第十八話 迷い
奈央が来たあの晩から、数日がたった。だがいまだに真琴の体はきりきりと痛みを帯びていた。あざも消えることなく、まるであの晩を思い起こさせるきっかけであり続けるかのようにそこにあった。動くたびに痛み、そのたびに思い出され、真琴は一人思いつめた。それでも周りに迷惑をかけたくないという理由から、何もなかったかのようにふるまった。でも、それでも人間だれしも限界はやってくる。
気がつくと真琴は優が院長をしている病院の病室のベットの中にいた。
目を覚ますと、ちょうど点滴を変えてた看護婦さんと目があった。その看護婦はすぐに優に真琴が起きたことを告げた。優はすぐにその部屋にやってきた。起きた真琴を見てかれは看護婦に何か告げると一人部屋の中に入ってきた。ドアはきちんと閉ざしている。
「気分はどうかな。意識ははっきりしてる?」
そう問いかけてくる優に真琴はこくりとうなずいた。
「なんでここにいるんだろうって顔してるね。君は数日前、キッチンで倒れてたそうだよ。ちょうど帰ってきた充が救急車呼んで、此処に運ばれてきたんだ。」
「たお・・・・・れた・・・・?」
体を起こせぬままそう繰り返した真琴を優は少し困ったような、それでいてあきれたような顔をして見つめていた。
「とくに風邪とか引いてなかったって聞いたから、倒れた理由がわかんなくてね、いろいろ検査させてもらった・・・・。そのうえで、君に聞きたいんだ。」
なぜか真琴は、優が聞きたいことが分かった気がした。
「その体・・・・どうしたんだい?」
「っ・・・・・。」
「明らかに誰かに危害を加えられた痕だよね?それも力一杯、蹴られたあとかな・・・。体中痕だらけあざだらけで、ところどころ傷があったりするし・・・。何があったの?それ、護たちは知ってるの?誰にやられたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
言えない
言ってどうなるんだろう・・・・
この人まで巻き込むの?
だめ
だめ
そんなのは絶対にダメ
「いえ・・・・ません・・・・。」
「あのね、なんで言えないのかはともかくぼくは医者だ。患者がどうしてそうなっているのか知る義務がある。君が倒れたのは明らかにその暴力が原因だ。ならその過程を僕は知らなきゃいけないんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・これは・・・僕が悪いんです・・・だから・・・。」
「僕は知らなくったっていいってわけ。」
「そういう・・・わけっじゃないですけど・・・・。」
「あまり君みたいな子に無理強いってわけを言ってもらうのは好きじゃないんだよ。どうしても嫌なら言わないでもいい。でも、君は少なからずもう体は限界だよ?だから倒れた。そのうえ君は何か悩んでるみたいだしこのままじゃ精神だってどうにかなっちゃうよ?人間、どっちかが崩れてもダメなのに、両方だめになったら君どうなっちゃうかわかる?」
「ぼくは・・・普通の人間じゃ・・・ないですから・・・・。」
「いーや、君は普通のごく普通の少し平均より背が低い男の子だ。たとえ出生がどうであれ、君の体の構造その他もろもろ、普通の人間と何にも変わらない!君が壊れて、悲しむ人間の気持ちにもなってみたらどうなんだい!!」
「・・・・・っ・・・・・・・・・・・・このあざ・・・は・・・倒れる少し前に・・・蹴られました・・・。」
「誰に?」
「翔さんと一緒に姿を消した・・・・・・・奈央に・・・・・・。」
真琴はポツリポツリと、あの晩にあったことを初めて誰かに話した。
久しぶりな優なので、口調とか間違ってないか心配です。
浮き沈み激しい真琴の心。優が知って、真琴の心は浮上できるんでしょうか?




