大きくなったなぁ
長らくお待たせしました!!
「師匠、これは魔術、ですか?」
少し肌寒くなってきた秋のある日。秋らしく、紅葉で景色が彩られてきたこのごろ、わたしは一層魔術の特訓に励んでいた。
体調が悪くなり、ベッドの中で悶々として色々と考えたけれど、とにかく魔術を使いこなせるようになる事は大切だろうという結論に至ったからでもある。
しかし、一番の理由は、『今』を大切に生きたいと思ったからだった。
一度は死んだわたし。それが死に戻って、こうして師匠とまた会えて、魔術の特訓をしてもらっている。こんなに幸せな事は無いだろうと言う位に、毎日の日々が充実していて、ありがたいものだった。
だからこそ、その日々を大切に大切に生きなければならないだろうと思ったのだ。過去は振り返っても、戻れない。未来にも、今すぐには行けない。だから、くよくよ考えても仕方ない。今できる事は何か、今だからこそやれる事は無いのか。
そうしてハッキリと優先順位を決めると、自分の気持ちもすっきりした。今までは、師匠を残して死んでしまう自分の未来を、どうにか変えなければ、でもどうやって? と言う風に、いつまでも悩んでいた。それこそ、四六時中。だが、そんなことに悩み、もし本当に自分が死んでしまったら、師匠との時間は恐らく、もう二度と戻らない。師匠のぬくもりが欲しいと思っても、もうもらえない。師匠が今、自分の傍で生きてくれている。それだけで、わたしはもう充分に幸せなのだと思い、日々を過ごしているのだった。
「ああ、それはな・・・。その、魔術と言うよりは、—————なんて言えば良いかな・・・」
今日、師匠に教えてもらったのは、お水やもの、人にたくさん『ありがとう』と言えば、自分にとって良い事ばかりが自分に訪れるということだった。
「どちらかと言うと、おまじないに近いかもな。でも、これはおまじないよりも、正確で確かなもので、事実だ。ありがとうと言い続ければ、必ず良い事が訪れる。ただし」
そこで、師匠は言葉を切った。
「愚痴や弱音など、マイナスなことは一切言わない事。これが、鉄則だ。良いか、これは一種の法則なんだよ」
「分かりました。絶対、言いません。師匠、いつも色々と教えてくださって、ありがとうございます!」
早速教えを守り、ありがとうと言ってみる。すると、師匠の、真剣な目をして、張りつめていた空気をふっと緩め、微笑んだ。
「こちらこそ、いつもありがとうな。————そういえば、アメリアももう十六か」
「はい!」
「もう大人だな」
「え、えへへ」
少しこそばゆくなって笑うと、師匠は柔らかい笑顔になった。銀色の瞳が、見た事無いほど柔らかい光を宿す。口の端も嬉しそうに上がっていて、纏う雰囲気が一気に柔らかなものになった。整った顔立ちで柔らかく微笑まれ、どきっとする。
それから、ぽんとわたしの頭に手をおいた。
「お前も大きくなったなぁ」
「・・・っ!?」
ぼんっ、と赤面してしまう。
「お、お、お、お水! 飲んできますっ!」
いつも通り、撫でられただけのはずなのに、彼の柔らかい眼差しと、いつもの優しい声に絆されてしまった。
(それと・・・。絶対に師匠には言えないけど・・・! 言えない、師匠の手が大きくて、『男の人』の手だったなって思っちゃった、なんて—————っ!)
わたしは赤面して、台所に駆け込んだのだった。
いつも、待ってくださる皆さま・・・!
本当に、ありがとうございます。感謝しかありませんっっ!
実は、ストックの時系列が明らかにおかしいだろ、となり、修正に時間を費やしておりました。
少し無理矢理?みたいなところもあるかもしれません・・・。その際は、誤字脱字報告や、感想などで教えてくださると、本当にありがたいです!




