第48話:泡と蜜
自宅の大浴場は、視界を遮るほどの濃密な湯気と、鼻孔にまとわりつく甘ったるい香りで満たされていた。
広々とした浴槽には並々とお湯が張られているが、今のそこは癒やしの空間ではない。
欲望と粘液が渦巻く、新たな戦場だった。
床のいたるところに、ボスモンスター『ゼラチナスマター』のピンク色の粘液と、それを洗い流そうとした石鹸の泡が入り混じり、ぬらぬらと白濁した川を作っている。
「……んっ、ぁ……そこ、もっと強く……」
セリアが艶めかしい声を上げる。
彼女は洗い場の椅子に座り、背後からアリサに身体を預けていた。
冒険者として鍛え上げられた背中だが、今は力なく弓なりに反り、無防備な胸を突き出している。
アリサの手が、セリアの豊かな双丘を後ろから包み込み、スポンジごと押し潰すように洗っていた。
「セリアさん、粘液がしつこいです……。胸の谷間の奥まで入り込んでます」
「構わない……。アリサの手で、掻き出してくれ……」
遠慮などなかった。
すでに互いの身体を知り尽くし、幾度となく肌を重ねてきた彼女たちにとって、この入浴は単なる「汚れ落とし」ではない。
戦いの興奮と体内に残留した魔力(媚薬成分)を鎮めるための、必要な儀式だった。
アリサの指が泡にまみれて滑るように動き、セリアの敏感な先端を容赦なく擦る。
粘液のヌメリと石鹸の泡。
二つの潤滑剤が混ざり合い、肌と肌が密着して動くたびに、クチュ、チュプ、という粘着質な水音を立てる。
その音が浴室の反響音となって鼓膜を叩く。
「はぁ、んっ……! アリサ、いい……すごく、熱い……」
セリアが首を後ろに反らし、アリサの肩口に自身の頬を擦り付ける。
彼女の肌は摩擦と興奮で桜色に染まり、汗と粘液で濡れた表面は、照明を弾いてテラテラと輝いている。
アリサはセリアの耳元に唇を寄せ、熱い吐息を吹きかけながら囁いた。
「セリアさん、下も洗います。……足、開いてください」
「ん……好きにしてくれ……」
セリアが素直に膝を開く。
抵抗などない。むしろ、もっと触れてほしいと懇願するように、内太腿を小刻みに震わせている。
アリサの手が泡で滑る腹部を伝い、柔らかい内太腿へと沈んでいく。
指先が熱を持った湿地帯に触れる。
そこはもう、すでに濡れていた。
お湯のせいではない。セリア自身の蜜が、粘液と混ざり合って溢れ出しているのだ。
「あっ、ぁ……! そこ、いじられると……おかしくなる……」
セリアがアリサの腕を掴む。
爪が食い込むほどの強さ。
だがそれは拒絶ではなく、快感に耐えきれない合図だ。
アリサは指を滑らせ、敏感な粘膜を執拗になぞる。
騎士としての凛々しい表情が崩れ、ただの雌の顔になっていくのを見るのが、たまらなく興奮する。
その向こうでは、ミオとエレナが絡み合っていた。
「エレナちゃん、ここも洗ってぇ……。ぬるぬるして気持ち悪いのぉ……」
「はい……ミオさん、じっとしていてください……」
ミオが仰向けになり、エレナがその豊満な身体の上に跨っている。
潔癖症のエレナだが、仲間との行為には躊躇がない。
むしろ、「汚れを完全に落とさなければならない」という強迫観念と、魔力による火照りが混ざり合い、普段よりも執拗で大胆になっていた。
エレナの手が、ミオの柔らかいお腹の段差をかき分け、太腿の付け根へと伸びる。
「ひゃうっ! そこ、だめぇ……!」
「ダメじゃありません。ここにも粘液が入っています。……もっと開いてください」
エレナがミオの太腿を強引に割り、その奥の秘められた場所を指で清める。
ミオがビクンと腰を跳ねさせ、快楽に蕩けた表情でエレナの首に腕を回した。
エレナの指先が、ひだを丁寧に、執拗になぞる。
ミオの口から、甘い飴が溶けるような声が漏れる。
「あんっ、エレナちゃんの指……硬くて、気持ちいい……」
「……ミオさんの中、熱いです。吸いついてきます」
エレナの頬も赤い。
彼女自身も、ミオの柔らかい肉感と、指から伝わる熱に酔っているのだ。
