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secret seasons  作者: P&M
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第4話 生徒会とブラック雪乃 ②


これ以上九条先輩を怒らすのが怖いので僕は素直に生徒会室へと向かった。


が、


「…なんでお前らまでいるんだ」


「なんか面白そーだから」


「右に同じ」


「皆藤先輩がいるから」


「お兄ちゃんが心配で」


上から桜、陽、夏菜、優羽。

優羽以外の奴ら消え去ればいいのに。


「えっと君は?」


「あ、夏菜は先輩の知り合いであの、その皆藤先輩のファンですっ。…えっと昨日の…」


「はは、そりゃうれしいね。君みたいな可愛い子がファンになってくれるなんて」


あれ?

こいつ昨日のラブレターの相手が夏菜って気付いてないのか。


「お前、昨日のラブレターのこと…」


「ん、ここで何でラブレターの話になるんだ?…あ、ラブレターと言えば昨日のラブレターはちょっと変わっててね。差出人の名前が書いてなかったんだよ」


…は?!


張本人を睨むと本気で焦った顔をして明後日の方向を向いていた。


「ま、まあとりあえずこれからよろしくお願いします」


あ、こいつ。

告白の件無かったことにしようとしている。


まあ、本人が言わないのならそれでいっか。


「君たちはいつまで部屋の外で騒いでいるんだ」


生徒会室から出てきたのは不機嫌気味の九条先輩だった。


「とりあえず中に入りたまえ」


生徒会室に入るとそこには現生徒会メンバーが揃っていた。


「あ、あのぉ僕はこれから一体どうなるんですか?死ぬんですか?」


「まさか。私が君をお仕置きするときは2人っきりでヤるに決まっているだろう」


なんだろう。

寒気がするのは熱があるからだろうか。

いや、そうであって欲しい。


「今日のことは水に流そう。代わりに君には生徒会長になってもらうよ」


「…は?」


いきなりこの人は何を言っているんだ。


「今年は生徒会への立候補者がいなくてね。このままじゃ学校始まって以来の大惨事になってしまうところだったんだよ。まあ君ならこんな時にも駆けつけてくれる仲間もいるくらい人望もあるし素質も十分にある。良い生徒会長になれるだろう」


九条先輩は僕のことを過大評価し過ぎな気がするな。

こいつらだって駆けつけてくれたっていうか、からかいに来ただけだし。(優羽を除く)


その証拠にほら。


「う、うん。タ、タカならきっと良い生徒会長になれるよ。あ、あたしが保証してあげる」


「だよなー。タカはやる時はやる男だし…くはっ、もう無理ぃ」


「皆藤先輩がそういうならそうなんだと思います〜」


「お、お兄ちゃんならきっとスゴい生徒会長なれるよ!」


こいつら(優羽を除く)笑いを堪えるのに必死だしな。

ってか、陽に関しては堪えられてないしな。


しかも夏菜の奴ちゃっかり好感度上げようとしてるし。


だが、僕もただ単にやられているだけではないぞ。


「きっと、拒否権は無いんですよね」


「ああ、もちろんだ」


「分かりました。生徒会長の件お受けします」


生徒会のみんなが笑顔になる。


「けど、引き受ける条件としてこいつらも生徒会に加えて下さい!」


僕はすでに笑いを堪えてない3人と1人を指差す。


「へっ?」


「えっ?」


「はぁ?」


「ひゃいっ?」


そうそう。

この顔が見たかったんだよ!

笑顔が絶望に浸る瞬間がな!!


…あと、優羽は巻き込んでごめん。


「ああ、構わないぞ。逆に選ぶ手間が省けて助かったくらいだ」


「ちょ、ちょっと、九条先輩待って下さいよ!あたしに生徒会なんて…」


「ふむ」と言って九条先輩は桜に向かって何かを耳打ちした。


「あ、あたし生徒会入りますっ!!」


九条先輩何を言ったの?!


「皆藤くんは?」


「いいっすよ。どうせ孝也がいないと暇なんで」


「皆藤先輩がやるなら夏菜もやりまーす」


「優羽さんは?」


「が、頑張りますっ!」


なんとかみんな納得してくれたようだな。


「では、皆の了解が取れたところで現生徒会メンバーの紹介をしたいと思う。副会長は今日風邪で休みだからまた後日となるが」


「右から会計の猫屋敷 楓、書記の木下 暗子、庶務の田中 太郎だ」


「ワタシの事はニャンコ先輩って呼んでニャー!」


「………よろしく」


「おい九条!我のことは黒炎龍 騎士と呼べと言っているだろう!!」


「そんなこと言うわけないだろう。何故名前を言う方が恥をかかなくてはならないのだ。どうせこれから出番のないモブキャラなんだから別に名などどうでもよかろう」


「え、流石に酷くない?一応1年の頃からの付き合いだろ」


黒e…田中先輩は結構ガチで涙目になっていた。


「そうだったかな。悪い、記憶にない」


「もういいよ!お前のことなんか知るか!ばーかばーか!!お前のかーちゃんデーベソ」


なんとも昭和チックな捨てゼリフを吐いて生徒会室から飛び出した。


「く、九条先輩。田中先輩出て行っちゃったけどいいんですか?」


「ああもうこれ以降登場シーンもないしいいのではないか?」


…登場シーン?

