不法侵入 1
思ったより長くなってしまった。。。
お時間あるときにぜひお読みくださいぃぃ!
「師匠! 最近はわたしも師匠も頑張っていたので、ご褒美に今日は!」
わたしは満面の笑みを浮かべながら、師匠の前に『あるもの』を掲げた。本を読んでいた師匠は、あ? と訝し気にこちらに視線をやる。
「・・・バスケット?」
「はい! 久しぶりに、ピクニックでもしませんか? といっても、遠く離れすぎては危ないので、お庭でピクニックをすることにします!」
「・・・庭で? ウチの狭い庭でか?」
「うっ、はい。そうですけど、何か文句でも!?」
やや圧をかけつつ、ぐっと顔を近づけると、師匠は少し引き気味に首を振った。
その様子を見て、ああ嫌われるようなことしちゃったかな、と少し反省。
「な、何も無いが・・・。ま、良いか。たまにはお前も休憩しないとな」
「わーい、ありがとうございます! じゃ、サンドイッチつくってきますね!」
「おう。俺はちょっといい感じの場所をつくってくる」
「ありがとうございます!」
師匠の魔術は本当にすごいのだ。草がぼーぼーに生えているような場所でも、映える場所にできるのだ!
(映えるって何だって言うのは置いといて・・・)
わたしは腕まくりをすると、予め用意しておいた材料でサンドイッチをつくり始めた。
「ふんふふーん。まずは〜、定番のサンドイッチをつくりまーす」
鼻唄まじりに手際よく四個、作り上げる。
「そして〜、次は! フルーツサンドでもつーくろっかな」
ふんふんふふーん、と鼻唄をしていたら。
「ご機嫌だな、アメリア」
「うわっ、師匠! 驚かせないでください!」
にゅっ、と横から現れた師匠に文句を言いつつ、フルーツを一個つまんだ。
「んん! んまぁい! 甘い!」
「どれ、じゃあ俺も」
師匠もつまみ食いをして、ん! と満足そうに微笑みを浮かべた。
「うまいな」
「ですよねー! もう、コレつくった人天才すぎる」
「俺も果物を栽培したいんだが、毎年悩むんだよなー」
「で、結局見送ることになる」
「そうなんだよな。まず、何つくるかで迷うしな」
他愛も無い話を続けながら、その後も時折つまみ食いをして。
「できたー! よし、師匠! 行きましょう!」
「おう、行くか」
師匠と手分けして庭に食べ物や飲み物を運んだ。師匠のつくってくれた庭は、とても美しく整えられている。
「うわっ! すごい、何回見てもこれは圧巻ですね・・・。やっぱり師匠、庭師にでもなった方が良かったんじゃないですか? センスありますよ」
「いや、俺がこうして整えれてんのは魔術使ってるからだ。魔術師になんねえと、庭は整えられねえよ」
「そうですけど、センスはあるんだから、あとは技術を身につけるだけでしょ? それなら師匠にも出来ると思うんですよね」
「師匠にも、って完全に舐めてるだろ」
「そんなことないです!」
あははと楽しくセッティングを続ける。
「さ、いただくか」
「はい! いただきまーす!」
「いただきます」
二人同時に、はむっとサンドイッチを頬張る。濃厚な麦の香りがするパンで挟まれたサンドイッチは、絶品だった。
「んんん〜〜〜〜! 美味しい!」
「アメリア、天才だな。二人でピクニック屋でも開くか」
「良いですね、意外に売れそう〜!」
サンドイッチだけでは口の中の水分がとられるので、飲み物を飲もうとしたとき。
「あっ、グラス忘れた・・・!」
「お? あ、本当だな」
「すみません、取ってきますね!」
「いや、良い。俺が取ってくる」
すぐに取りに行こうと立ち上がりかけたら、師匠の方が一足先に早く家の中へ向かってしまった」
「ありがとうございます!」
声だけすがらせたが、届いたかどうかは怪しい。
待ってる間、花々を眺めとくかと視線を上げた。すると、どこかからか声が聞こえる。
(え? 師匠の声、じゃないよね)
何より、女性の声が混ざっている。
「何処にいるんだ」
「知りませんよ、ご自分でお探しになったら? わたくしはここで待っていますから」
「お前が探すと言い始めたんだろう!?」
「陛下のご命令ですもの、当たり前のことでしてよ」
陛下。
その一言が聞こえた瞬間、はっと身を硬くする。
(まさか・・・。陛下はあれから懲りずにわたしを探したってこと!? いや、師匠の家はとうにばれていたんだ)
狙いはまさかの、わたし。師匠が帰ってくる前に、彼らに気づかれないようにしなければとぎゅっと小さくなる。息をひそめるが、彼らはずかずかと家の敷地に入ってきていることが嫌でも分かった。
「もー、何処にいるんですのよ」
女性の声が近づいてくる。どうやら、男性とは二手に分かれたようだ。
(まずい・・・。このままだと確実に見つかっちゃう! どうすれば良い、どうすれば・・・!)
