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冷たい視線
「カズ君に何をしたの?」
「カズ君は今どこにいるの?」
その質問に、答えようとしない武智君。
正直、叫んでいるところが、バイト先だということを気にしてられない。
みんなからの冷たい目線が飛んでくるのがわかる。
けれども、自分で自分の口を止めることは私にはできなかった。
「ねえ、何処なの?」
「カズ君は、無事なの?」
そうやって叫び散らす私を、抱えるようにして止める、同僚の女の子。
武智君の前に立ちふさがる、店長。
けれども、そんな状況の中で、武智君は店長に向かって、「彼女、頭がおかしいんです」と笑いながら言った。
それからしばらくのことを私は覚えていない。
これが“意識が飛んでいた”ということだろうか?
私は、無様になった自分の顔を、鏡を通して見つめた。
腫れ上がった瞼。ひどく充血した瞳。
もう、涙さえ滲まない。
私は、どうやって辿り着いたのかもわからない自分の部屋を出て、カズ君を“カズ”と呼んでいた人を探し歩いた。




