第一話 「 記憶と残像 」
私、佐喜之江 樟葉は高校二年、美術部所属していて田舎の古びた高校に通っている。
朝の日差しは眩しく、重い体を起こしながら部屋の窓を開ける。
「んー…、めっちゃ眩しい…」
アクビをしながら空を眺めていると、扉の向こうで母が私を呼ぶ声がした。
「起きてー、樟葉ちゃーん!」
「起きてマース…」
窓を閉め、制服に着替える。
私の家族は本当の家族ではない。本当の親は私が小さい頃に離婚している。
理由はとても自分勝手なものだった。
母は他に男がいて子供もいた。その事が父にばれ、父は女をつくって出ていった。母はそんな事を気にもしないで、男を家に上がらせ私の育児を放置するどころか、その男の子供の育児をしていた。のけ者にされていたあの日々を今でも覚えている。お腹が空いて、どんなに訴えても無視され続ける、地獄のような日々だった。そしてある日、私を置いて出て行った。「この子をよろしくお願いします」という手紙を残して。
発見された時には、私は息絶える直前だったらしい。見つけてくれたのが、母の親戚の菫おばさんだった。すぐに搬送されて、点滴をうった。そして、菫おばさんが今の私の母になった。
でも家庭内では気まずい。母は気を使ってくれているけど、それが何よりも気まずい理由だった。
重い足取りで、一階のリビングに向かう。
リビングに着くと母は朝食の準備をしている。テーブルの上にはもう私の分の朝食が置かれていた。
今日の朝食はロールパンにジャム、そしてサラダだった。隣には、ティーカップが置いてある。
中身はダージリンだろうか。
「おはよう、樟葉ちゃん」
母は私に気づいたのか、笑顔で私に言う。
「おはよう、母さん」
朝食を食べようと、椅子に座る。
「ねぇ、母さん。これダージリン?…良い香りがするけど…」
「そう!昨日ケーキに合う紅茶を探していたらあってね。疲れもとれるって言うから、買ってみたの!」
嬉しそうに話す母の姿はまるで子供みたいで、とても可愛らしかった。
「あ、そう言えば…、今日何時帰って来るの?」
「熱っ…、えっと…部活が終わってからだし…六時半くらいかな?」
母はとても心配性で、いつも何時に帰宅するか聞いてくるのだ。
「そう…、帰る時は一人じゃ駄目よ?そうだ、蒼君は? 蒼君ならいつも一緒に帰ってたじゃない?」
「ブッッ!……はぁ!?蒼!?無理無理、アイツとなんて」
母の提案に思わず吐き出し、そんな朝を過ごす。
私の青春はここから始まっていくのだろうか。
第一話 終わり
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すみません、綺羅です。少し途中で切らしてもらいまた。つめつめなのですが、今後ともよろしくお願いいたします!m(_ _)m ありがとうございました。