沈んだ声
二日遅れのメリークリスマス!
王太子との婚約にこだわっている国王の理由が知れただけでも、わたしの心はだいぶ穏やかなものになっていた。
けれど。
(もう一つの気がかりはどんどん、近づいてきている————)
書庫室で本を選びながら、わたしはため息をついた。流石に自分が死んでしまうかも知れない、ということに関しては平常心ではいられなかった。
書庫室で有力な手がかりが得られないまま、十六の年が半年は過ぎた。
「時が経つのが早すぎる・・・」
ポツリ、呟く。
空気にとけていったそれは、自分自身の焦りを示しているようで、ますます頑張らなきゃと気合いを入れ直す。すると、微かな音を立てて、書庫室の扉が開いた。
後ろを振り返ると、いつもの表情をした師匠が近づいてきている。
「よっ、頑張ってるみたいだな」
「師匠」
「疲れたろ、一回休め。根を詰めすぎるのもよくねえからな」
いつも通り、師匠が手を挙げてわたしの頭まで持ってこようとするけれど、その途中で彼は手を下ろした。
(え・・・)
何かを躊躇うような感じだった。少し、ショックを受ける。
(わたし、何かしちゃった?)
「・・・リビングで待ってるから、片付けてからこい」
けれど、師匠の声はいつも通りで。
はい、と返事をしたはいいものの、自分の声は明らかに沈んでいることが分かった。
♢♢♢
「最近、やけに熱心になって勉強してるよな。根詰め過ぎじゃ無いか? 大丈夫か」
師匠がいれてくれたホットレモンティーを飲みながら、わたしはにへらっと笑った。
「平気です! ちょっと調べたいことがあるだけなので。・・・それより、師匠は何か別の情報とか掴めたんですか?」
話題をそらしたくて、何とかひねったものだが、案外自分が気にしていたことが口をついて出た。
穏やかな表情から一転、師匠は苦々しい表情になった。
「まあ、相手は一国の王だからな・・・。情報は細切れにしか掴めてねえ。すまない」
「いえ! 気にしないでください。こんな事を頼んでしまってすみません」
「気にすんな。それより、目の下クマできてんぞ。疲れてるだろ、少し寝てろ」
「えっ、でも・・・。魔術の訓練もあるし・・・」
わたしの言葉に、師匠は首を振って拒否を示した。
「流石に今日は休むことが優先だ。前から言ってるだろ。魔術は精神の乱れが一つでもあると、崩れやすくなり、失敗しやすくなる。お前は疲れてるから、休んだ方が良い。ベッドいくか? それとも、ソファで寝るか?」
師匠の言葉はすうっ、と自分の中に染み渡るように入ってきて、すぐに納得できた。
「じゃあ、ソファで寝ます」
「おう。俺はちょっと、自室に行ってる。一定時間経ったら、また起こしにきてやるから」
「ありがとうござい・・・ま・・・」
お礼を言いながら、わたしの意識はもう闇の中だった。
(師匠はいつも、わたしに正しい道を与えてくれる)
その安心感はほっとできるものだった。無意識に笑みをつくりながら、わたしは眠りに落ちた。
今日はもう一話、ルイス視点を投稿しまーす!
いつも待っていてくださる皆さま、ありがとうございますっ!




