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田舎から来た緑髪チート少女、街のダンジョンで百合ハーレム始めました  作者: タルタロス


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第22話:黄金の蜜

 岩場での情事が終わった後、四人を襲ったのは猛烈な渇きと、全身を覆う不快な皮膜感だった。

 太陽のような人工照明が照りつける岩の上。

 汗と、スライムの粘液と、植物の汁、そして自分たちの愛液。それらが混ざり合って乾燥し、皮膚の上でパリパリとした薄膜を作っている。

 動くたびに皮膚が突っ張る。

 関節の裏が引きつる。

 痒い。そしてどうしようもなくベタつく。


「……お風呂、入りたい」

 ミオが虚ろな目で呟いた。

 彼女のローブはもう原形を留めておらず、腰に布切れを巻いているだけの半裸に近い状態だ。白い肌には、先ほどルナがつけたキスマークのような赤い痕が点々と残っており、乾いた粘液が雲母のように光っている。


「そうだな……。このままでは戦闘に支障が出る」

 セリアが重い腰を上げる。

 彼女もまた、シャツの前が全開のままだ。直そうにもボタンがない。裾を結んで胸を隠しているが、動けばすぐに弾け飛びそうだ。

 だが、今の四人にそれを恥じらう理性は残っていなかった。

 あるのは、この不快な汚れを洗い流したいという、動物的な本能だけ。


「水の匂いがします」

 ルナが鼻をひくつかせた。

「あっち……風に乗って、あの生臭い湿気とは違う、清涼な気配がします」


 その言葉に、全員の濁った目が輝いた。

 水。洗い流せる。

 その希望だけを頼りに、四人は岩場を降り、再び鬱蒼とした森の中へと足を踏み入れた。


 ルナの案内で進むこと数十分。

 棘のある藪を抜け、巨大なシダ植物の壁を抜けた先に、それはあった。


「わぁ……」

 ミオが感嘆の声を上げる。


 そこには、美しい泉があった。

 直径二十メートルほどの円形の池。

 水面は鏡のように静かで、周囲の極彩色の花々を映し出している。

 水の色は透明に近いが、わずかにピンク色を帯びており、夕焼けのような幻想的な輝きを放っている。

 そして何より、芳醇な香りが漂っていた。

 高級な蜂蜜と、花の蜜を煮詰めたような、甘く、うっとりするような香り。


「水だ……!」

 アリサが駆け寄る。

 水際にしゃがみ込み、恐る恐る手を入れる。

 温かい。

 体温より少し高いくらいの、絶妙な湯加減。

 指についた汚れが、水に触れた瞬間に溶け出していくのが見える。


「温泉……? いや、冷泉か」

 セリアも近づき、温度を確かめる。

「魔力反応も薄い。……毒の沼ではなさそうだ。少なくとも、あのスライムや蔦のような攻撃性はない」


「もう我慢できない! 入っちゃおうよ!」

 ミオが叫び、残っていたボロボロの布切れを脱ぎ捨てた。

 真っ白な裸体が、森の緑の中に晒される。

 彼女は躊躇なく泉に飛び込んだ。


 バシャン!


