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田舎から来た緑髪チート少女、街のダンジョンで百合ハーレム始めました  作者: タルタロス


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第46話:奈落への行進

 意識が、熱を持った泥の底からゆっくりと浮上していく。

 ひどく蒸し暑い。

 鼻孔を満たすのは、脂っこい食事の残香と、甘ったるい香油の匂い、そして女性特有の酸味を帯びた汗の臭いだった。

 そこは、桃色の薄闇に包まれたテントの中だ。

 アリサはのろのろと目を開けた。

 視界がぼやけている。

 身体が鉛のように重かった。特に下腹部のあたりが、ずしりと沈み込むような質量を持って主張している。


「ん……ぅ……」


 すぐ隣で、艶めかしい吐息が漏れた。

 セリアだ。

 普段は騎士の鑑のように規律正しく、誰よりも早く起きて剣の手入れをする彼女が、今はだらしなく手足を投げ出し、口を半開きにして惰眠を貪っている。

 その姿を見て、アリサの思考が一気に覚醒した。

 記憶が蘇る。

 数時間前のことだ。

 レティシアが用意した「ダンジョン内フルコース」を限界まで詰め込まれ、その直後、「消化を助ける」という名目で執拗な腹部マッサージを受けたのだ。

 あれはマッサージなどではなかった。内臓を直接愛撫され、強制的に快楽を与えられ続ける拷問だった。

 満腹の苦しさと、逃げ場のない快感が脳をごちゃ混ぜにし、全員が白目を剥いて意識を飛ばした――それが、今の状況だ。


 アリサは自分の身体を見下ろした。

 最悪だった。

 着ているのは、極薄のシルクのネグリジェ一枚。

 だが、その美しい布地は、食事の際に飛び散ったスープのシミと、マッサージで分泌された大量の汗、そしてセリアやミオから溢れ出た愛液を吸い込み、完全に変質していた。

 乾きかけた布が、皮膚にぴったりと張り付いている。

 動こうとすると、バリッ、という不快な音がして、布が肌から剥がれる。

 その感触が、たまらなく気持ち悪い。


「……う、ん……まだ、お腹いっぱい……入らないよぉ……」


 反対側でミオが寝言を漏らして寝返りを打つ。

 その拍子に、彼女のネグリジェの裾が大きく捲れ上がった。

 白い太腿が露わになり、その奥の、下着をつけていない股間がちらりと見えた。

 太腿の内側が、汗と粘液で濡れて光っている。

 とても冒険者の休憩風景には見えない。まるで、乱交パーティが終わった後の気怠い現場そのものだった。


「……不潔です……気持ち悪い……」


 足元で、エレナがうわ言のように呟いた。

 彼女は顔をしかめ、自分の腕についたチーズの油分を、無意識にネグリジェの裾で拭っている。だが、そのネグリジェ自体が汗で湿っているため、汚れが伸びるだけだ。潔癖症の彼女にとって、この状況は地獄以外の何物でもないだろう。


「あら、皆様。やっとお目覚めですの?」


 ふいに、頭上から鈴を転がすような声が降ってきた。

 アリサはビクリと肩を震わせ、顔を上げた。

 テントの中央。

 豪奢な猫足のソファに腰掛け、レティシアが優雅に本を読んでいた。

 彼女だけは、別世界の住人のように美しかった。

 純白のドレスにはシワ一つなく、金髪の縦ロールはツヤツヤと輝いている。

 汗ひとつかいていない。

 涼しい顔でページを捲るその姿は、この蒸し暑いテントの中で異質だった。

 さっきまで同じ空間でマッサージ(という名の凌辱)をしていた張本人が、なぜこんなにも涼しい顔をしているのか。

 彼女の足元に、汗と体液にまみれた五人が雑巾のように転がっている構図は、まるで女神と、その足元にひれ伏す家畜のようだった。


「……お嬢様……。今、何時、だ……?」


 セリアが顔をしかめ、のろのろと身を起こす。

 その動きに合わせて、胸元の大きく開いたネグリジェから、豊かな乳房が零れ落ちそうになる。

 もはや隠そうともしていない。羞恥心が麻痺しているのだ。


「もう出発の時間ですわ。たっぷりと二時間は寝てらっしゃいましたもの。消化も進んで、お肌もツヤツヤですわね!」


 レティシアが本を閉じ、パタンと音を立てた。

 その音に急かされるように、ルナたちも呻き声を上げながら身を起こした。


「うぅ……身体が、痛いです……」

「腰が……抜けちゃったみたい……」


 全員、動きが鈍い。

 関節が油の切れた機械のようにギシギシと鳴る感覚。

 それに加えて、肌に張り付いたネグリジェの不快感が凄まじい。動くたびに、バリ、ベリ、と布が剥がれる音がし、そのたびに冷たい空気が汗ばんだ肌に触れる。


「ほらほら、シャキッとしてください! ここからが本番ですのよ。この先に、とっても素敵な気配を感じるんですの!」


 レティシアはソファから立ち上がると、アリサの手を取り、強引に引っ張り起こした。

 その拍子に、アリサのネグリジェの肩紐がずり落ち、胸が半分ほど露出する。

 危ない。

 慌てて押さえるが、レティシアは気にする様子もない。

 彼女にとって、アリサたちの羞恥など、道端の石ころ程度の関心事なのだ。


「さあ、魔法を解きますわよ! 準備はよろしくて?」


 レティシアが杖を振る。

 拒否権はない。


「え、ちょっ……まだ心の準備が……」

「『テント・クローズ』!」


 シュンッ!

