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「お前もいい加減、大人になれよ」

◆ ◆ ◆



「ねえ、ちゃんと話してよ」

「話すって、何をだい」

 湿気をはらんだ温い雨が降り頻る夕刻。倒れ伏し曇天を見上げるストライカーから熱を奪い、水蒸気となって再び空へと還ってゆく。

 この期に及んでまだしらを切るか。神永茉莉花は赤い傘を差し、大の字を造って動かない相方を睨む。


 追手たる雑兵を振り切り、今その場に居合わせた『エア・ウォーク』の大道芸人を下した。それはいい。

 だが、勝った彼は足をばたつかせ、受け身も取れずに崩れ落ち、今も荒い呼気を漏らしている。

 一体、どうして、こうなった? 当人の口から訊きたいと問い質すが、暖簾に腕押し、柳に風と言った所。


「解ってるんだよ。奪ったチカラを使うたび、あなたはなんだか、とても辛そう」

「そんな訳あるか。俺はいつだって、健康さ」

 その言葉が嘘かどうか。傍らで見ていて解らない筈がない。では何故隠す? 自分にはどうにも出来ないから? 面倒に巻き込むとタフを気取っているから?


「ひどいよ……」ずっと、一緒だと思っていたのに。隠し事で壁を作るなんて。

 こんなに近くに居るというのに、ふたりの仲は驚くほど遠い。

「あアそう、そんなに独りがお好きなら、おじゃま虫はさっさと消えますよーだ」

「待ってくれよ、何処へ行く」

「ヒトの質問は無視しておいて、自分のには答えろっていうの? 御冗談」


「待ってくれ、話はまだ」

 手を伸ばし、待てと言ってももう遅し。茉莉花は横たわるストライカーを置いて、泥濘んだあぜ道を街へ向かって歩いてゆく。


 話すべきか、話すまいか。

 雨に降られ、泥に塗れたストライカーの脳裏には、二つの未来が互いに噛み合い、チラついては消える。

 身体の総ての機能を喪い続け、そう遠くない未来に果てると知って、彼女に何の特がある。何もない。

 ならば、話そうと話すまいと一緒だ。ストライカーは口を閉ざし、理由を求める茉莉花に背を向ける。


 もし、この時。ちゃんと事由を彼女に告げていれば。

 彼女に理解を求め、二人で支え合おうと言えていたならば。



「きゃああああっ!!」


 ――ハッハー、捕まえたぜ。ストライカーの相棒さんよう。



 この先に待つ、底なしの闇から抜け出す手立ては、見付かったであろうか。



 ――聞こえるか、ガーディアンごろし。この子はこのザ・アヴェンジャーが預かった。自分の命か、彼女の命。好きな方を選べ。悩む時間はそんなに無いぞォ。

 ――ヒョホッ、ホホホホッ。

 ――ホホッ



※ ※ ※



「やる気があればそれに越したことはないし、無いなら無いで別個に何か考える。けどね、やる気があるのに、意欲の出処が解らないっていうのはさ、創作でメシを食う会社にとっちゃ、不気味極まりないんだよなあ」