 水飛沫が上がる。その飛沫さえも、どこか重たく、キラキラと輝いている。

「ん〜っ! 気持ちいい! トロトロしてる!」

 ミオが顔だけ出して叫ぶ。髪が濡れて張り付いている。


「トロトロ?」

 アリサも服を脱いだ。どうせもう着ていられないほどボロボロだ。

 全裸になり、足を入れる。

 ぬるり。

 独特の感触。

 ただの水ではない。最高級の美容液か、あるいは薄めたオイルのような、肌に吸い付くようなとろみがある。

 入った瞬間、全身の毛穴から汚れが吸い出されるような快感。


「すごい……肌がスベスベになるわ」

 ルナも続き、豊満な体を沈める。

 最後にセリアも剣を岸に置いて入った。

 四人は広い泉の中で、久しぶりの安息に浸った。


 お湯(のような液体)は、こびりついた汚れを優しく溶かしていった。

 スライムの残骸も、植物の汁も、みるみる落ちていく。

 肌が本来の白さを取り戻していく。

 だが、その代わりに、全身が薄いピンク色の膜でコーティングされていくような感覚があった。


「ふぅ……生き返る……」

 アリサは肩まで浸かり、全身の力を抜いた。

 浮力が強い。体がふわふわと浮く。死海のように、力を入れなくても沈まない。

 甘い香りに包まれて、意識が微睡んでいく。

 脳が溶けるようなリラックス感。


 セリアが隣に来た。

 濡れた黒髪をかき上げる仕草が色っぽい。

 お湯の中で、彼女の太腿がアリサの太腿に触れる。ヌルリと滑る。

「いい湯だな。……これなら、疲れも取れそうだ」

 セリアがアリサの肩にお湯をかける。

 とろりとした液体が、鎖骨を滑り落ち、胸の谷間へと流れ込む。


「ちょっと甘い匂いが強すぎない?」

 ミオが口元についた滴を舐めた。

「……ん? 甘い」

「え?」

「このお湯、甘いよ。砂糖水みたい」


 アリサも指についた滴を舐めてみた。

 甘い。

 強烈な甘み。蜂蜜をそのまま飲んでいるようだ。

 美味しい。喉の渇きが一瞬で癒やされる。

 でも、何かがおかしい。

 ただの水が、こんなに甘くて、こんなに粘り気があるはずがない。


「……ねえ、なんか体が重くない?」

 ルナが言った。

 彼女は岸に上がろうとしていたが、足が滑って戻ってきた。

「上がれない……」

「え?」

「底が……ヌルヌルしてて、踏ん張れないの。それに、足が……抜けない」


 セリアが顔色を変えた。

「まさか」

 セリアが岸に向かって泳ごうとする。

 だが、進まない。

 入った時は心地よかった「とろみ」が、今は強烈な抵抗となって体にまとわりつく。

 水飴の中を泳いでいるようだ。

 腕を上げるたびに、太い糸を引く。


「くっ……! 粘度が増している!?」

 セリアが藻掻く。

 動けば動くほど、液体が絡みつく。

 サラサラだった液体が、急速にゲル状に、そして接着剤のように硬化し始めている。


 ゴボッ。


 泉の中央から、巨大な気泡が上がった。

 水位がゆっくりと下がり始めた……いや、違う。

 岸だと思っていた周囲の壁が、盛り上がっているのだ。

 赤黒い、肉厚な壁。

 それは岩ではなく、巨大な花弁だった。

 今まで水面の下に隠れていた本体が、獲物を認識して活動を開始したのだ。


「これ……泉じゃない!」

 アリサが叫ぶ。

 視線を上に向ける。

 頭上には、巾着のようにすぼまり始めた天井(花弁の先端)が見える。

 太陽の光が、円形に切り取られていく。


「食虫植物……! 巨大なウツボカズラの中だ!」

 セリアの叫びが響く。

 そう、ここは泉ではなかった。

 超巨大な捕食植物の、消化液が溜まった袋の中だったのだ。

 甘い香りと温かい液体で獲物を誘い込み、逃げられなくしてからゆっくりと消化する罠。


「いやぁぁぁ! 溶けちゃう! 私、消化されちゃうの!?」

 ミオがパニックになり、バチャバチャと暴れる。

 だが、暴れるほどに体は沈んでいく。

 比重が変わったのだ。

 液体が獲物を捕らえるための「蜜」へと変質した。


「みんな、固まって! 沈まないように!」

 アリサが叫び、近くにいたミオの手を掴む。

 重い。

 ミオの体は琥珀の中の虫のように、金色の液体に塗り固められている。

 引き寄せると、ヌチャア……と重たい音を立てて糸を引く。


「ミオ! 魔法で足場を凍らせて!」

 セリアが指示する。

「う、うん! フリーズ!」

 ミオが杖を振る。

 冷気が放たれるが、凍らない。

 この消化液は魔力を吸収する性質があるのか、氷が一瞬で溶けて飴状になってしまう。

「だめ……凍らないよぉ!」


「私が障壁で押し返します!」

 ルナが叫び、障壁プロテクションを展開する。

 透明な壁が蜜を押しのけようとする。

 だが、圧倒的な質量と粘度が障壁を押し潰す。

 ミシミシ、という音がして障壁が砕け散った。

「きゃあっ! 重い……!」

 ルナが波に飲まれるように沈む。


「くそっ……! 剣が……!」

 セリアが岸(花弁の縁)に置いた剣に手を伸ばす。

 だが、壁が高くなって届かない。

 袋の口が閉じていく。

 光が遮られ、薄暗くなっていく。

 ピンク色の肉壁に囲まれた、閉鎖空間。


 甘い地獄。

 四人は全裸で、高粘度の蜜の中に閉じ込められた。

 呼吸をするたびに、甘ったるい蒸気が肺を満たす。

 肌に密着する液体は、熱を帯びて活動を始めた。

 ピリピリとした刺激。

 消化が始まっている。皮膚を溶かし、養分として吸収しようとしているのだ。


「あっ……んぅ……!」