 一瞬で世界が変わった。

 桃色の薄闇と柔らかい絨毯が消滅し、冷たく硬いダンジョンの石床が現れる。

 強烈な現実への帰還。

 むき出しになった五人の美女は、唐突にダンジョンの通路に放り出された。


 そこには、休憩を終え、整列して待機していた騎士たちがいた。

 数十名の精鋭たち。

 彼らは突然現れた五人を見て、息を呑み、そして一斉に視線を泳がせた。


「……ッ!」


 騎士団長の喉が鳴る音が、静寂の中で響いた。

 無理もない。

 昼下がりの惰眠から引きずり出された彼女たちの姿は、あまりにも無防備で、猥雑だった。

 寝癖のついた髪。

 充血した潤んだ瞳。

 気怠げに半開きになった口元。

 そして何より、身体のラインを隠そうともしない、汗と体液で汚れた極薄のシルク。

 セリアがよろめき、太腿を閉じる。

 その太腿の間で、湿った布が擦れる音がした。

 ニチャ……。

 その卑猥な水音が、騎士たちの理性を揺さぶる。


「み、見ないで……」


 エレナが小さく呟き、セリアの背中に隠れる。

 だが、隠れようとすればするほど、彼女の短いネグリジェが引っ張られ、お尻の肉感が強調されてしまう。

 騎士たちの視線は、釘付けという言葉では生ぬるい。食い入るように、舐めるように、彼女たちの身体の隅々まで這い回っていた。


「さあ、出発です! 隊列を組んで!」


 レティシアの号令で、地獄の行軍が再開された。

 装備はない。

 武器は腰に下げた剣や杖だけだが、それを固定するベルトがネグリジェの薄い生地を締め付け、余計に肉感を強調している。

 歩きにくいこと、この上ない。

 一歩踏み出すたびに、ノーブラの胸が揺れる。

 下着のない股間がスースーする。

 先ほどのマッサージのせいか、下腹部が過敏になっていて、布が触れるだけの微かな刺激でも、ゾクゾクとした電流が背骨を駆け上がる。


(……最悪です)


 アリサは奥歯を噛み締めた。

 最強の身体能力を持つ自分たちが、こんな布切れ一枚に振り回されているなんて。

 でも、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 特に、後ろを歩く騎士たちの気配が耐え難い。彼らの視線が、常に自分たちのお尻や太腿に注がれているのが分かる。

