神殿生活 三日目
遅い時間になってしまい、すみません!
「お食事ですよ」
ここに来てから、体感で恐らく三日目。食事は一日三食、きちんと出されるし、シャワーも許される。魔力を吸い取られるようなことも、今のところは無かった。その代わり、部屋から出しても貰えないけれど。
しかし、何時までたっても身柄を確認しようとせず、ずっと保護しようとしているところに薄気味悪さは感じている。やはり予想は当たって、国王が仕組んだものと見て間違い無さそうだ。
「ありがとうございます」
「いえいえ〜。今日のデザートは豪華ですよ!」
にっこりと微笑む、柔らかな印象の彼女はこの大神殿で侍女として働いているらしい。名前は、ミーニャとしか教えられなかった。
「ミーニャさん。いつもありがとうございます」
「いいえ! それより、大神殿長との面会ですが……一応、申し込んでおきましたけれど、駄目だったようです。申し訳ありません、お力になれず……」
ミーニャがすとん、と肩を落とす。わたしはそんな! と首を力強く振った。
「むしろ、面会を申し込んでもらっただけでありがたいんです! ありがとうございます」
「いえ……アメリア様にお仕えすることが出来て、ありがたいと思っております。今までは、神官の方たちのお世話をしていたんですが、その……高圧的な態度をとってくる方が多くて。わたし、とっても困っていたんです」
「そうだったんですね……」
少し、同情してしまう。彼女ももしかしたら、国王側に加担する一人なのかもしれないと思うと、油断は出来ないけれど、彼女の話に嘘は無さそうだった。
眉を下げてしまった彼女は、はっとしたように笑みを浮かべると、
「申し訳ありません、変な話をしてしまって」
「いえ!」
「聖女様のお時間をとらせてしまってはいけないときつくいわれておりますのに……」
「え? 聖女様……?」
ミーニャがポツリと呟いた言葉に、思わずおうむ返しに尋ねてしまう。すると、彼女はむしろ不思議そうな表情でこちらを見つめてきた。
「え? ええ、アメリア様は聖女様だと伺っておりますが……?」
「は!? だ、誰から!? そもそも、聖女って何ですか!?」
わたしの態度に、ミーニャが困惑した様子で答えを返す。
「大神殿長の側近の方から、お仕えする際に、伺っております。聖女というのは、国を救う尊い方でいらっしゃいますが……。女性の場合は聖女、男性の場合は聖人というそうです」
丁寧な回答に、なるほどと一度は理解したが、やはり納得できなかった。
「いえあの、わたしは何もしていないんですが!?」
「え……? ですが、豊富な魔力がおありだと聞いておりますが……。それで、国を救われるのだと」
わたしは目を大きく見開いた。まさか、こんなところに情報源があったとは。
「国を救う? それは、どういう意味ですか?」
「今、国の中枢には瘴気がたまっているそうです。それを壊すための装置を、国王陛下がつくらせていて、アメリア様の膨大な魔力を注げば、その装置は稼動するのだと聞いております。その瘴気のせいで、国民たちにも少しずつ被害が及んでいるんだとか」
国の中枢に瘴気がたまっている。恐らくそれは嘘だろうと思う。まず瘴気は、この国の場合、深い森にしか存在しない。それは昔からの、この国の性質上だった。
しかし、国の中心地に森など存在しない。森は、辺境にしかつくられておらず、もしも別のところに森が存在し始めていたら、その森はすぐに討伐の対象になる。
(けれど……ミーニャは国の『中枢』と言った。何でだろう、中心地とは別の場所なのかな?)
深く考え込むが、よく分からず結局顔を上げた。そこにはミーニャの心配そうな黄色の瞳があった。
「大丈夫ですか?」
「ええ……。ただ、わたしはそのような計画は聞いたことが無かったので、驚いただけです。わたしがここに来たのも、誘拐されてしまったところを助けられ、保護されているだけですから」
「ええ!? ですが、神殿長はここの部屋から出すな、と……」
「でしょうね。恐らく、わたしの魔力を使って何かを成し遂げようとしているのは間違いありません。でも、ミーニャさんに伝えられている事実とは別だと思います。実際に、わたしにその計画は伝わっていないし……」
はっ、とした様子でミーニャが息をのむ。
「まだ分かりませんが、相手の目的は瘴気を消すことではないということは確かでしょうね」
「そんな……!」
「まだ分かりませんけど……」
曖昧に言葉を濁すが、わたしのいうことは本当かもしれないという疑念が彼女の胸中に生じたようだった。ほっ、と安堵する。全く伝わらなかったらどうしようかと思っていたところだった。
安心したわたしは、ひとまずミーニャさんから食事を受け取り、夕食をいただくのだった。腹が減っては戦が出来ぬっていうしね。
すみません、明日と明後日は更新を休ませていただきます。
木曜日に、また状況を報告できたら良いな……と思っています。。。