 ミオが艶かしい声を上げる。

「痛い……熱い……なんか、吸われてる……」

 液体の浸透圧が、体の水分と魔力を吸い出そうとしている。

 毛穴の一つ一つから、精気が抜けていく感覚。

 同時に、液体の成分が粘膜から侵入し、神経を麻痺させ、快楽中枢を刺激する。

 獲物が暴れないように、快感を与えてとろけさせるのだ。


「だめ……力が……入らない……」

 セリアがアリサにもたれかかってくる。

 彼女の体は、黄金色の蜜でコーティングされ、テラテラと光っている。

 美しい。そしてエロティックだ。

 蜜が胸の谷間に溜まり、太腿の間で糸を引く。

 動くたびに、クチュ、ヌチャ、という音が密室に響く。

 セリアの豊かな胸が、蜜の重みで形を変え、アリサの腕に押し付けられる。


「アリサ……斧は……?」

 セリアが耳元で囁く。

 アリサは背中の感覚を確かめる。

 背負ったまま入った。ある。

 『破壊の戦斧』は、まだ背中にある。蜜の中でもその存在感は消えていない。


「あります……でも、手が……」

 腕を動かそうとするが、蜜の抵抗が凄まじい。

 数十キロの重りをつけたようだ。

 それに、アリサ自身もこの甘い毒に侵され始めていた。

 頭がぼーっとする。

 このまま溶けてしまいたい。

 みんなと一緒に、一つのドロドロの液体になってしまえば、もう戦わなくていい。

 蜜の温かさが、羊水のように心地いい。

 そんな甘い誘惑が囁く。


「アリサちゃん……」

 ミオが正面から抱きついてくる。

 蜜まみれの胸が押し付けられる。

 ヌルリとした感触。

「キスして……」

 ミオが唇を寄せる。

 唇にもたっぷりと蜜がついている。

 キスをすれば、とろけるような甘い味がするだろう。

 舌を絡めれば、蜜と唾液が混ざり合い、最高のデザートになる。


 ダメだ。

 ここで流されたら、本当に死ぬ。

 消化されて、この植物の養分になって終わる。

 骨まで溶かされて、森の一部になる。

 そんな最後は嫌だ。私は、みんなを守ると誓ったんだ。


 アリサは舌を噛んだ。

 ガリッ。

 鉄の味が口に広がり、甘い麻痺を吹き飛ばす。意識が覚醒する。


「うおおおおおっ!」

 アリサは叫び、全身の筋肉を総動員した。

 蜜の抵抗をねじ伏せる。

 抱きついてくるミオを引き剥がす。

 ベリベリッ、と音がしそうだ。

 背中に手を回す。

 斧の柄を掴む。


 抜刀。

 ズズズ……と重たい音を立てて、斧が蜜の中から現れる。

 漆黒の刃は、ドロドロの消化液の中でも鋭い輝きを失っていない。


「セリアさん! ルナさん! ミオを掴んで!」

 アリサの叫びに、セリアが正気を取り戻す。

「分かった!」

 三人が固まる。ルナがミオの腰を抱き、セリアがルナの肩を掴む。


 狙うは壁。

 この肉厚な花弁をぶち破る。


破壊ブレイクッ!!!」


 アリサは斧を横薙ぎに振るった。

 水中(液中)でのスイング。速度は乗らない。

 だが、『破壊の戦斧』の能力は健在だ。

 刃が壁に触れた瞬間、概念的な「硬度」と「結合」が断ち切られた。


 ドゴォォォォン!


 爆発音。

 植物の壁が、風船が破裂するように弾け飛んだ。

 大量の蜜と共に、四人の体が外へ放り出される。


「きゃあああああ!」


 四人は空中に投げ出され、そして地面へ叩きつけられた。

 泥まみれの地面へ。

 ドサッ、グチャッ。


「はぁ……はぁ……」

 アリサは仰向けに倒れたまま、荒い息を吐いた。

 助かった。

 見上げると、さっきまで入っていた「泉」――巨大な袋状の植物が、横っ腹に大穴を開けて萎んでいくのが見えた。

 傷口からドロドロとした消化液が滝のように流れ出し、地面の草を溶かしている。


「……ひどい目にあった」

 セリアが起き上がる。

 その姿は、入る前よりもさらに凄惨だった。

 全身が黄金色の蜜まみれ。髪も、顔も、体も、すべてがベトベトにコーティングされている。

 地面の泥や枯れ葉が、蜜にくっついて全身に張り付いている。

 まるで衣をつけたフライのようだ。

 動くたびに、関節の間で蜜が糸を引き、ネチャネチャと音を立てる。


「うぅ……ベタベタするぅ……」

 ミオが泣き言を漏らす。

 手足を開くたびに、糸を引く。

 乾き始めた蜜が肌を突っ張らせ、動きを阻害する。

 瞼がくっついて開きにくい。


「水……ミオちゃん、魔法でお水を……」  

 ルナが縋るように言うが、ミオはカサカサになった唇を震わせて首を振った。


「ごめん……出ない……」  

 杖を振ろうとするが、火花が散るだけで水は一滴も現れない。  


 先ほどの捕食植物の中で、水分と魔力を根こそぎ吸い取られてしまったのだ。  

 今のミオには、指先の汚れを落とす程度の水を作り出す余力さえ残っていなかった。


「行くぞ。……出口を探すんだ」

 セリアが剣を拾い上げる。

 剣も蜜まみれだ。鞘に収まらないかもしれない。


 四人は全裸のまま(正確には、蜜と泥の衣を纏って)、再び歩き出した。

 甘い匂いが、体から消えない。

 皮膚に染み込んでしまっている。


 ブゥン……。


 その匂いに誘われて、森の奥から無数の羽音が近づいてくるのが聞こえた。

 重低音。

 虫だ。

 甘い蜜に群がる、巨大な虫たちがやってくる。

 四人は今、歩く極上の餌となっていた。


 地獄はまだ、終わっていなかった。

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