「そ、れ……は……」

 桐乃菜々緒は続く言葉を口にしようとし、途中で無理矢理押し留める。

 理由ならある。元々、ガーディアン・ストライカーを受け容れたのは、作者が上代茉莉であったが故。ちっとも過去を話そうとしない彼女とのコミュニケーション・ツール。

 だからこそ、自分はその内容にほとんど口を出さなかった。解らないところは勉強し、口裏を合わせるのに必死だった。

 あの子に、嫌われたくなくて。



「どうしたの。何か、言いたいんじゃないのかい」

「ええ。いや、そのう」


 こんなこと、正直に伝えて理解されるわけがない。

 如何に言い繕っても、色恋沙汰に会社や作品を利用した事実は変わらない。編集長が疑問に思い、回答を求めるのも当然だ。

 話せとは言うが、出来ないから困っているというのに。


「成る程。キミからは特に、何もないと」

 黙りをノー回答と取った編集長は、それならばと人差し指を突き立てる。

「じゃあ話は終わり。夢野先生にはキミからよろしく頼むね」

「ちょっ、そんなイキナリ……!」

 幾ら何でも即決即断に過ぎる。待ってほしいと身を乗り出せば、待ってましたとばかりに顔を近付けて。

「じゃあ、納得の行く答えを貰わないと。解かるでしょお〜〜ナナミちゃん。二つに一つ。それ以外には無いんだ」

「う……」


 嘘をついてやり過ごす? けど、この土壇場で何を話せと? テキトーに言い連ねたところで、彼を説得する筋道など導き出せそうにない。

 となると。となれば……。


「夢野、先生」

「はい?」

「夢野先生には話します。話しますが、カレの居ないこの場で、打ち切りを決定するなんて横暴に過ぎます。故に」

「成程。まあ、そうくるよね」

 苦し紛れと思ったけれど、編集長は首を縦に振って行けとの合図。

 成程。説得するのはあなたではなく、向こうというワケ。見方によっては、ソッチのほうがずっと辛い。


 カレは、呑み込めるだろうか。私だって理解していないのに、実際に筆を握る彼に、それを告げなければならないなんて。



※ ※ ※



「はァ、これが和洋折半のお屋敷ねえ。洋の間に古びた和箪笥とは」

「おい、あんまりパシャパシャすんなよ。係員がちらちらこっち観てる」


 涼やかな蒼色の洋館と、古めかしい和の邸宅を悪魔合体させ、一つにまとめた六華苑。平日でヒトはまばら。洋館の二階部では、文字書き仲間のハクメンロー(現、許斐従道)が、物珍しそうにデジカメのシャッターを切っている。


 連れられて来た時は何を馬鹿なと思っていたが、このごちゃごちゃした感じは、確かに奴の書くモノと合うように思う。

 中世を意識した欧州の街でありながら、わかり易さと自身の無知で、随所に日本の間取りが挟まったノベル。

 成る程、この歪さはやつにとって絶好の被写体なのだろう。



「おっ、すげぇ。白無垢だよ白無垢! ここ重要文化財なんだろ? 式場も兼ねてんの!?」

「はしゃぐな。撮影だよ撮影。映画と一緒さ。許可取って使ってるの」

 壁を隔てて隣は純和風家屋。そこに白無垢の花嫁がいたとありゃあ、騒ぐ気持ちはわからんでもないが、撮らせてくれは流石に無茶だ。

 まったく。作家になってもガキ引きずりやがってさ。この先が思いやられるぜ。



「いや、待って。ちがう。そうじゃなくね!?」

「おいおいあんまり騒ぐなよ。係員が睨んでんぞー」

 和家屋から続くだだ広い酒蔵の中で、理想と現実との剥離に声を上げる。

 おれとこいつは一体何だ? 互いに単行本を何冊も発表している創作家だろ!? カミングアウトも済ませたってのに、なんでのんびりロケハンなんかやってんだよ!

「他にもさ、することあるだろすることぉ!」


「することって……。具体的にナニ?」

 おれ様の至極最もな問いに対し、向こうの反応は不思議なくらい冷淡だ。いや、いや。おれからその話を引き出したのはお前でしょうが。なんでそんなにリアクション薄いの?!


「おれたち同じ作家だろ!? 締め切りとか産みの苦しみとか、そういう悩みとか色々あんだろ!? 共有しようぜ、話し合ってラクになろうよ、なぁ、なあ!?」

「そう、言われてもさァ」

 あくまで他人事みたいなハクメンローの態度を見て、この感情の謎が少し見えて来た。

 奴め、おれのことを下に見ているな? 自分の方が先にプロになったからって、巻数や売上で遥か下にいるおれを馬鹿にしているな!?


