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ハーフハーフハーフ  作者: 八多羽シノイヤ
1/2

転生

 ペルセウス、ヘラクレス、かの英雄は、神ゼウスと人間との間に生まれたハーフである。彼らはメデューサやクラーケン、ケルベロスに大獅子。多くの怪物や魔物を討ち取ってきた。そんな彼らに憧れた一体の女神は現世うつしよの魂を別の世界に送り、ハーフとして生まれ返させ、世界を面白くしようと考えた。さて、誰が送られることになるのやら。




 ボクは土屋里楼つちやさとる。普通の高校生だけど、工業高校という90%が男の無彩な高校生活をしている。ああ、こんなことなら「一番近いから」という理由で高校を決めなければよかった。そんな花のない人生に、無情にも終止符は打たれた。

 深夜、嫌な臭いがボクの目を覚まさせた。薄がけの布団が嫌になるほど熱く感じた。タイマーの切れた扇風機にもう一度スイッチを入れようとすると、ドアの隙間からチラチラと明かりが見えていた。

 「お父さん?」

ボクのお父さんはいつも夜遅くにマンションへ帰って来る。お母さんが浮気をし、物心付く前に家を出てしまった。残されたお父さんは必死で僕の面倒を見てくれた。とても感謝しているけど、お父さんと話す機会はとても少ない。対外仕事で家にいないのだ。でも、いつかはありがとうと伝えたい。そう思っている。

 そうだ、ちょうどいい。今夜お礼を言ってしまおう。そう思ってドアノブに手をかけた。

 「熱っつ!!」

反射でドアノブから手を放した。それはボクの指に火傷膨れができるほどだった。不思議に思いながらいすの背もたれに掛かっていたタオルでドアノブをグルグル巻きにすると、勢いよくドアを開けた。すると広がるドアの隙間から熱風が流れ込んできた。瞬間的に顔の表面が炙られる。びっくりして尻餅を突くと、火の粉が頬を撫でてきた。あれ?火事?ああ、燃えてる。絶望に打ちひしがれながら、ボクの意識はぼやけて行った。



 「あれ、ここは?」

ボクは何故か光に包まれた部屋の床に座っていた。

「気づかれましたか?」

声の方向を向くと、まさに女神という恰好の女の人が降りて来た。あれ、この展開って、もしかして・・・

 「土屋里楼さんですね。」

キター!!!やっぱりこれはチート能力の選択。小説でよくあるパターn

 「土屋里楼さんですね!」

女神様がさっきよりも明らかに大きな声で呼んだ。

 「えっ、あっはい。ボクが土屋里楼です。」

大きな声に少し驚いてしまった。

 「(にこり)では、」

 「はい、ボクの欲しい能力は・・・」

 「いってらっしゃい。(ポチッ)」

へ?と思うと同時に、白い床にぽっかり穴が開き、女神様が穴の淵で切り取られた。

 「え~~~~~~~~!!!」

ドップラー効果で語尾を伸ばしながら落下していく。

 「ち~ょ~っ~と~女神様~!職務怠慢過ぎませんか~」

女神様に不満をいいながらボクは闇に飲み込まれていった。




 「さて、まずは一人。」

女神は一人目の転生者ぎせいしゃを送った。問答無用で。

 「出来ればあと二人は送りたいわね!」

つまりは、ほぼ一分の三の魔力を使ったわけだが・・・本人は気にしていないようだった。

「え~っと次は誰にしようかしら。」



 私は本田栞ほんだしおり・・・。本を愛する女子生徒・・・。図書室の隅巣スミスは、私のネスト・・・。誰にも渡さない・・。ちなみに成績はいい方・・・。体力は壊滅的・・・。背は高くもなく、低くもない・・・。胸は・・・。ノーコメント・・・。

 今も本を片手に自宅に向かい進行中・・・。ただし今は読んでいない・・・。この暗い夜道で本を読んだら、さらに眼鏡のレンズが厚くなってしまう・・・。先日も買い替えたばかりだというのに・・・。ふぁ~・・・。そういえば昨日も徹夜したんだった・・・。かなり重たい眼鏡を左手で外すと、本を小脇に抱え、もう片方の手で目をゴシゴシ擦る・・・。やっぱり疲れ目らしい・・・。(ウ~ウ~)どこかしらから消防車のサイレンが風に乗って聞こえてきた・・・。おそらくどこかの空は煙で濁っていることだろう・・・。そんな風景を想像しながら眼鏡をかけた直後・・・。何もない通路で鼻の頭をぶつけた・・・。理由は闇と同じように黒いシャツを着た体に拒まれたから・・・。いや、よく見ると黒だけじゃない・・・。シャツには斑点模様がプリントされていた・・・。赤いインクで・・・。

