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涙の理由

「紗希ちゃん」



声をかけた瞬間、紗希ちゃんの肩がビクリと揺れる。少しの間の後、紗希ちゃんはゆっくりと振り返った。



「クミ先輩……」



ヤバい。もう目に涙を溜めている。周りに人が居ないときで良かった……ていうか、私がいったいなにをしたっていうんだよ。



「ごめん、あんまり心当たりがないんだけど、私なんかしちゃったのかな」



私がそう言った途端、紗希ちゃんは突っ伏して泣き始めた。マジかよ……。


途方にくれてしまって、紗希ちゃんの背中をさすっていたら、紗希ちゃんの方からなにやら呪文のようにブツブツと呟くような声が聞こえてくる。耳をそっと寄せたら、それは「ご、ごめ……ごめ、ん、な、さい……」という、紗希ちゃんの謝罪の言葉だった。



「……落ち着いた?」


「ほんと、すみません……」



ようやく落ち着いて、化粧も直してきた紗希ちゃんと話せたのは30分も経ってからのことだった。それでも、こうして彼女と話せるのはありがたい。今日こそ、謎を解いておかなくちゃ。



「良かったら、話して貰えるかな。私も悪いところは直すし」


「クミ先輩に悪いところがあるとか、そういう話じゃないんです。ただ……」



ぐす、と鼻をすすって紗希ちゃんが口ごもる。私は声を発さずに、ただ彼女が口を開くのを待った。



「ただ私、ずっと好きだった人にふられちゃって」



ああ、湯北くんか。彼女が一途に湯北くんを想っていたことなんて周知の事実だ。でも、ついに玉砕しちゃったのか、可哀想に。


それは涙も出るよね、と思いかけて……ふと思った。私、マジで関係なくない?



「その、好きだった人が……クミ先輩のこと、好きだって言うから、私……」


「へ?」



新たな涙が出てきたのか、ぐす、とまたすすりあげて、紗希ちゃんは悲しそうな顔のまま笑った。



「クミ先輩の顔見ると、我慢できなくなっちゃって。大人げないですよね……ほんと、すみませんでした」



お化粧直してきます、とまた席をたった紗希ちゃんは充分に偉い。大人の対応だ。


っていうか、え? ちょっと待てよ? 今の話でいくと、湯北くんが私のこと、好きって言ったってこと?


そう理解して、いやいや、ナイナイ、と首を振る。


きっと言い訳にでも使われたのだろう。同期の女の子とかの名前なんか出した日には、こんなもんじゃ済まなかった筈だ。これはこれでグッジョブ、と心の中で湯北くんを褒めた時だった。


廊下へと続く扉のところで、紗希ちゃんが「しっかりしなさいよ!」と誰かを叱りつけている声が聞こえてきた。


おっと、これはイカン。違うところで新たな被害者が。


私は慌てて廊下の方へと飛び出した。

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