「や、やー。そんなにカリカリすんなよ。お前がナニ考えてるか知らないけどさ」

 間違ってるのはお前だと、平の手で軽くいなされて。

「お前とそれを話し合うつもりはない。どっちに取っても得にならないしさ」


「得にならない?」やっぱり下に見てるんじゃねえか。

「にべもなく断られて納得出来るかよ。ワケを話せ、訳を」


「訳、ね」ハクメンローは冷ややかな目でおれを見、散々迷う素振りを見せて、口を開く。

「逃げ羊。俺とお前とじゃ、見ているセカイが根本から違うの。同じ地平に立ってすらいないのに、苦労話を分かち合おうなんて、おかしいとは思わないか」


「な、ん、だ、と……ぉお!?」

 久々にちょっとカチンと来たぞ。テキトーなこと抜かしやがって。

「セカイって何だよ。おれも手前ェも同じノベル作家だろうが。しておれを下に見る!」

「お前が、それ、言うか?」

 奴め、気怠げに後ろ手で頭を掻きやがって。余裕か? それが先輩作家の、売上で勝るオトコの余裕だってのか!?


「アー……。解った、分かった。じっくり話さなきゃ納得しないって言うんだろ」

 ハクメンローはうんざりとした顔で左右を見回し、「けど、ここでそれはご法度だ、違うか」

「ぬ……」

 然程多くない観光客の目は、芝生庭で繰り広げられる口論に釘付けだ。そうなれば続くフェーズは係員の介入と強制退去。言って収まらないのなら、そうなるのは時間の問題。


「腰を据えて話が出来る場所だ。そこでじっくり話そうぜ、地元民」

 気に食わないが、提案に乗る他道はない。おれは何でもないと群がる客たちに会釈をし、こっちへ来いと奴を手招く。


 奴の言う通り、誰の得にもならない結末など、いきり立ったこの時のおれには、想像出来るはずもなかった。



※ ※ ※



「ブレンド」

「同じ物を」

 そう言って店員を下がらせ、窓際席で奴と向かい合う。

 六華苑からバスで十分弱。九華公園の端に居を構える老舗珈琲店。

 店舗の真中をくり抜いて鯉の棲む池とし、それを見るように机や椅子が配置された特異な内装。

 苑のすぐ近くで、腰を据えて話すとなれば、ここよりも適当な場所もあるまい。


「で、何の話だっけ」

「惚けんな。住むセカイがどうこうって話だろ」

 こうなったが最後、舐められたら敗けだ。痩せ我慢でも強気で有らねば。

 そんなおれの気持ちを見抜いているのかどうなのか。ハクメンローは供されたお冷に口を付け、眉一つ動かさずに言葉を返す。

「そりゃその通りの意味だよ。年甲斐も無く趣味の延長線でさ。読者ウケがどうなのかも考えず、自分の好きなものを押し付けて。同じ括りにしないでもらいたいね」

 胸にぐさりと、見えない銛が突き刺さる。趣味の延長線。全く以てその通りだ。

「それの何が悪い。作家ってやつは、好きなモノ描いてナンボの商売でしょうが」

「そう言って済むのは金銭の発生しないフィールドだけ」言い返すおれを見てもなお、ハクメンローの表情に乱れはない。

「読み手は何を求めてる? 何もない自分が他を圧倒するチート。誰からも無条件に好かれるハーレム展開。自分の意にそぐわない奴をブチのめす"勧"善懲悪、その他諸々。