貴女は一体何を言ってるんですか?


「とりあえず顔合わせも済んだから今日はこれまでにしよう。小鳥遊くんには明日放課後にもう一度生徒会室に来てもらう。私の任期が終わる前までに仕事を覚えて貰わなくてはならないからな。他のものは明日来る必要はない。それでは解散だ」




翌日の放課後。

僕は生徒会室に来ていた。

生徒会の扉をノックすると中から九条先輩の声がしたため中に入る。


「失礼しまぁぁぁ!!く、九条先輩い、一体な、ななな何をしてるんですか?!!」


生徒会の中には制服を半脱ぎしている九条先輩がいた。


く、黒いブ、ブラが!

ってかむ、胸でかっ!!

九条先輩は着痩せするタイプらしく、もしかしたら桜より大きいかも…。


「いや、孝也くんがなかなかつれないのでな。いっそ既成事実を作ってしまおうかと」


いやいやいや、もう5段階くらいすっ飛ばしてますからね?!


「た、頼みますから服きてください!お願いします!!」


「では、婚約届けにサインを…」


「それ以外でお願いします!」


「ふふ、冗談だよ」


何が冗談だよ。

僕は知ってるぞ。

その生徒会長の机の中には婚姻届とハンコを常備していることは。


「これから私のことはくー…いや、撫子と呼んでくれ」


おお、九条先輩にしてはマトモだな。


「じゃあこれからは撫子先輩って呼びます。……だから、早く服を着てください!!」


一向に服を着る気の無い撫子先輩から顔を背ける。


とその時、生徒会室の扉が開こうとしていた。


「な、撫子先輩ひ、人が来ますよっ」


僕が叫んだ時には既に時遅し。

そして、生徒会室に入って来た人は僕もよく見知った人だった。


「えっ、孝也さん?!」


そう。

綾瀬 雪乃さんだった。


「ゆ、雪乃さんなんでここに」


「いや、その私は…」


「ああ、彼女は私が呼んだ。昨日は副会長の紹介をしてなかったからな」


え、雪乃さんが生徒会の副会長?


「ちょ、ちょっとなでちゃん!なんて恰好してるんですかっ」


「孝也くんを誘惑しようとしたのだが失敗してしまってな」


「もう、相変わらずなんだから」


「雪乃、君を呼んだのは他でもない。孝也くんに生徒会運営についての指導を頼みたい。私はこれから用事があるのでな」


一瞬にして服を着た撫子先輩は生徒会室を出て行こうとした。


「ちょ、ちょっと待って下さい!」


僕は雪乃さんに聞かれないように撫子先輩を教室の隅に連れて行くと顔を赤くした。


「こ、こんなところでするのか?さ、流石に一目に付くところでは恥ずかしいのだが…」


「ちっがーーう!!…僕その雪乃さんとは色々あって…」


「もちろん知ってる」


何で知っとる?!

雪乃さんも何のことか分かっていない様子から雪乃さんが言ったとは思えない。


「私が未来の旦那のことで知らないことがあるわけないだろう。まあ、正妻は譲らないが雪乃なら2番目にするなら許してやってもいいぞ」


「ちょ、何言ってるんですか?!ってまさか、それのために今日…」


「まあ、元気のない親友の姿を見るのも嫌だからな」


自分で言うのもなんだが、撫子先輩は俺のことを相当好きなはずだ。

なのに親友のために好きな人との仲を取り持つなんて。

僕にはそんなことができるのだろうか。


「そういうことだ。では後は頼むぞ」


そう言い残し、撫子先輩は生徒会室を後にする。


2人っきりになった生徒会室で無言の時間が流れる。

あの日以降顔すら合わせていないのだ。

しかも妹から嫌われているとのお墨付きまで。


しかし、撫子先輩がせっかくくれたチャンスだ。

もう、前のような関係には戻れなくてもせめて気まずくならない程度の関係には戻りたい。


「「あ、あの、この前はすいません(すみませんでした)」」


「…へっ?」


「…えっ?」


2人の謝罪が重なった。


しかし、何故雪乃さんが謝ったのだろう。

謝るのはどう考えても僕の方なのに。


「な、なんで雪乃さんが謝るんですか?謝るのはこっちの方なのに」


「ち、違うんです。私あの後反省しました。小鳥遊くんを勘違いさせてしまうような行動を取ってしまったことを」


そうして一旦区切り一呼吸置いたところで決心したように話し始める。


「わ、私が孝也くんと遊びに行ったのはなでちゃんのためだったの!」


その後30分にも及ぶ熱弁により全ての事情を理解した。


まず僕に興味を持ったきっかけが親友である撫子先輩から前々から僕の話を聞かされていたから。

そして、僕のお誘いに応じたのも僕と遊びに行くことによって、僕が本当に撫子先輩に相応しいかどうか、更には僕の好きな物や好きな事を知りそれを撫子先輩に教えてあげようとした。

