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悪役令嬢とストーカー  作者: 丘/丘野 優
第二章 獣に愛されし少女
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第58話 召喚魔術見学

「……授業が問題って、どういうこと?」


 僕が首を傾げると、コンラートは、


「あぁ、それは……って、おっとそろそろ時間がやばいぜ。授業が始まっちまう」


 言われて周囲を見てみると、もう廊下にはほとんど生徒がいない。

 どうやらゆっくり話し込みすぎたようだった。

 

「それじゃ急がないと……最初の授業はなんだったっけ」


「召喚魔術だな……今日は座学だから、教室だ」


「そうだった。急ごう」


 そして僕たちは小走りで廊下を進み出す。

 本気で走った方が早いのだが、それをすると叱られるからこれが限界なのだった。

 

 ◆◇◆◇◆


「……お早い到着ですね、リュー君、それにコンラート君」


 教室に入ると同時に召喚魔術の指導教授であるミラナ・ロージン先生からそんな風に言われる。

 紛う事なき嫌みだが、言われるべき責任は間違いなく僕たちにあるだろう。

 加えてその小柄な二十代半ばの地味な顔立ちの女性教授の表情を見てみれば、かなり機嫌が悪そうに見えたので、僕は慌てて、


「すみません……いつもと学園の様子が違って、まごついてしまって」


 そう言い訳すると、これにはミラナ先生も納得したようで、


「なるほど。確かにその気持ちは分かります……リュー君を初め、皆さんはこの時期の学園は当然今年が初めてですからね。そのことについて少しお話もありますし、これ以上小言を言うのはやめておきましょうか。二人とも、席に着きなさい」


 怒りを静められたことを確認し、僕とコンラートは急いで空いている席に座った。

 そしてその過程で少し、あれ、と思う。

 基本的に授業における席は決められておらず、好きなところに座って問題ないのだが、今日はいつもとは少し異なるところがあったのだ。

 この学園の多くの生徒は学問に対して熱心であるが故、そういう仕組みだと前方に座ることが多い。

 特に、最も優秀な生徒が集う一組においてはそれが顕著で、召喚魔術の授業はその一組と、僕らが属する三組との合同であることから、一組の生徒が大体前を占め、その間か少し後ろに三組の生徒が、という位置取りになることが多い。

 けれど、今日は一組の生徒も三組の生徒も混じり合って後方に座っている。

 では前方には誰がいるのか……といえば、学園見学に訪れた貴族とその子息達だった。


「……皆さんもすでにご存じかとは思いますが、今日から外部の方の学園見学が始まります。およそ一月に渡って行われる授業体験が主な内容となりますが、その他にも施設の見学などもされます。関係者以外立ち入りが禁じられている場所以外は、生徒の皆さんと同じく自由に出入りされますので、皆さん、失礼の無いように。それと、すでにこの学園にいる皆さんに質問がされることもあるでしょうが、そのときは学園生としてしっかりと対応するようにしてください」


 ミラナ先生が僕たちの顔を見ながらそう言った。

 学園見学自体については外部の人間が歩いているな、くらいの感覚で過ごせばそれでいいのかな、と思っていたがこれを聞く限りそれだけというわけにもいかないらしい。

 いわゆるお客様として彼らを扱わなければならない、ということのようだ。

 まぁ、学園で実際に生活している生徒の気持ちや感覚なども当然、親や保護者などは知りたいだろうから、質問されることも当然、ありうると考えるべきだったな。

 それで困ることがあるか、と考えてみるが、おそらくはないだろうという結論に至る。

 余程居丈高に振る舞われたらそれは流石に問題だが、そのような場合には教授を呼ぶなどして対応すれば良いだろう。

 ミラナ先生は続ける。


「それと、少し不便かも知れないですが、学園見学の期間は教室前方の席は見学者の皆さんに譲ってあげて下さい。保護者の方々は後ろの方に立たれてご覧になることが多くなりますが……」


 そこからは概ね事務連絡だった。

 今日、最初の授業だけはこうした学園見学者について説明をして、以後は概ね普段通りに授業が行われる、ということだった。

 だから今日は保護者も一緒に教室前方の席に座っているが、今後は保護者達は教室の一番後ろや、少し離れた位置から見学者や生徒達の授業を見るという形になるようだ。

 召喚魔術の授業など、実践系の授業が魔術実践場で行われる時に、貴族である保護者などが近くにいてはまともにやっていられない。

 もし怪我をさせたりすれば大事だからだ。

 少し離れていただく、というのは必要なことだろう。

 もちろん、その子息である見学者達についても怪我をさせるわけにはいかないが、その辺りは教授陣が配慮するだろうし、ある程度の危険というのは見学者達も、その親も一応、飲み込んでいるということだった。

 一応、というのが少しくせ者のような気がするが、まぁ、そこを気にしていると学園見学なんて出来ないし、あまり考えないようにしておこう……。


「……概ね、そんな感じになります。何か質問はありますか?」


 ミラナ先生が全体にそう尋ねる。

 すると、一組の生徒であり、ディリーノ公爵家令嬢であり、そして僕の友人であるマリアが手を上げた。


「……マリアさん。どうぞ」


「はい。学園見学自体の質問というわけではないのですが、もう少しで迷宮攻略が始まります。召喚魔術の授業においてもそれが予定されていたと思いますが、その際には見学者の方々はどうされるのですか?」


 確かにそれは問題がありそうだ、というのはすぐに想像がつく。

 僕たち学園生徒はそのために今、準備をしているところだが、見学者達はほんの二週間弱程度で迷宮攻略の授業に投げ込まれることになるからだ。

 普通に考えて、それはかなり危険なことで、例外的に不参加、とするのが最も適切な気がするが……。

 しかしミラナ先生は言う。


「迷宮攻略についても見学者の方々には参加していただきます。この学園内にある迷宮については浅い層についてはほぼ完全に攻略済みで、そこまでの危険はありません。とは言ってもゼロでは無いですが……」


「それはどのような形での参加に?」


「迷宮攻略は数人でパーティーを組んでもらい、指定の層、もしくは場所まで進んでもらうという形で行われることになりますが、そのパーティー一つにつき、一人、見学者を加えてもらう形になるでしょうね。ここで心配なのは、見学者が怪我をした場合でしょうが……そういった危険についても学園見学をする事を決められた保護者の方々にはすでに同意いただいていますので、普通に取り組んでいただければ問題ありません。もちろん、見学者を一人、迷宮の奥にわざと置いてきた、などといった行為をした場合には問題になるでしょうが……流石にそれは皆さん、されないでしょう?」


 それは人として最低限の話だ。

 しかしそうは言っても、いわゆる本当の迷宮攻略者たちというのはならず者が多く、そういった行為をする者も少なくないという。

 ただ、学園の生徒は基本的にはみんな育ちの良い者ばかりで、そういう行為に手を出すことは無いはずだ。

 マリアもミラナ先生の話に納得したようで、


「……分かりました。お答えいただきありがとうございます」


 そう言って座った。

 それからミラナ先生は、


「それでは、皆さん納得いったところで授業を始めましょうか。今日はまさに今出ました迷宮についての授業になります。召喚魔術を使うに当たって、迷宮では何を注意すべきかについて……」


 そう言って授業を始めた。

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