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不法侵入 2

「ふざけないで! 師匠はわたしを利用したりなんかしていません! そのような戯言を仰るのなら、今すぐ帰って下さい。不法侵入をするなんて信じられません、出て行って!」


 はあ、はあと肩で息をする。二人を睨め付けるとダルクはぽかん、とした表情でこちらを見ており、ゼリアはびくっと震えていた。


 そのとき、一番聞きたかった声が聞こえた。


「何だぁ? どうした、アメリアっ・・・って何だ、お前ら!」


 わたしは声が聞こえた方向を勢い良く見つめる。そこには、ぎょっとした様子で双子を見ている師匠の姿があった。ほっとして、涙がこぼれそうだ。


「師匠っ!」

「な、なんだっ!? こいつらは、一体何者だよ?!」

「なんか、わたしが師匠に利用されていて不当な扱いを受けているって国王が言ったから、貴族たちがわたし達の居場所を探してるみたいなんです! それで、この人たちも・・・!」

「はあ!? 何だかよく分かんねえが、そんな事実は一切ないんだが?」


 師匠がハッキリと言い返してくれて、わたしは安堵した。わたしと師匠の迫力にされていたゼリアとダルクだったが、はっとして叫ぶ。


「何だって!? しかし、陛下がそう仰ってるんですよ!!?」

「そうですわよ、陛下の仰っていることを否定するおつもり!?」


 二人が喚き始めて、わたしは辟易してしまった。しかし、次の瞬間に師匠がぱちん、と指を鳴らすと二人は口を閉じた。


「っ!?」

「っ、っ!!」


 二人が口を開こうともがもがさせているけれど、師匠の魔術は絶対だ。彼らの魔力では師匠の膨大な魔力に、逆らうことは出来ない。わたしですら、かなり頑張らないと師匠の魔術は破ることが出来ないのだ。


「黙ってくれねえかな。まあ良いか。ひとまず、お前らを王都に送り返してやる。陛下とやらの元にな。そんで、その陛下とやらに告げろ」


 師匠はいつも通りの口調で、何とも無いかのように話していたが、ひゅっと眼光を鋭くした。


「俺たちの平穏な暮らしを壊すようなら、覚悟しておけ」


 低く、感情を抑えられたかのような声。その迫力と、びりびりと感じる魔力の圧に二人はぐっと押し黙り、目を見開いた。ダルクはごくりと音が聞こえるほど大きく息をのみ、ゼリアに至っては見開いた栗色の瞳が潤み始めていた。恐らく、恐怖から来る涙。


 ダルクが慌てたように頷くと、師匠はぱちんと再度指を鳴らし、二人の拘束をといた。それとともに、わたしを振り返る。


「アメリア」

「はい!」

「こいつら、送ってやれ。俺はこの家を囲む結界をこれから、強化する。・・・こいつらみたいなアホに見つかったらたまんないからな」

「分かりました」


 わたしはいつも通りの笑みを浮かべて、それにふんわりと頷いて答えた。師匠が家の玄関方面へ向かうのを見送り、さて、と二人に向き直る。


 二人は、わたしが変わらぬ笑みを浮かべているのが怖いらしい、そっとこちらを瞠目した目で見ていた。


「あー、王都へ、でしたよね。どちらがよろしいですか? 貴方がたのお家がよろしいでしょうか?」

「・・・っ、王宮へ・・・お願いします」

「ああ・・・そうでしたね。陛下とやらに、よろしくお伝えくださいませ。それから、もう一つ伝言を頼めますかしら?」


 わたしが微笑みながら首を傾げると、ダルクがもちろんです、と即答した。よっぽど師匠が怖かったようだ。


(わたしは師匠の虎の威を借りているにすぎないんだけど・・・。ま、いっか)


 納得したように頷き、わたしは口を開いた。


「わたくしの家族に、『陛下がわたくしの居場所はどこか、と尋ねられたらすぐに逃げてくださいませ。ご迷惑をおかけ致しまして申し訳ありません』と」


 わたしの伝言に、複雑そうな表情のまま頷くダルク。ゼリアはわたし相手だと完全に舐めているのか、そっぽを向いている。


「もちろん、他言無用です。分かっていますね?」

「も、もちろんです」

「ふん、何であんたみたいな女の言うことを聞かなければならないのよ!」


 ゼリアがとうとう我慢できなくなったのか、わたしに向かって悪態をつき始めた。


「大体、陛下の仰ることに対して虚偽だと言うなんて! 失礼きわまりないわよ!」

「失礼なのはどちらでしょうか? 魔術を学ぶため、王都にはおりませんが、一応わたくしは伯爵家に籍を置く身。わたくしに対して、そのような口をきくのは子爵家としてはよろしいのですね? そのような教育を施されているとは存じませんでしたわ」


 わたしが冷静に、けれど嫌味をふんだんに混ぜて言い放つと、彼女は単純なのだろうか、顔を赤くし始めた。怒りからだろう。


「うるさいわよ、大体アンタなんか陛下がすぐ消せるのだからね! 黙ってなさいよ、あたしたちをバカにするなんて信じられない! 覚えてなさい!」

「ええ、分かりました。必ずや、覚えておきますわ。では、さようなら」


 そう言ってわたしは微笑むと、ぱんっと一つ手を打った。彼女は何かを言う直前だったが、気にせず送り出す。


(ふう、転移魔術、成功すると良いけど)


 今のところ、成功率は百発百中ではあるが、相手に苛立っている場合はどうなるかは保証できない。空を見上げる。


(ま、何とかなるでしょう)


 わたしは気持ちを切り替えると、結界を強化してくれているはずの師匠の元へ足早に向かったのだった。

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

うう、寒っ……。

寒い時期ですので、皆さま風邪などにお気をつけ下さいませ……。

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