 少なくとも、まだら模様のフルフェイスおじさんが、無秩序にヒトゴロシする陰惨な話ではなかろうよ。違うかい」

「それは」

 まさにその通りなのだが、お前にそう言われると腹が立つ。

 丁度、頼んだコーヒーが運ばれて来た。奴は物言えぬおれを見、カップに口を付けた後、更に一言付け加える。


「大人になれよ逃げ羊。曲がりなりにも作家なんだろ。七面倒なプライドは捨てて、もっと広い層にアピールするんだ」


 然程歳の違わぬオトコに、大人になれと発破をかけられ。何も言えずに押し黙る。

 ハクメンローの言うことは正しい。事実、ガーディアン・ストライカーは、書き手が茉莉からおれに移ってなお、大して売上を伸ばせずにいる。


「大人って、なんだよ」

「何って。趣味より実利を優先させることだろうが。今更そんなこと」

「それが、お前の言う、大人か」

 商売という観点からすれば、おれは常識を外れ、多方面に迷惑を掛けるだけの男なのかもしれない。それは認める。

 認めるが――。そもそも、おれが筆を執った理由は、そこじゃない。

「謝るよ。確かにおれとお前じゃ、この仕事に求めるものは、まるで違う」

 少し温まったコーヒーに口を付け、喉を鳴らし、ひと呼吸置いて……。眼前できょとんとするハクメンローを睨みつけ。


「売上が何だ。人気が何だ。おれはな、そんなものの為にハナシを書いてるんじゃないんだよ。字書きがやりたいことかなぐり捨てて、読み手に媚びへつらって。そうして得た泡銭に、何の価値があるって言うんだ」

「あ……?」

 無機質なハクメンローの顔に、あからさまな不快感。これが癇に障るってことは、向こうも心中そう思ってたってわけね。

「おれに言わせりゃさ、売上に固執するお前の方が異常だよ。作家が趣味捨てて、人の顔色伺いしてどうすんだ。そうしてまで書いたって、楽しくも何ともないだろう」


「言わせておけば、いけしゃあしゃあと」

 眉間に皺を寄せ、奴が半歩身を乗り出した。図星を突かれて癪なのか、ギラついた目付きで唇を震わせている。

「逃げ羊、お前は甘いんだよ。幾らだって替わりの利くこの業界で、一度でも評判を落としてみろ。下から来た芽に先を越されて終わりだ。ずっと二次創作に甘んじて、やっと掴んだチャンスなんだ。今更他に奪われてたまるか。

 読み手はいつだって新しい刺激に飢えている。だから俺たちはそれを与え続けるんだよ。他でもない、自分のためにな」

「何だよ……それ……」


 先を見据えた判断だと褒めるべきか。夢もヘッタクレも無い答えに怒るべきか。顔を紅潮させ、早口に語るハクメンローの姿を見、またもおれの頭から言葉が消えた。

 そんなわけないと理想を語るのは簡単だ。しかし、それで奴を納得させる自信がない。ある意味では奴の言う通り、おれたちは、住む世界が違うのかも。


「お前の本、読んだよ」それでも、言葉を止めるわけには行かなかった。「ヒーロー同士の熱いドラマを馬鹿正直に描いてたお前が、ハーレムチートの主人公なんて。正直、ちょっと滑ってるって思ってた」

