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むしろ今聞くよ

ピピピピピ……という、小さなアラーム音に、ふと集中が途切れる。アラームが鳴ったってことは、20:30か。時間経つの、早かったなぁ。


昨日、今日と急に提出され始めた経費申請の山を眺めてため息をつく。ほんと、適宜提出してくれると月末間際にこんな時間まで残業しなくてもいいのに。


まあでも、ウチの会社はそれなりにホワイトな企業だ。残業は遅くても21時までと決められている。だから、仕事の計画はすこぶる立てやすいのがいいところだと思う。


手がけていた案件を手早くパソコンに入力すると、私は席を立って「う~~ん……」とノビをした。さすがに背中も肩もガチガチだ。集中しすぎて目はシパシパするし、こんな状態で確認作業をしても精度に欠ける。


終業30分前にいったん席を立ち、給湯室でミルクと砂糖たっぷりのミルクティーを淹れて、一息つくのが私のルーティンだった。その方が頭も切り替えられて、確認作業もはかどる。5分休憩、20分で確認作業と修正、残り5分で後片付けしてトイレに行って、21時に会社を出る。


うん、完璧。


廊下に出てみたら、給湯室の灯りがついていた。月末だからなぁ、残業せざるを得ない人も多いんだろう。


何の気なしに扉をあけて、私は一瞬固まった。



「あ、久美先輩、ちょうど良かった」


「湯北くん」


「はい、これどうぞ。ミルクと砂糖たっぷりのミルクティー」


「え、あ、ありがとう」


「どういたしまして」



にっこり笑う湯北くん。まるで私が来ることが分かっていたかのように、私好みのミルクティーを淹れてくれたのには面食らってしまった。今日残業するとは言ったけど……もしかして私のルーティンがバレているんだろうか。


若干居心地の悪い気持ちになったけど、せっかくお茶を淹れてくれたのにそのまま立ち去るのも余計に気まずい。とりあえず、壁にもたれかかってミルクティーに口をつける。


……あ、美味しい。ちゃんと、私好みだ。



「久美先輩、今日の昼のことなんですけど」


「うん」


「実は折り入って聞いて欲しいというか……お願いしたいことがあって。仕事終わったら食事に付き合って貰えませんか」



湯北くんが真剣な表情でそう切り出す。その若干切羽詰まった様子に、私は少しだけほっこりした。


そっか、やっぱり湯北くんも紗希ちゃんが私になにを話したか、おおむね見当がついてるんだろう。誤解は早めに解いておくに限るよね。さすが営業、そういうとこ機を読むのに長けてる。頼もしいなぁ。



「いいよいいよ。ていうか、むしろ今聞くよ」


「い、いえ、ちょっとここでは」



急にはにかむ様子に、ピンときた。もしかして意中の子との仲をとりもって、だとか……すでにつきあってるだとか、そういうことなのか?


そんなもん、全力で応援しちゃうんだけど!

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