お願いだから
「すまんっ!」
今、わたしはソファに座り、下を向いていた。そこには土下座をしている師匠の姿がある。
昨夜、べろんべろんに酔ってしまった師匠は、わたしに対して可愛いと言いまくり抱きしめまくった。しかし当然、一晩眠り次の朝が来ると、師匠の酔いは醒める。
その結果が、これだ。
「もう良いですよ! さっきから何回謝ったと思ってるんですか!」
「いや本当にすまんっっ!」
「もう良いですって! き、気にしてませんから、わたし!」
本当は気にしまくってるし、意識しまくっているけど、そんなこと本人に言えるわけが無い。けど、どうしても視線は泳いでしまった。
師匠はがばっと顔をあげると、申し訳ないっともう一度謝った。
「も、もう立ち上がってくださいよ! ほら、今日はゆっくり過ごしましょうって言ってたんですから! こんなに忙しなく謝られたらゆっくり出来ませんから! ね?!」
何とか説得を重ね、ようやく立ち上がってもらう。そして中断していた朝食を再会した。ふう、待たせてごめんよ、わたしの愛しいウインナー。
「もう禁酒するわ……」
「いや、別に良いんじゃないですか? 気分転換にもなるんだし、やめることないですよ。ただ量を過ごさないようにすれば良いだけで」
「はあ……。アメリア、本当に……」
「もう謝らないでくださいよ!?」
謝罪の気配を感じたわたしは、慌てて師匠の言葉を遮る。こう何度も謝られると、流石に居心地が悪い。師匠とは笑顔で過ごしていたいし。
「それより、このウインナー焼き加減も味付けも最高ですね」
「アメリアの好きなもんだからな、腕によりをかけてつくった」
「師匠、前から思ってたんですけど、料理上手ですよねー。わたしも巧くなりたいけど、あんまり上達しないし」
「ウインナーで料理上手とか分かるのかよ……? っていうか、それはこだわりの差だろ、別に気にするこたない。まあ、あとは慣れだよな。アメリア、八歳まで貴族として過ごしてただろ、そんな料理する暇無いからな」
いやわたし、一応これでも二度目の人生なんですけど……。
微妙な表情でウインナーを頬張るわたしをみて、フォローが失敗したと悟ったのか、師匠が慌てて次の話題を差し込んだ。
「そう言えば、国王とのやつどうなるんだろうな。春になれば絶対に呼び出されるよな?」
「あっ、忘れてました。いっそ、亡命しますか?」
前の師匠のお返しとばかりに、悪戯っぽく提案してみると、水をごくごくごくっと飲んだ師匠がぷはーっと息を吐いていった。
「良いな。そうするか。流石に国を壊したくないしな」
「……え、え?」
「まあ、前も言ったけどこれは最終手段だよな。けど準備しとくに越したことない」
「……そ、そうですよね」
わたしとしては、一応貴族籍を持っている身なので、この国を離れることはこれまで考えたことは無かった。しかし、その選択があるのかと新たな発見になる。
「けど、それも確かに楽しそうですよね……。いつか師匠と旅に出てみたいなって思いますもん」
もちろんそれは、『好きな人と』という気持ちでもあるが、今まで師としてわたしを導いてくれた彼と、という気持ちの方もかなり大きかった。何より、彼がわたしのことを色々と守って、支えて、導いてくれたからこそ、わたしはこうして二度目の人生も前回の人生同様に幸せに生きることが出来ているのだから。
「おお……良いな、俺もいきたいわ。何処が良いんだろうな」
「うーん、隣国とか結構評判良いですよね。旅行に最適とかいうの、聞きますけど」
「まあ、確かに治安は良いわな」
「そうなんですか。師匠、いったことあるんですね?」
何気なく、聞いたそのときだった。それまで、何ともないいつもの表情だった師匠が、苦々しげな表情になったのだ。
「……し、師匠?」
「ああ、や、まあな」
「……そうですか。———えーっと、あと南の方の隣国とかもいってみたいですね。ほら、単純に隣国っていえば、この国では西側の国を示すでしょ?」
話題の変換は割と巧く出来たと思う。少なくとも、あの苦々しげな表情から色々と推測してしまって、どきりといやな想像をしてしまって、動揺してしまったわたしにしては。
師匠も、一瞬俯いて次に顔を上げた瞬間には、笑顔だったから、巧かったはずだ。誰か、そういってほしい。お願いだから。
お願いだから、
師匠の実家が西側の隣国にあって、それをわたしに知られたくなくて、でもわたしがいっちゃったから、苦々しげな表情になって、つまり、わたしに師匠の気持ちに踏み入られたくないと師匠が思っているだなんて。
そんなこと、誰か違うと否定してほしい、お願いだから。
踏み込まれたくなくて苦々しい顔をしたと、気づきたくなかった。
ぬぅ、表現伝わるかな……。前々回くらいにも言いましたが、作家さんって本当にすごい。
いろんな人に伝わって初めて、完成するものですからね、本って。
伝わらないと、意味ないですよね。
私はまだまだ表現方法が稚拙で幼稚で未熟なので、これからも磨かねば……!