そんな狂騒の中、ルナだけが静かだった。
彼女はアリサの足元に跪き、黙々と作業を続けていた。
アリサのふくらはぎに残る粘液を、タオルで丁寧に拭き取っているのだ。
だが、その手つきは「洗浄」というにはあまりにも湿度が高い。
「……ルナ?」
「……じっとしていてください。まだ、残っています」
ルナは顔を上げない。
濡れた銀髪が頬に張り付き、その隙間から見える瞳は、暗い熱を帯びて潤んでいる。
彼女の手が、ふくらはぎから膝裏へ、そして内太腿へと、ゆっくりと這い上がってくる。
冷たい指先が、アリサの肌に吸い付くようだ。
ルナは言葉を発しない。
ただ、アリサの太腿の内側に顔を寄せ、熱い吐息を吹きかける。
その寡黙な献身が、逆にアリサの下腹部をきゅんきゅんと締め付けた。
浴室は、すでに肉欲の坩堝と化していた。
フルーツポンチに含まれていた高純度の魔力が、血液の循環を極限まで高め、理性のタガを焼き切っている。
全員が全裸で、泡まみれで、互いの体温と摩擦を貪欲に求め合っていた。
そこへ、ガチャリと扉が開く音がした。
「やあ。楽しそうだね」
むせ返るような湯気の中から現れたのは、バスタオルすら持たない、完全な全裸のカリスだった。
白くなめらかな肌。
傷一つない、陶器のように美しい肢体を惜しげもなく晒し、彼女は濡れたタイルを素足で踏みしめて歩み寄ってくる。
その顔には、獲物を前にした肉食獣のような、獰猛で愉悦に満ちた笑みが浮かんでいた。
「カリスさん……!」
アリサが顔を上げるが、隠そうともしない。
むしろ、火照った瞳でカリスを見つめ返し、無言で誘うように唇を半開きにする。
もう、恥じらいなんて感情は湯気と一緒に蒸発していた。
欲しい。
もっと、めちゃくちゃにしてほしい。
「私も混ぜてよ。……ルナちゃん、独り占めはずるいんじゃない?」
カリスは、アリサの足元にいるルナの肩に手を置いた。
ルナはビクリと肩を震わせ、恨めしげにカリスを見上げたが、抵抗はしなかった。
場所を譲るように少し身を引くが、それでもアリサの太腿からは手を離さない。
その執着心が、ルナらしい。
「じゃあ、私は上を貰おうかな」
カリスはアリサの背後に回り込み、その華奢な背中に自身の身体を密着させた。
カリスの小ぶりだが形の良い胸が、アリサの汗ばんだ背中に押し当てられる。
冷たい肌と、熱い肌。
その温度差に、アリサの背筋がゾクリと震えた。
「んっ……カリスさん、胸が……当たって……」
「洗ってあげるよ。……全身くまなくね」
カリスの手が、泡だらけのアリサの身体を這う。
首筋から鎖骨、そして脇腹へ。
指先がへその窪みをなぞり、そのまま下へと滑り落ちる。
アリサの身体が硬直する。
前ではセリアの胸を揉みしだき、足元ではルナに太腿を愛撫され、後ろからはカリスに全身を弄られる。
肉感的な包囲網だ。
「ひぁっ!?」
カリスの指が、アリサの敏感な入り口に触れた瞬間、アリサが声を上げた。
魔力で敏感になった肌に、カリスの巧みな指使いは劇薬だ。
まるで神経を直接弾かれているような感覚。
「ふふ、いい声。……セリアも、遠慮しないで」
「くっ……カリス、貴様……! ……あぁっ、でも……!」
セリアも抗えない。
カリスのもう片方の手が、セリアの首に伸び、耳元を甘噛みする。
三人が団子状になって、互いの体温と快感を共有する。
汗と泡と粘液が混ざり合い、誰の体液なのか、誰の汗なのか、境界線が曖昧になっていく。
「あはは、みんなドロドロだねぇ。……最高だよ」
カリスがアリサの濡れた髪を掬い上げ、うなじに口付ける。
舌先が肌を這う感触。
浴室の床は、泡と粘液で氷の上のようにツルツルだ。
誰かがバランスを崩せば、全員が雪崩れる。
ズルッ。
足元が滑った。
「きゃああっ!」
アリサ、セリア、カリス、そして足元にいたルナが、もつれ合うようにして広い浴槽の中へダイブした。
ザッパァァァン!!
