貴女、自分を卑下しすぎよ。私もラーヌも貴女の友人なのだから、こういうときは真っ先に候補に挙げて欲しいわ。まぁ、もちろんどうしても嫌だというのなら、無理強いするつもりは無いけれど……」


 最後の方は若干、目に涙を浮かべつつ悲しげに言ったマリアだった。

 当然、冗談であると僕には分かったが、ジョゼは慌てて、


「そ、そんな! 嫌なはずないじゃないですか! 是非組ませて下さい! マリア様!」


 そう言うと、マリアは嘘のように涙を引っ込め、


「そう、良かったわ。じゃあよろしくね、ジョゼ」


 とにこやかな様子で言ったのだった。

 流石にここで今のやりとりがマリアの一種の冗談だと理解したジョゼは、


「ま、マリア様……からかわないでください」


 と少し口を尖らせて文句を言ったが、マリアは、


「先に悲しいことを言ったのはジョゼよ。これからはそういう遠慮はやめて頂戴」


「それは……そうですね。分かりました。気をつけます」


「よろしい」


 と、そんな感じで話が収まった。

 

「……でも、ジョゼ。それにマリアとラーヌもだけど、パーティーは四人組にならないといけないじゃないか。あと一人はどうするんだい?」


 僕がそう尋ねると、マリアが眉根を寄せて、


「……そうなのよね。難しいわ。私の知り合いから選んでも良いんだけど、誰にしても妙なことになりそうで……」


 と答える。

 これにはラーヌも理解を示して、


「……おそらくですが、マリア様に選ばれる、という光栄な立場を奪い合うことになるでしょうね。そして選ばれた後は……その選ばれた者はかなり嫉妬されることに……」


「……まぁ、そうなるわよね。困ったわ。というか、ジョゼとラーヌは大丈夫なの? 私のせいで、酷い目に遭っていないかしら? もしそうだとしたら申し訳ないわ……」


 マリアが二人の友人を見てそう尋ねる。

 確かに嫉妬されるなら一番はジョゼとラーヌだろう。

 しかしこれに、まずジョゼが、


「私の場合、一番最初にマリア様にかなり手ひどく……というと語弊がありますが、厳しくさらし者にされたじゃないですか。だからむしろ、庶民の生徒達はみんなかなり同情的ですよ。ラーヌもいますし……二人に端女はしためのように扱われている、と勘違いされているようで……あっ、もちろんそんなことはないって何度も訂正したんですけど、これが全く信用されずに、健気に頑張っている扱いで……どうしたらいいのかこっちの方が申し訳なくて」


 そう答えた。

 なるほど、確かに今のジョゼの状況を客観的に見たらそのように見えるか。

 一番初め、マリアに冷たい視線を送られ、ラーヌからも叱られ、しかしその二人とよく一緒にいる羽目になっている……きっと断れないのだろう、ああ、なんて可哀想に。

 そんな感じに。

 ただ非常に都合のいい勘違いではあるだろう。

 まず嫉妬などされないし、ジョゼも言っているようにむしろ同情されているわけなのだから。

 マリアはこれを聞いて怒るなどといったことは勿論無く、むしろ笑って、


「あぁ、それは良いわね。全く構わないわ……そのまま勘違いさせておいて」


「でも……!」


「何も貴女だけのためじゃなくて、私のためにもなるのよ。ほら、私、学園だとああいう扱いでしょう? でもそのお陰で一言何か言えば場が収まるのよ。そのイメージは維持し続けたくて……でも、最近頻繁にここで過ごすうち、そういうところが希薄になっているんじゃ無いかと不安になっていたの。でも、全く問題なさそうじゃない?」


「……それは、確かに。むしろ前よりも恐れられてる感じすらします……」


「それならその方がいいのよ。もちろん、嘘をついている、とか感じて後ろめたく思う必要は無いわよ? そうじゃなくて……皆で秘密を共有している、って思って。そうすれば楽しいじゃない?」


「いいのでしょうか……」


「いいのよ。ねぇ、ラーヌ?」


 ここで水を向けられたラーヌも頷く。


「ジョゼ。いずれここを卒業すれば、貴女も宮廷で多く貴族と関わるようになりますわ。そのときに腹芸の一つや二つ出来なければ大変になるのは目に見えていますし……練習だと思ってやるといいと思いますわ」


「練習……ですか。それなら出来るかも……」


「そう、そうしなさいな」


 徐々に納得していくジョゼ。

 マリアも頷いて、


「私ももっと怖がられるように頑張ってみることにしようかしら」


 などと益体もないことを言っている。

 それから、ふと思い出して、


「……そうだったわ。ジョゼは問題なさそうだとして……ラーヌはどうなの? 貴女はジョゼのように見られるとは思えないのだけど……」


 ジョゼはあくまでも庶民であり、貴族では無いからマリアやラーヌにそういう扱いを受けている、と想像させる下地があった。

 ラーヌにはそれがないのではないか、というマリアの言葉だったが、これにラーヌは首を横に振った。


「いいえ。私の場合も似たようなものですよ。ただ少し方向性が異なりますけれど……私の場合は、分かりやすくマリア様に心酔しておりましたから。今でもそうだと見られています。実際、それで間違いないのですけれど……以前ほど盲目ではなくなったつもりです」


 ここで申し訳なさそうな顔をするラーヌだったが、マリアは、


「それで全く構わないわよ。むしろ、以前の貴女よりも今の方が好きだわ、私」


「そう言ってもらえると嬉しいですわ。ともあれ、そういうことですので……なんというか、忠誠心の面で私に勝てると思う令嬢は少ないのです。ですから、私には皆さん、あまり嫉妬されないようですね」


 嫉妬するとき人は、私の方が上なのになんであの人が、というような心の動きをする。

 しかしラーヌについては私の方が上、なんて言える人の方が少ない、ということだな。

 確かにそれを言うためにはジョゼに文句を言ったように、ああいう場で即座にマリア擁護の行動を起こせるような人でなければならないだろう。

 そして実際それをやったのはラーヌなのだから、誰も文句を言えない、と。

 納得だ。


「でも、そうすると余計に困ったね。一組からも、三組からも四人目のメンバーを選べないのでは?」


 僕がそう言うと、マリアとラーヌは考え込んでしまう。


「……そうなのよね」


「どうしたらいいのでしょう……」


 しかし、ここで意外にもジョゼが、


「あの……?」


 と手を上げた。

 どうやら、何か案があるらしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 都合のいい様に取られるのは楽で良さそうですね。
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