第0話 プロローグ
「好きです…付き合ってください!」
四月の初め。
何事もなく2年に進級した僕、小鳥遊 孝也は告白スポットである学校の校舎裏にある桜の木の前にいた。
今しがた自分の思いの丈を告白した少女はうっすらと瞳に涙を滲ませ回答を待つように男の目を見据える。
そんな中僕はただ呆然と立ち尽くす事しか出来なかった…。
「人の告白を盗み聞きするなんて感心しないな」
「さっきも言っただろ。お前を探してたらたまたま居合わせちゃったんだよ」
さっきまでまるで自分が告白されたかのように語っていたが、実際に告白されたのは僕ではなく親友の皆藤 陽だった。
「にしても今週でもう3人目じゃん。すげーな」
さすが去年のミスターコン出場者。
…リア充死ねばいいのに。
「あんまりからかうなよ。俺だって少なからず罪悪感があるんだから」
「だったらそのまま付き合えばいいじゃん」
悪意100%の笑顔を向けると陽はムッとした顔を向けてきた。
「タカは俺の気持ち知ってるくせにそんな意地悪言うのかよ…」
「BLチックに聞こえるからその上目遣いやめいっ!」
もちろん2人ともノーマルである。
陽とは僕がこの街に来てからの付き合いだからもう7年も一緒につるんでいる親友である。
だから陽の好きな人も知っているが、まあ2日間連続で告白イベントに遭遇してしまえば憎まれ口の1つや2つは言いたくなるってもんだろう。
「おーい、タカーっ、陽ぉー!お待たせ!」
「噂をすればなんとやらだな」
コンビニの前で話していた僕たちの元へ走って来た少女こそこそんで我が親友その2の小清水 桜である。
桜と僕と陽は小学校からずっと一緒にいてもはや兄弟みたいなものである。
が、陽は小学生の頃からずっと桜のことが好きである。
「…?ウワサって何が?」
「な、なんでもねぇよ!なっ、な、タカ!」
おいおい、目が泳ぎまくってんぞ。
こう言う時は下手に言い訳をすると逆に追及されてしまうから無難に話を変えた方がいいだろう。
「それより今日は早いな。もしかしてサボりか?」
桜は帰宅部の僕や陽とは違ってバリバリのスポーツマンで、万年1回戦敗けの女子バスケットボール部を1年生にしてレギュラーとして関東大会にまで導いたハイスペック少女である。
どうでもいいが女子なのにスポーツマンと言うのはどうなのだろう?
最近は男女平等な社会になってきた訳だしスポーツマンではなくスポーツパーソンと言うべきなのだろうか、と考えてみた今日この頃。
「ううん。今日はサーキットだけだから速攻で終わらせた!」
「さすが桜だな。そういえば月末に試合あったっけ?応援行くから頑張れよ」
「う、うんっ!ありがと!!」
「お、俺も行くからな!」
「あー、うん。ありがと」
「反応違い過ぎないっ?!」
陽の叫びは肌寒い風と共に流されていった。
「で、今日はどこに行くの?あたし今日は歌いたい気分なんだけど!」
ああ、やっぱもう忘れてるな。
桜は運動神経はいいが頭のオツムが悪いからな、大抵のことはすぐ忘れるから扱いやすい。
「じゃあ駅前のカラ館行くか?」
こんな感じで僕の高校生活は愛すべき親友と毎日下らないことばっかしてなんとなく過ぎていくとばかり思っていた。
今までのは僕の人生や価値観が変わるほどの出来事が起こる前の前日譚。
これから起こるのが僕の人生の中で絶対に忘れてはならない物語。
それが今幕を開ける。
小鳥遊 孝也
本編の主人公。
幼馴染みの2人と遊んだりしている日常を何より望んでいる。
周りの人間のキャラが濃いこともあり自分はツッコミ役なのだろうと自負している。
一つ下に妹がいて周りに引かれるくらい溺愛している。
小清水 桜
本編のヒロイン候補。
女性にしては高身長のダイナマイトボディ。
腰まである深紅のポニテが特徴的な女の子。
小学生の頃にイジメられていたところを孝也に助けられて以来、好意を抱いているが孝也には未だ想いは届かず。
最近の悩みは身体の成長が止まらないところ。
皆藤 陽
孝也と桜の幼馴染みで自他共に認めるイケメン。
桜のことを好きだが桜の気持ちにも気付いているため自分の気持ちを伝えることが出来ないでいる。