「何だよ、まだ詰るのか」

「聞けよ」憤慨するハクメンローを声で御し。「それがお前のやりたいことなら否定はしない。やっと、お目こぼしされる側から表舞台に出られたんだもんな」

 如何に続けようと、如何に多数の読者から評価を得ても、それはあくまで二次創作の話だ。褒め言葉は原作の良さとで相殺される。

 元々、上昇志向の強い奴だった。出来ることが広がって、評価も上がれば、欲しいものだって増えて行く。

 けど、産み出す側が得る評価ってのは、二次創作よりもずっと流動的で。しかも本と言う形でコストを背負い込む以上、したいことだけして済むわけじゃない。

 おれだって、出来れば売れてほしいけどさ、そうなるためにはガーストであることを捨てなきゃならない。他にも方法はあるんだろうけど、今のおれには良く分からない。


 戸惑って視線を彷徨わすうち、不意に奴と目が合った。

 納得なんて、微塵もしちゃいない。ただ、そうじゃなきゃいけない訳で。


 ああ、おれはなんと浅はかだったことだろう。怒るわなあ。怒るよなあ。

 それでも、生き残るには、そうするしかなかったってだけなのだ。


「これまで文句言ってごめん。けどさ、おれはおれで、好きにやるよ。そこは、絶対に譲らないから」

「散々当たり散らしておいて、落としどころはそんなもんか」

 あまり納得してないようだが、眉間の皺はとうに失せ。声に籠る覇気も消えた。

 男は河原で殴り合いってやつ。全力で喧嘩をすれば、収まるところに収まるって寸法か。当事者が言うのも何だけど、オトコってのは、ラクでいい。


「そろそろ、電車の時間だろ。送ってくよ」

「アイ・アイ。まったく、とんだ取材旅行だったぜ。今日のこと全部、ネタにさせてもらうからな」


 よそはヨソ。うちはウチ。向こうのやり口が気に喰わないって言うんなら、自力で認めさせる他無いわけで。

 そうかい、そうかよ。だったら実力で認めさせてやろうじゃないの。観てろよハクメンロー。お前が他に尻尾振って大成しようってんなら、おれはおれのやり方で世間に認めさせてやるんだ。


 この時のおれは、特に考えもなくそう思い、楽観的に構えていたんだ。

 既に、手遅れな状態になっていると、気付きもせずに。



◆ ◆ ◆



「何だよ……何なんだよ……!」

 眼前に広がる光景を、ストライカーは頑なに認めようとはしなかった。

 アヴェンジャーに呼び付けられ、約束の場所に来て見れば、自分と奴とを挟んだ真中に、突っ伏して物言わぬ亡骸ひとつ。

 肩甲骨越しに一発。背に一発。頭には二発の銃弾が撃ち込まれ、鉄臭い血の臭いがマスク越しにさえ漂って来る。

 顔が潰れ、その身体は出血で赤黒に染まり。人目でそれが誰かを判別するのは難しい。


 違う。認めるのが嫌だっただけだ。それが誰かはすぐに分かった。

 敵は人質を取り、この場には自分と奴の二人だけ。引き算をすれば、子どもにだって察しが付く。


 茉莉花だ。

 人質に取られた茉莉花が、奴に撃たれて、死んでいる。



「何、ってことは無いでしょストライカーの旦那ァ」

 奴は素知らぬ顔で此方を嘲笑い、血塗れの屍を指差すと。

「朝目覚めたらよ、知らない女が目の前で縄に繋がれててさ。お前の名をぴぃぴぃ呼ぶ訳さ。そこへ来て俺はピィンと来たね。その様子じゃ、そいつはあんたの“情婦“で、間違いないらしいな」


 ザ・アヴェンジャーは、ストライカーを殺すために造られた超人だ。

 余計な知識を詰め込み、ストライカー同様人類に牙を剥くことを恐れた開発者の手に依って、必要最低限以外の記憶は日を跨ぐとリセットされるようになっている。

 奴は、自らが人質を取ったことすら忘れていたのか。自分の名を呼び、救けを請う茉莉花を、ストライカーの尖兵として撃ち殺したというのか。何の、疑問も持たずに!


「やあ、今日はツイてるぜ。お前の方から来てくれるとはよォー」

「ああ、そうだ。その通りだ」

 殺してやる。今ここで、腸を引き摺り出して、殺してやる。

 自らの決断を後悔するのはその後だ。お前だけは、絶対に、許さない!!



※ ※ ※



「おい。そりゃあ一体、どういう意味だ」

「言葉通りの意味よ。私は、それを伝えに来た」



 あいつが、人気を気にしてテコを入れる気持ちが、今更になって判った。

 あまりにも唐突過ぎて、おれも、説明しているアイツでさえも、事態を正確に分かっては居まい。


「いい? ガーディアン・ストライカーは次の巻で終了。これは、編集長の命令なの。もう覆らない」


 休み明け、行きつけの喫茶店で逢うなり、菜々緒の口から飛び出した、信じられないこの言葉。

 あの菜々緒が。おれよりもガーストの存続を願っていたあの女が、打ち切りを、受け入れた?


 聞きたくない。そんな話、信じられるものか。

 おれが正しいと思っていたことが。これから積み上げようと思っていたものが。何もかも、崩れ去って行く……。



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