第9話 町の中、そして貴族とのお話
私はヘグランの街中をメアリーの馬車に乗せてもらって進んでいた。
「この町は活気があるね。美味しそうな物がたくさんありそうな感じがして楽しみ!」
辺りに建つ家やお店を見て目をウロチョロさせながらそんなことを呟く。
「アヤノは町に来たことはないんですか?」
「森の中でずっと研究をして過ごしてたので町には今まで来たことはないですね。」
というかこの世界でまだ二日ぐらいしか生きてないから町に行きようが無かったんだけどね。
「じゃあ、後で一緒に見て回る?この町の美味しい食べ物沢山知ってるから一緒に食べよ!」
「お嬢様、護衛はお連れになられてください。数日前にボブゴブリンに襲われたばかりですから。」
「それは分かってはいるのですが、女の子同士のお出かけに護衛とはいえ男性がついてくるのは……どうする?アヤノ。」
「私もライルさんの話も分かりますからいいと思います。ですが護衛とはいっても男性がついてくるのはなるべくない方が嬉しいですね。」
「そうですか……。」
話は分かる。それに実際に町の外とはいえ数日前に魔獣たちに襲われているためラルスさんがメアリーの事を心配するのは分かるけど男性の護衛がついてくるのはあまりいい気分ではないんだよね。…………男性?……そうだ!
「あのぉラルスさん、護衛の話なのですが……」
さっそくラルスさんに聞いてみた。
「はい、何でしょうか。」
「私はやはり男性の護衛は嫌です。」
その言葉を聞いたラルスさんは傍目から見たら分からないけど少し残念そうな顔をしていた。だが私は「ですが!」と少し大きな声で話を続けた。
「女性ならいいと思っています。ラルスさんには女性で誰かメアリーの護衛を任せられる方は知りませんか。」
そう提案するとラルスさんは顎に生えている髭を触りつつ何か考えている様だった。そんな感じで沈黙が続こうとしていたらと同じく考え混んでいたがメアリーが
「ラルス、そういえば騎士学校に行っていたアンナが帰ってきてたんじゃない。アンナなら私も大丈夫だから。アヤノもそれでどう?」
「メアリーがそれで大丈夫って思うならそれでもいいよ。」
「分かりました。アンナをお嬢様の護衛にしてもよいかをアリアス様に確認しておきます。」
そんな感じで私のヘグランぶらり計画?の話が決まりかけていると外の護衛の剣士さんの一人が窓の外から声をかけてきた。
「お嬢様、屋敷に着きました。」
それを聞いてラルスさん、メアリー、そして私の順番で馬車から降りると目の前に前世では見たことのない大きさの白と赤を基調とした立派な屋敷が建っていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
門の前で待っていたらしき三十代ほどのベテランメイドさんが挨拶をしてきた
「それにアヤノ様、お話は伺っております。アリアス様が応接室でお待ちです。着いて早々で悪いのですが来てもらってもよろしいでしょうか。」
それから少しの間メアリーと話をしていたと思っていたのに直ぐに私の方を見て話をしてきた。
「後で休ませてもらえれば大丈夫です。ですが応接室がどこにあるのが分からないため案内して貰えれば嬉しいのですが。」
「かしこまりました。どうぞこちらへ。お嬢様もご一緒に。」
そうして屋敷の中へと入っていった。だが入った瞬間に室内のあまりにも素晴らしい装飾につい「わぁ。」と感嘆の声が出てしまった。
何処を見ても掃除の行き届いた屋敷内部を歩いていると、とても心地いい。
「アヤノ、私のお家はどう?」
「何処も掃除が行き届いていて歩いていてとても心地いいよ。」
「それは良かった!後で屋敷の中を案内するね!」
メアリーと話をしているとあっという間に一つの部屋の前に着いたと思ったらメイドさんが扉を三回ノックして
「アリアス様、お嬢様とアヤノ様をお連れしました。入ってもよろしいでしょうか。」
と聞くと中から三十代ぐらいの男性の声で『入れ。』という声が聞こえてメイドさんを先頭に入っていったら目の前に大きい机とその左右に大きめのソファーが目の前にしっかりとした創りの豪華な椅子が二つ置いてあった。そして奥の椅子に豪華なスーツのような物を着ている四十代ほどの男性と二十代ほどの豪勢なドレスを着た女性が座っていた。
「お帰りメアリー。ボブゴブリンに襲われたと聞いたが怪我はないか。」
「お父様、私は見た通り怪我はありませんので大丈夫です。」
最初は心配だったのか二人はメアリーと話をしていたが私の事を思い出したらしくこちらを見て話し始めた。
「娘との話に夢中で話しかけずに失礼した。君のことは聞いている。まずは娘の事を助けてくれてありがとう。私はメアリーの父親でアリアス・ガルダスだ。」
「そして私はアリアスの夫でメアリーの母、レフィシア・ガルダスです。娘を助けて下さりありがとうございます。」
そういって伯爵夫妻の二人が私に軽く私に礼をして自己紹介と感謝の言葉を話していた。えっ伯爵ってこの国で三番目の地位でしょ1そんな人に顔を下げさせじゃダメじゃん!
「アリアス様にレフィシア様、顔をお上げください。私は当然のことをしたまででお礼されるような事は何もしておりません。」
若干てんぱりつつも何とか夫妻の顔を上げさせられて正直安心したよ。
「そうか……だが娘を助けてもらったのは事実なのだからな。ゼラス、ここに礼のものを。」
アリアスさんが後ろに控えていたゼラスという名前の執事さんに指示すると直ぐに両手サイズだけどなんか嫌な予感のする袋が私の前の机に置かれた。
「さぁ、座って中身を確認してみてくれ。」
そう言われて中を確認すると百円玉サイズの金色の硬貨?が十数枚ほど入っていた。
「少ないが小金貨十五枚入れておいた。後で追加でメアリーが手紙に書いていた我が家でいらなくなった魔道具を六つほど渡そう。」
いやいやいや、報酬が渡されるとは思ってはいたが思っていた報酬の量と違うんだけど!
これだけのもの渡して大丈夫なの………ぱって出されて大した額じゃない感があるけど小金貨一枚で日本円で五千円分の価値があるみたいだから十五枚だと七万五千円分なのだ。
報酬としてはそこそこだけど魔道具を含めると多すぎる気がする。
「お気持ちは嬉しいですがこれだけの額を貰った上に魔道具を六つももらうのはさすがに多すぎると思います。」
と思ったことを怒られてもいいので素直に話すとアリアスさんが説明をしてくれた。
「まず、お金の件だがメアリーはこれからガルダス家を継ぐことになる。だからメアリーを助けてもらったことに関しての額としては多くはない。次に魔道具の件だがメアリーから聞いた通り我が家では使うことの出来ない物だから問題はない。逆にこんな物を娘の恩人である君に渡してもいいのかと思っているくらいだ。願うなら魔道具は他の物にするぞ。」
そういって事細かに説明してくれた。そして話が報酬の増額という望まない方向に進みそうな感じがしたので、急いで表情や言葉遣いに気を付けながら止めに入った。
「いいえ、これだけの物を頂けるだけでありがたいです。魔道具の方も研究者としては使える魔道具よりも使いにくい魔道具の方が研究のやり甲斐がありますので。」
と答えると夫妻は安心したようで『そうか…これからも何かあれば話してくれれば手伝うぞ。』とアリアスさんがいって私の初めての貴族との話は私だけが疲れて終わった。
貴族のガルダス夫妻との話はまだ続きそうです。頑張って書いていきますのでこれからも読んでください。