焦ったせいか、身体を少し揺らしてしまった。そのせいで、かさっと葉っぱと髪の毛が触れ合い、音が鳴る。
「あら?」
(まずい—————っ!)
「あらあら、そこにいましたのね! 見つけましたわよ、アメリア・ジュネーラル!」
見つかってしまった。わたしは観念して、立ち上がった。
目の前にびしいっと指を突きつけてきている女性は、どこか見覚えがあった。
(あれ、知り合いかな・・・っていやいや、そんなことを考える前に)
「あのぅ、不法侵入をなさってまでわたしを見つけたいってどういうことでしょうか? あと、お名前を教えていただけますか」
ごく冷静に問うたのがよっぽどおかしかったのか、彼女は目を見開く。
派手な化粧で彩られた顔は、もっとナチュラルなメイクをすれば美しさがより際立つのにと思わないでも無い。顔立ちが整っていることは確かだ。水色の髪の毛は、複雑に結い上げられており、何故かドレスをきている。多分、動きにくいはず。
そして、こちらをじっと見つめているのは栗色の瞳だった。
(うーん、貴族の人だろうけど・・・。何しろわたし、八歳までしか貴族として生活してないしな・・・)
全く覚えがない上に、彼女が何も話してくれないので困惑していると。
「あーっ、ゼリア! ここにいたのかよ」
「ゼリア?」
「ダルク」
ゼリアと呼ばれた目の前の女性は、はっと振り返った。そこには女性と全く同じ色を持った男性がいた。顔立ちも、女性の方が化粧をしていなければこんな感じだろうなと思わせるもので、二人はどうやら————。
(双子?)
「ゼリアさんと仰るんですね」
わたしが声をかけると、ダルクと呼ばれた男性の方がばっとこちらに視線を向けた。そして、叫ぶ。
「あああーーーーっ! アメリア・ジュネーラルだな!?」
「・・・あのぅ、先ほどそちらの方にも申し上げましたけど・・・名前を教えていただけますか?」
そう問いかけると、はっとした様子で男性の方が名乗り始めた。
「失礼した。僕は、ダルク・マネラルだ。マネラル子爵家は知っているか?」
「・・・はい。アメリア・ジュネーラルです。ジュネーラル伯爵家の三女です」
「あっ、身分的には貴女の方が上でしたね。失礼しました。こら、ゼリア! お前も名乗れ!」
ダルクに促され、ゼリアは渋々と言ったようにその赤い唇を開いた。
「ゼリア・マネラルですわ」
簡素すぎる名乗りにツッコミを入れそうになったが、気合いで我慢する。ここでわたしが怒っても、話は進まない。
ゼリアの後を引き取るように、ダルクが話し始めた。
「見ての通り、僕とゼリアは双子です。今日は、貴女さまをお探ししておりました。何しろ、国王陛下がお探しと言うことですからね。大魔術師様である、フェックラー卿はご自身の住まいを隠していらっしゃいますから、探すのにも苦労致しましたよ〜。貴族である以上は、今頃血眼になって探していますよ、きっと」
「は!? あの、失礼ですけど、わたし・・・わたくしをですか?」
「ええ、そうですね。父であるマネラル子爵から命じられ、ゼリアと僕もお探ししていたんですが・・・。いやぁ、見つかって良かったです。さ、馬車にお乗りください。お早く、フェックラー卿から離れましょう」
ダルクがさあさ、と手を伸ばしてくるが、わたしは身をよじってそれを避ける。
その前に言われた言葉が衝撃的すぎて、脳が真っ白だったために、本能が反応したんだろう。
(・・・師匠から、離れる?)
初めて言葉を聞いた赤子のように、言葉が理解できない。これほどに、自分の頭が回転しないのは初めてだった。
「————どう、いうこと、ですか」
「どういうこと? ああ、混乱されているのですよね。恐らく、洗脳の類いの魔法をかけられたのでしょうね。お可哀相に・・・。ご安心ください、ダルクとゼリアがお助け申し上げますからね」
「どういうことですか!!」
自分でも出したことが無いほどの大声が出た。
ダルクとゼリアの動きが止まる。
「どういうことですか、ちゃんと説明してください!」
ぐっと彼らを睨むと、双子は揃って目を丸くしていた。
「・・・陛下が、アメリア嬢はフェックラー卿に利用されており、不当な扱いを受けていると仰っていました。そのため、貴族たちは次期大魔術師候補である、アメリア嬢をお助けするために全力で動いているのです。もちろん、動いていない家もありますが」
後半は、ほとんど聞こえなかった。というよりも、脳が聞き取りを拒否していた。
(わたしが、利用されていて、不当な扱いを受けている・・・?)
まだ何やら喋っているダルクを無視して、ばっと顔をあげる。
「ふざけないで。 師匠はわたしを利用したりなんかしていません。 そのような戯言を仰るのなら、今すぐ帰って下さい。不法侵入をするなんて信じられません、出て行って!」
明けましておめでとうございます。
改めて、葵生です。
2025年はお世話になりました、新年もよろしくお願い致します。
活動報告にて、またご挨拶させていただきます。