お湯が溢れ出し、床にピンク色の波紋が広がる。
「ぷはっ……!」
お湯の中でも、絡み合いは解けない。
むしろ、浮力のおかげで、より自由な体勢で密着できる。
水中では、無数の足が絡み合い、誰の指がどこに入っているのかも分からない状態になる。
ルナがアリサの腰に無言でしがみつき、頬を寄せる。
セリアの太腿がアリサの足に絡む。
「アリサ……好きだ……」
「私も……みんな……」
愛の言葉と、甘い喘ぎ。
そこへ、ミオとエレナも湯船に入ってきた。
6人の美女が、一つの巨大な浴槽の中で絡み合う。
肌色の塊。
お湯の温度よりも、彼女たちの肌の熱さの方が高かった。
ミオがアリサの背中に抱きつき、エレナがセリアの足の間に入り込む。
カリスが全体を見渡しながら、それぞれの敏感な場所を的確に攻める。
「んんっ……もう、溶けちゃう……」
「溶けてもいいよ。全部飲んであげるから」
誰かの言葉に、誰かが答える。
理性が湯気に溶け、本能だけが残る濃厚な時間が過ぎていった。
***
日付が変わる頃。
ようやくお風呂から上がった一行は、火照った身体を引きずりながら寝室へと雪崩れ込んだ。
服を着る余裕などない。
バスタオルすら邪魔だった。
全員が生まれたままの姿だ。
肌はまだ上気して赤く、汗が玉のように浮いている。
髪からは雫が垂れ、フローリングの床を濡らすが、誰も気にしない。
「……暑い……」
ミオがキングサイズのベッドへ、勢いよく倒れ込む。
その豊満な肢体が、高級な羽毛布団の上に沈み込み、バウンドする。
続いてセリア、エレナ、ルナも、糸が切れたようにベッドへダイブした。
全裸の美女たちが、折り重なるようにしてベッドを埋め尽くす。
視界いっぱいの肌色。
甘い体臭と、魔力の残り香が部屋に充満し、むせ返るようだ。
「アリサちゃん、おいで」
ベッドの中央で、カリスが手招きをした。
彼女の周りには、すでにセリアたちが侍っている。
ハーレムの中心。女王の座。
だが、真の主役はアリサだ。
みんなが、アリサを求めている。
「……はい」
アリサは吸い寄せられるように、肉の海へと飛び込んだ。
柔らかい感触。甘い匂い。
右にはセリアの温もり。左にはカリスの滑らかな肌。
足元にはミオとエレナが絡みついている。
そして、ルナが音もなくアリサの横に滑り込み、ぎゅっと腕を抱きしめた。
言葉はない。ただ、離さないという強い意志だけが伝わってくる。
「みんな、大好き……」
アリサが呟くと、全員の手がアリサに伸びた。
無数の手が、アリサの身体を撫で回し、愛でる。
太腿、お腹、胸、首筋。
あらゆる場所を、仲間たちの手が這い回る。
誰の手なのか分からない。
けれど、どのアリサへの愛おしさに溢れていることだけは分かる。
「私たちもだよ、アリサ」
「アリサちゃん……愛してる」
言葉はすぐに、吐息へと変わる。
月明かりの下、六人の裸体がシーツの上で蠢く。
セリアがアリサに口づけ、その横からカリスがアリサの首筋を吸う。
ミオがアリサの胸に顔を埋め、エレナが指を絡ませる。
ルナはアリサの手のひらに頬を寄せ、うっとりと目を閉じている。
誰が誰を愛しているのか、区別がつかないほどの密着。
終わらない夜。
粘液の不快な記憶も、戦闘の疲れも、すべては圧倒的な快楽の中に溶けていった。
寝室から漏れる甘い声と、湿った肌が打ち合う音は、夜明けの光が差し込むまで止むことはなかった。
それは、世界で一番淫らで、そして幸せな泥沼だった。