もちろん僕に彼女がいないか確認したのも撫子先輩のため。

年上はどうか確認したのも撫子先輩のため。

そして全て雪乃さんの思惑通りに進んでいた。


ある一点を除いて。


それは僕が雪乃さんのことを好きになってしまったことだ。


デートが終わった後すぐに撫子先輩に僕の事を色々教えてあげようとしていた。


が、何故か最後の最後で告白してくるではありませんか!


ここで全ての計画が破綻した。


告られてしまった以上撫子先輩には今日のことは言えず、親友の好きな人に惚れられてしまったため勿論返事を断らなくてはならないが、親友の恋を応援するためにこれからもサポートしようと考えていた手前下手に断って関係が悪くなることも避けたかった。


と、短い時間で考え抜いた上で出した結論が逃亡だった。


勿論こんなこと誰にも相談することなど出来ない。


昨日の事は無かったことにしようと忘れようとしたタイミングで不意に妹から僕のことを聞かれここでまたもや混乱。


どうすればいいか分からず昨日は学校をズル休みしたということらしい。


ちなみに事前に僕と遊ぶことを撫子先輩に言わなかったのはサプライズで教えたかったかららしい。



そして、まあなんとも勝手に勘違いして盛り上がって恥ずかしいことをしていたなと今になり赤面する僕であった。


「す、すみません。僕のせいで」


「い、いえ。孝也さんは悪い事は何もしていないので…」


「まあ、そんな事かと思っていたよ。が、甘く見てもらっては困る。雪乃が調べたことくらい私はとっくに知っていたし、サプライズをしようとしていたか知らんが君が孝也くんと遊びに行くことなどその日の内に調べがついていた。後、嘘を隠すのがヘタ過ぎる。遊ぶ約束をした日から日曜まで『実は私が小鳥遊くんと遊びに行くって知ったらなでちゃんスゴいびっくりするだろうな〜。でもなでちゃんの知らないような小鳥遊くん情報を教えてもっと驚かしちゃうんだからっ』と言わんばかりの表情をしていたぞ」


全てバレてんじゃないですか雪乃さん。


「ってか、いつからそこに?!」


いつの間にか生徒会長の席に着いていた撫子先輩に軽く戦慄した。


「も、もしかしてな、なでちゃんは全部知ってたの…」


「ああ、勿論な。分からないわけがなかろう」


…あれ、なんか雪乃さんの身体から心なしか黒いオーラが見えるような…。


「全て知った上で今まで知らないフリをして私の反応を楽しんでたんだ…」


「ああ、なかなか傑作だったぞ。特に孝也くんとのデートの帰り道に電話した時の慌てようは……あ、あれ?もしかして雪乃、怒っているのか…?」


や、やばい。

オーラが可視化出来るほどに?!


「ああ、孝也さん。今日はここら辺でお開きにしましょうか。私はちょっとなでちゃんと2人っきりで話したいことがあるから」


「ひ、ひゃいっ」


僕は怖くなって駆け足で生徒会室を後にする。


その後聞こえてきた悲鳴が聞こえないようにするため両手で耳を塞ぎ一度も振り返ることもなく家へと駆けて行った。


僕はこの雪乃さんのことを『ブラック雪乃』と名付けこれから2度と怒らせないようにしようと心に誓った。


九条(くじょう) 撫子(なでしこ)


本編のメインヒロイン。

3年生で生徒会長。

雪乃の親友。

毛先がカールしている紺藍のストレートロングの髪でモデル体型ながら着痩せするタイプ。

九条グループの社長令嬢で学年トップの成績。

入学初日に孝也を見た瞬間告白をした。

その後もあの手この手を使い告白したり誘惑したりしている。


猫屋敷(ねこやしき) (かえで)


3年生で生徒会会計。

くせっ毛のある茶髪のショート。

運動神経抜群で特定の部活には属してないが色んな部活の助っ人になっている。

猫が好きで口癖は「〜にゃ」と付けている。


木下(きのした) 暗子(あんこ)


3年生で生徒会書記。

黒髪ストレートロング。

目元も前髪ですっぽり隠れていて表情を確認することができない。

みんなには秘密にしているが自分が書いた恋愛小説が今web小説で大ヒットしている。


田中(たなか) 太郎(たろう)


3年生で生徒会庶務。

何にも秀でてる才能もない一般的な自分に嫌気がさし中二病に走る。

脳内設定内での自分の真名は黒炎龍(こくえんりゅう) 騎士(ないと)と言うことになっている。

撫子によるとこれ以降出番がないらしいので他の情報は割愛する。

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