夏の一コマ
たぶんやったことあるでしょう
ミーンミンミンミーン。
「あつー」
ミーンミンミンミーン。
「あーつーいー」
ミーンミンミンミーン。
「うるせぇ!」
バンッ!!
机を勢いよく叩いたが、外で四重奏以上の数で駄音を奏でるセミども。
季節は夏。
夏休み。
夏。
外気温は三十五度。
室温気温……三十四度。
……クーラーは壊れた。
「しぬ」
とりあえず状況を整理しよう。
今日起きて、二階の自分の部屋出て、下のリビングに行ったら、帰りが遅くなるという母さんからの置手紙が朝食と共に置いてあったから朝食食って、暑いからクーラーつけたら……壊れてた。
そして、今は午後二時。
まぁ大丈夫だろ、なんてこと考えてたらこれだよ。
「やっべー」
なんだよこれあついよどういうことだよ。
あれか? 夏は情熱的な恋にでも目覚めたか? 誰にだよ、月にか? ふざけんな、月は俺のだ。ほら燃えるように恋するから僕の頭が可笑しくなった。愉快愉快。
ホント暑い。
ダメだ思考がおかしくなった。この暑さをどうにかしないと。
とりあえず涼しいものを想像することにした。
南極。北極。白クマ。氷河。地球温暖化。溶ける。地球水没。水。浸かる。冷たい。最高。
「……」
ダメだ、俺をなんとかしなくては。
しかたがない。
僕は冷蔵庫に向かい、冷蔵庫を開けた。
開けて……頭を突っ込んだ。
その時。
「ただいまー」
姉ちゃんがリビングのドアを悠々自適に、自由奔放に開けた。そして、僕の方を見た。
「……」と、姉。
「……」これ僕。
「……でかけてく」
「ちょいまて!」
「出かけてくる」と言いそうになっていたのだろうが、止めてやった。
「まってこれには深い訳が」
「大丈夫、お母さんには黙っててあげる」
「だから聞けって!」
僕の暑い夏はまだ続く。
【了】
僕はやりました