第十七話 みじめ
何でしょう。なんでこんなにサクサク進んでしまうんでしょう。
やる気が出てきたんでしょうか・・・今さらですけど。
翌日。真琴は痛む体に鞭打って何とか一回にまで下りた。まだ7時前。護たちはまだ寝てるだろう。真琴は静かに浴室へと向かった。そして血痕がうっすらにじみ出るパジャマの上を脱いだ。鏡に映し出された自分の体を見て真琴は思わず息をのんで顔をそらしたくなった。
そこにあったのは昨日までの体じゃなかった。まるで違う人になったかのようにも思える。これが本当に自分の体なんだろうか。鎖骨から下、おへそに至るところの全域にあざというあざがあった。赤、黒、青。さまざまな色のあざが重なり合って無数に散らばっていた。さながら絵具を出したパレットみたいだ。血が出てきていたところはすでに血は止まり、だが傷はまだふさがってはおらず触るとひりひりした痛みを生じた。前だけでなく、背中も同じだった。がくがくとひざが震える。見ているだけで昨晩の出来事が鮮明に思い起こされてしまう。骨はさすがに折れてはいないようだけどもひびは入ってるかもしれない。前かがみになったり急に振り向いたりすると凄まじい痛みが走る。
真琴はおなかを抱えてその場にしゃがみこんだ。
怖くて怖くて。また今晩も来てしまうんじゃないかと今からそんな考えを抱いてしまっている。誰にも助けてもらえなくて、力も及ばなくて。圧倒的な力の差にただただおびえるしかできなくて。されるがままになっていた。
「ぅ・・・・・ふぇ・・・・・・う・・・・・・うぅ・・・・。」
情けなさと、悔しさと、後悔から、涙がとめどなくあふれてきた。あふれてこぼれて床に落ちてたまっていく。震える方を抱いて、膝におでこを押しつけて、真琴は一人で声を押し殺して泣いた。
数分ほどして真琴は頭からシャワーをかぶった。傷口がひりひりと痛む。だが、そんなに落ち込んでもいられない。今日からまた家事を再開することにしたのだから。さっさと朝食を作らなければいけない。こんなところで泣いてたらまた心配をかけてしまう。少しでも疑問に思われたら、このことを打ち明けなければいけなくなる。そんなの嫌だった。苦しいのは自分だけでいい。自分のせいで誰かを巻き込んで苦しめさせたくない。
「あなたも・・・・苦しませてごめんなさい・・・・翔さん・・・・。」
そのつぶやき声はシャワーの音にかき消され、反響しやすいふろ場の中にも響くことはなかった。
悩んでるのを一人で抱え込むのはよくないと思う。
けど真琴は優しすぎるので、一人で抱え込んじゃう子です。