 風が吹くたびに、スカートが捲れそうになり、慌てて手で押さえる。

 その仕草すら、彼らにとってはご褒美に見えているのだろう。


「あらら、お顔が真っ赤だねぇ。……騎士様たちも、タダでこんな良いモン拝めて、役得ってやつかな?」


 最後尾から、カリスのねっとりとした声が聞こえた。

 彼女はいつもの黒いゴシックドレス姿で、優雅に歩いている。

 まるで獲物を甚振るのを楽しむかのような、歪んだ笑みを浮かべて。

 アリサたちが惨めであればあるほど、彼女の機嫌は良いらしい。

 その嘲笑を背に受けながら、一行は重い足取りを進めた。


 次第に、周囲の空気が変わり始めた。

 それまでのカビ臭さが消え、代わりに鉄錆のような、血のような臭いが漂い始めたのだ。

 壁の質感が変わる。

 ゴツゴツした岩肌から、滑らかに研磨された黒曜石のような壁へ。

 足音の反響が変わる。

 空間が、広くなったのだ。


「……おい。あれ」


 セリアが足を止めた。

 通路の突き当たり。

 そこに、異様な存在感を放つ扉があった。

 高さは五メートルはあるだろうか。

 黒鉄で作られた重厚な扉。表面には、のた打ち回る蛇や、悲鳴を上げる人間の顔のレリーフが彫り込まれている。

 扉の隙間からは、どす黒い冷気が漏れ出していた。

 その冷気が肌に触れると、ネグリジェ越しの乳首がキュッと縮こまり、生地を突き上げるのが分かった。

 本能的な恐怖。

 生物としての警鐘が鳴り響く。


「……ボス部屋、です」


 エレナが短く告げる。

 その声には、いつもの冷静さはなく、怯えが混じっていた。

 潔癖症の彼女にとって、この澱んだ空気と、自分自身の汚れの不快感は、二重の苦しみとなっているようだ。


「まあ、なんて禍々しい邪気でしょう! ゾクゾクしますわ!」


 レティシアだけが、目を輝かせて歓声を上げた。

 彼女はためらうことなく、禍々しい扉へと歩み寄る。


「この奥にはきっと、魔物に囚われた悲劇の姫君が、わたくしたちの助けを待っているに違いありません!」


 自分たちがその『魔物に辱められた姫君』そのものの格好をしていることには、気付いていないらしい。

 あるいは、護衛対象である彼女自身が、物語のヒロイン気分に浸っているだけなのかもしれない。

 どちらにせよ、アリサたちの今の姿は、姫というよりは、魔王に捧げられる生贄の奴隷そのものだった。


「さあ、運命の扉を開きますわよ!」


 レティシアが杖を掲げ、扉に手をかけようとする。

 アリサの顔色がさっと変わった。


「ちょっ……お嬢様! 待ってください!」


 アリサが慌てて手を伸ばす。

 罠があるかもしれない。いや、それ以前にこのメンバーの状態でボス戦など自殺行為だ。


「お嬢様、お下がりください! 危険です!」


 騎士団長も血相を変えて叫ぶ。

 だが、レティシアは聞く耳を持たない。

 彼女は振り返り、悪戯っぽく微笑んだ。


「あら、物語のクライマックスは、いつだって待ってはくれませんのよ?」


 彼女は杖の石突きで、コンと扉を叩いた。


「開け、ゴマ!」


 その言葉が、鍵だったのか、あるいは彼女の膨大な魔力が強制的にこじ開けたのか。


 ギギギギギ……ズズズズ……!


 重低音と共に、扉がゆっくりと内側へ開き始めた。

 アリサたちが止める間もなかった。

 開かれた隙間から、暗闇の奥に潜んでいた腐った肉のような強烈な悪臭が、爆風のように吹き出してくる。


「うっ……くさっ……」


 ルナが鼻を押さえる。

 完全に開かれた扉の向こう。

 そこは、広大なドーム状の空間だった。

 天井は見えないほど高く、壁には無数の松明が青白い炎を揺らしている。

 そして、その中央に、それはいた。


 巨大な肉塊。

 いや、軟体動物の集合体か。

 大きさは小山ほどもある。

 表面はヌラヌラと光るピンク色の粘液で覆われ、無数の触手が蠢いている。

 その触手の先端には、眼球があったり、鋭い鉤爪があったり、あるいは人間の口のような器官がついていたりする。

 生理的な嫌悪感を極限まで凝縮したような存在。


『……ホウ……? ニンゲン……カ……?』


 脳内に直接響くような、湿った声。

 怪物がゆっくりとこちらを向く。

 無数の眼球が一斉に、アリサたちに向けられた。

 その視線が、衣服を透かして中身を品定めするように、ねっとりと絡みつく。


「ひっ……!」


 ミオが悲鳴を上げて後ずさる。

 相性が悪すぎる。

 この格好で、あんな粘液まみれの触手怪物と戦うなんて。

 捕まったらどうなるか、想像するまでもない。

 あの粘液でネグリジェを溶かされ、ヌルヌルの触手で全身を犯される未来しか見えない。

 いや、それ以前に、今の彼女たちは満腹で動きが鈍い。避けることすら難しいだろう。


 騎士たちが、恐怖に飲まれて足を止める中、レティシアだけが一歩前に出た。


「まあ! なんて立派なゼリーでしょう!」


 レティシアが感嘆の声を上げる。

 場違いなほど明るい声が、ドーム内に反響する。


「美味しそうですわね! あのプルプル感! きっと極上のデザートに違いありませんわ! 食後のデザートには少し大きすぎますが、皆様でシェアすれば食べきれますわね!」


 この期に及んで、まだ食べる気なのか。

 全員が絶句する中、レティシアは杖を突き出した。

 その瞳には、恐怖ではなく、純粋な食欲と破壊衝動が宿っていた。


「さあ、別腹の時間ですわよ! あのゼリーを切り刻んで、フルーツポンチにしますわ!」


 もはやツッコミを入れる気力もない。

 狂気じみたお嬢様の号令と共に、もはや「捨て鉢」としか言いようのない突撃が始まった。


「……くそっ! 行きます!」


 セリアが叫び、剣を抜いて走り出した。

 その背中で、白いネグリジェがヒラヒラと頼りなく舞う。

 スカートの中が丸見えになるのも構わず、彼女は加速する。

 太ももの内側を流れる汗と、粘つく不快感を振り払うように。


「うぅ……もう、どうにでもなれですぅ!」


 アリサも戦斧を構えて突っ込む。

 重い一歩を踏み出すたびに、お腹の中身が揺れる。

 下着のない股間がスースーする。

 でも、止まれば終わる。

 恥辱と恐怖、そしてヤケクソに近い闘志がないまぜになり、彼女たちは絶叫しながら、粘液の海へとその身を投じた。


 バシャッ! バシャッ!


 足元が滑る。

 粘液が跳ねて、薄い布に新たなシミを作る。

 ネグリジェ姿の美女たちが、触手の怪物に挑む。

 その光景は、英雄譚のクライマックスというよりは、悪夢のような背徳劇の幕開けだった。

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