 突然顔に何かがめり込んだ・・・。言うまでもなく黒シャツの拳だろう・・・。

 「カハッ・・・。」

背中を打ち付けられたインパクトで、肺の空気が押し出される・・・。そうだ・・・。

 「たすけて・・・!たすけて・・・!」

ただでさえ小さい叫び声はサイレンの音でかき消される・・・。割れたレンズを踏みながらぼやけた黒い人影は近づいてくる・・・。

 「嫌、来ないで・・・!死にたく、なん、て、な、(グサッ)い・・・。」

細いナイフが眼下に迫り何も感じなくなった・・・。



 先ほどと同じ空間。女神は再度降臨した。

 「本田栞さんです・・・か?」

床に倒れている少女は質問に答えない。なぜなら意識が無いから仕方がない。大事そうに本だけはしっかり握って。というわけで、

 「えーっと。(ポチッ)」

女神は無情にも少女を闇に葬った。



わっち(わたし)は、天鼠あまねずみ訃瀬ふせ。趣味はゲームと・・・え~っとそのぐらいかね。胸囲に至っては、自慢ではないが、驚異と呼ぶにふさわしい大きさじゃ。調理科に属すわっちの学び舎は廃れ、今にも朽ち果てそうな惨状が続いておる。調理も嫌いではないが、こうも毎日だと疲れてしまう。しかしながら栄養バランスその他諸々で弁当を買えず、毎朝手作りしているわっちなのだ。部活は一応水泳部に所属しており、自由気ままに泳いでおる。焼けた肌とゴワゴワの髪は、連日鍛錬の証というわけじゃ。そんな黒いもち肌に冷房の風を受けながら、来週の食事の兵糧を買い込んでゆく。(ウ~ウ~)自動ドアを通ると、店の宣伝放送にかき消されていたサイレンが耳に入ってきた。野次馬の話し声に耳をすますと、火災現場はこの付近とのこと。まあ、見てみるのも悪くないかの思い、人の流れる方向に身を任せ、現場に向かい足を進めるわけじゃった。

 煙の香りが強くなるにつれ、辺りの騒々しさも輪をかけて大きくなっておる。連なる窓からは炎が噴き出され、消防車の放水が赤い舌をチラチラ覗かせる四角い口を射抜いていく。しかし懸命の消火活動も、まさに焼け石に水のような惨状が広がっておった。これは朝まで続くと思われたのじゃが、そうも言っておれんようになった。

 突如、大きな爆発が起こった。どうやらプロパンに引火したと見た。騒音に逃げ惑う人々の悲鳴が、さらにわっちの耳をつんざく。さらにもう一つのプロパンに引火したのか、またも爆音が爆ぜ響く。して、マンションの瓦礫が近くのわっぱ(男の子)にすっ飛んで来よった。

 0,3秒でクラウチングスタートの姿勢を完成させると、間髪入れずにアスファルトを蹴り飛ばす。脚を猛烈な速さで回し、わっぱの手を握り絞めると、渾身の力で引き寄せた。途端にわっちの視界がかき乱される。

 「ごぽっ」

飛んできた瓦礫はどうやらはらわたをつぶしたとみえた。黒い地面に鮮血が飛び散る。息ができない。苦しい。わっぱよ、願わくば、無事に・・・



 三度みたび同じ空間。二人目の少女が目を開けt(ぽちっ)

ついにゼロフレームで転生させてしまった。

 「なんかもう面倒くさい。」

呼び寄せた当の本人が言うな。て、ちょっと、何布団なんか敷いてるんですか。

 「疲れたから寝る。」

え、寝るって、あなた何で三人をこの世界に招き入れたんですか!見ないと意味ないじゃないですか。

 「寝ながら見るから大丈夫よ。じゃ、おやすみ。(ぐーすーぴー)」

寝息立ててるじゃないですか!女神様!女神様!

三人も殺す&転生は疲れた。次回は転生後だけど、どうなることやら。

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