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友の追憶  作者: dofo
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第一録「あの日のこと」

雪が溶け、新芽がひょっこり顔を出し、暖かな恵風が流れる。春、4月も半ばに入り、入学式から大分たった。といっても俺が入学したわけじゃない。大学2年生へと進学したのだ。俺の名は山本やまもと れん、5月生まれの19歳だ。

 

「よっ、蓮!」

 

肩を組んできたこいつははやし みなと。高校時代に知り合った男友達だ。髪は茶髪で性格は明るく、気前がいい。昔はよくバカなことをし合って怒られた仲だ。

 

「蓮、おはよう!」

 

次に声を掛けてきたのが吉田よしだ 結月ゆづき。ポニーテールの茶髪で高校の頃、陸上で全国に出場するほどの実力だ。

 

「2人とも朝から元気だな」

 

「あんたはゲームのし過ぎなのよ。湊、あんたもよ。学校がある日くらいすぐに寝なさいよ」

 

「よゆーよゆー、エナドリ飲んでるから」

 

「授業中いつも寝てるの知ってるから、もうレポート見せないわよ」

 

「頼む!今日提出のレポートまだ終わってないんだ!」

 

そんな他愛もない会話を毎日飽きずにしていた。朝は3人で登校、俺はスーパーで安売りしているおにぎりを食べ、授業の30分前に教室で雑談やゲームをする、そんなループだ。しかし、あの日までは違った。一人欠けてしまった。

 

「今日は午前だけだっけか?」

 

「そうだけど、今日はサークルで新人歓迎会するから忘れないでね」

 

殺人。拷問に近い殺され方だった。身体中がズタズタで爪が剥がされ、火傷痕、皮膚の剥がし、喉笛は切られ、常人には出来ない様な殺され方。財布の中身は盗られておらず、怨み目的で殺されたと警察は断定した。なぜ、事細かに殺され方を知っているかって?

 

「今年は結構女子入ったらしいぜ、こりゃ拝まねぇとな」

 

見てしまったからだ、死んでいる所を、学校で。

その日は朝から結月に誘われてランニングをしていた。あまり乗り気ではなかったが高校もそろそろ卒業、こっそり学校に侵入して俺達がいた証でも残そうとしていた。珍しく湊もランニングに参加した。学校に行くまでに何をしようか喋りながら走っていた。春も近くに迫っているからか霧が出ていた。こういうのを春霞と言うのだろう。

 

「私達未成年なんだからお酒飲んじゃダメよ」

 

正門に着いた俺達は、とりあえず学校の周りを回って、桜を見て回った。すると学校の裏手に古い小屋があった。いつからあるかは知らない。高校2年生の頃に3人ともう1人で落書きをしたことを思い出しまだ残っているかを確認しようとしたんだ。だがそこに待っていたのは地獄だった。

 

「分かってるって、それにブランデーボンボンで酔うからお酒飲めねぇし」

 

最初は目を疑ったさ、昨日まで普通に喋っていた友達が死んでいたから。まるでキリストが磔にされたように。最初に見た俺は思わず腰を抜かしたさ。それにつられて湊と結月が来た。俺は少しだけ冷静さを保っていたんだ。湊と結月が来るのを止めた。だが腰が抜けて立てなかったんだ。手を貸そうと湊がよって来た。俺は必死に止めたが叶わなかった。

 

「あんたアルコール弱すぎでしょ…」

 

湊も見てしまった。あいつは言葉すら出なかった。結月も寄ってきそうになった、が、湊が止めてくれた。息は乱れ、言葉を必死で出そうにも出ない、そこまでショックを受けていた。本気で走った後に喋るのが辛い、そう例えた方がいいだろうか。湊の口からは警察と言う言葉がやっとの思いで出た。

そこから5分程で警察がやって来た。その間は俺は立とうと必死だった。だが目の前には無残な死体があってなかなか力が出なかった。それに釘付けされて、今でもハッキリと脳裏に刻まれている。這いずりながら視野入らない所まで、移動した。おかげで服は土だらけ、いや、前日の昼まで雨が降っていたから泥だらけに近い状態になった。あれが夢だったらよかったと何度思ったことか。その日は休校になり俺達は長い時間、警察に拘束された。

 

「腹減ったなー」

 

とても凶暴性が高いとして全国ニュースにもなった。学校には捜査やマスコミで人が溢れ、卒業式も近いこともあってか、卒業式の前日まで休校になった。しばらく経ってそいつの葬式が開かれた。クラスの皆が参加し、そこで久しぶりにクラスの皆と会った。だが湊は来なかった。いや、来れなかったんだ。恋心を抱いていた。だから俺もそっとした。

そいつの家は旧家でなかなか広かった。遊んでいた頃は家に入ったことはなかったが外からは見たことはあった。クラス全員が難なく入れた。中は人が沢山いた。芸能人やニュースで見たことがある偉い人、護衛のような人を連れた外人もいて、とても慕われていた家系だとわかる。

 

「あんたおにぎり食べてるでしょ…」

 

一人づつ線香を立て、棺桶の顔を拝んでいた。俺の番が来た。俺はあの光景を思い出して見るのを躊躇っていたがここで見ないとあいつの顔を思い出せない気がした。勇気を込めて顔を見た。ああ、良かったと安堵した。顔は想像していたものと違い、とても綺麗な顔をしていた。仏の顔は綺麗にメイクなどをすると聞いていたがここまで綺麗になっているとは。まるで生きている見たいだ、今にも動き出しそうに。ああ、なんだか昔のことを思い出す、あの頃が懐かしく思える。涙が零れた。

 

「湊、そこ違うわよ、そこは…」

 

クラスのみんなと仲が良かった人達の番が終わった。結月もとても泣いていた。そろそろ俺は帰ろうとした。その時だった。なにやら騒がしくなった。声の方を振り向くと湊がいた。「なんで…なんでだよ…」と言葉を漏らした。棺桶まで走り、語り掛けた。「生きてるんだろ…そんな顔して…俺達を揶揄うなよ…冗談きついぜ…今なら間に合う…一緒に謝ってやるからよ…」こいつはそこまで好きだったのか、そう思った。

 

「えっと…こうか!」

 

「ちーがーう」

 

俺と結月は、湊を励ますため、卒業式まで色んな所に連れて行った。最初は連れて行くだけでも大変だったが、少しづつ説得し、葬式の時よりはましにはなった。湊も死んだことは受け入れた。そうして、俺達は高校を卒業した。あの事件はもうほとぼりも冷めた。

 

「やっと終わった…」

 

「お疲れ様、はいこれ」

 

「ジュースまでくれるとは…結月様々だぜ」

 

しばらく休んでいると教室に先生が入って来た。午前の授業が始まると早速湊が寝た。結月は真剣聞きながらも携帯を弄りながらゲームをしていた。結月も結構なゲーマーである。俺はというと趣味で絵を描いている。まだまだ下手であるが頑張っているのだ。この前なんてイラストサイトのランキングに乗った。このおかげでモチベーションが上がるってものだ。そうこうしている内に午前の授業が終わった。

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