第1話
あなたは絶対に会えない人に、また会いたいですか?
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目の前は真っ暗な黒
(なんで、なんで、なんでこんなことに・・・)
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目が慣れてきたのか段々とうっすらと視界が開けてきた
視線の先に丸い物体のようなものが無数にあるのが見える
(これで願いが叶う…)
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とある村の上空からの視点
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その村の中にある店の前
2人の人物が近づく
黒色でところどころハネているロングヘアの細身で小柄な少女が俯きながら
「ア、アリスです…。よ、よろしくお願いします…」
と、恐る恐るか細い声で言った後、深くお辞儀した
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赤髪の小柄な少女がモジモジしながら
「ゼ、ゼストですー…。こちらこそよろしくです…」
と、ボソボソと言った後、深々とお辞儀した
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ゼストがアリスの引きずっているものを指差し
「ねぇ…それって…」
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アリスは自信なさげな声で
「…えっ?この引きずってるもの…ですか…?」
左手で引きずってる物を右手で指差した
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ゼストはその指差したものを見ながら
「うん!それってもしかして…」
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アリスの表情が暗い顔から一転、明るくなりクリクリの目を更に見開き、目を輝かせ、ローテンションから一気にハイテンション気味になった
「気になります?!見せてあげます!」
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ズズズッ…
アリスはその引きずってるものをゼストの前に嬉しそうに引きずり出し、片手で軽々と持ち上げ構えながら
「いいでしょ?!この大剣!!」
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刃こぼれしている箇所や所々欠損している、使い込まれた鞘に収まってない抜き身の大剣
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その大剣をマジマジと見てるゼストが
「かっちょいいー!!身の丈にあってない感じが、かっこよすぎ!」
と伏し目がちだった目を見開き目を輝かせて言った
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アリスは満面の笑みで
「分かりますか!この巨大な感じがいいですよねー!」
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地面に置かれた大剣を2人で見ている
興奮気味にアリスが
「この重そうな感じが良いよねー!」
それを聞いたゼストも興奮気味に
「うんうん!なんか一刀両断って感じ!」
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大剣を色んな角度から見たり触ったり、あーだこーだやってる2人の周りに人が集まってきた
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集まってきた人の1人が
「なんだ?どした?お嬢ちゃん達、落とし物か?」
と2人に声をかける
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それを聞いた2人が人が集まっていることにやっと気づいた様子
焦りながらアリスが不安そうに
「い、いえ、落とし物ではなく、わ、わたしのです…」
(全然気づかなかったー!)
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村人達がにやにやしながら
「いやいや、嬢ちゃんじゃ持てないでしょ!ははは」
「落とし物だから俺が持っていってあげるよー!」
等揶揄われているような声が混じる
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集まっている村人の外側から声がしてきた
「おーい、ここにいたのかー」
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集まっている村人の外側から金色の髪の男性がアリス達に声をかける
「だめでしょー勝手にどっかいっちゃー」
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それを聞いた村人達はやれやれという感じで
「なんだ、ただの迷子か」
「親いたのか、よかったな」
等の声と共に解散していった
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アリスとゼストは顔を見合わせてる
アリスは不思議そうな顔をしてゼストに
「誰?」
(誰か迷子って言ってなかった?子供じゃないもん)
ゼストも不思議そうな顔をしてアリスに
「さぁ?ってか、誰かあたし達の事迷子っていってたな?子供じゃないし」
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金色の髪のやや猫背の男性がため息まじりに
「俺なんか、親だと思われてたぜ…。そんなオッサンに見えんのかよ…ったく…やんなるぜ…」
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金色の髪の男性が2人に近づき、泣きそうな表情をしている自分の顔を指差し
「なあ、お前達、俺ってそんなにオッサンに見えるか?」
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2人は同時に首を横に振り焦りながら
アリスは
「そ、そんな事ないですよー!」
ゼストは
「イ、イケおじに将来なりそーな感じでいい感じのお兄様って感じですー!よ、よっ!イケメン!」
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金色の男性は右手を2人に突き出し手を開き、ため息まじりに
「うんうん…オーケーオーケー…あ、ありがと…。うん!もう大丈夫!」
と自虐的に受け止め、無理にでも前向きであろうとしているように見える
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金色の男性は2人のそば、より近い距離まで詰めより、真顔で
「お前ら、魔法使いだろ?」
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2人は同じタイミングで
「はい。そうです。」
と何を当たり前のことを?という表情をしてる
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金髪の男は少しテンション上がった様子で
「お!マジで?テキトーに言ったんだけどラッキー!俺はグレイブ!てか、なんで魔法使いなのに村人みたいな格好してんだ?」
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ゼストは目線を上げながら
「んー、暑いから」
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アリスも目線を上げ
「あと…動きにくいし」
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グレイブは呆気にとられた表情で
「…ははっ!そんだけか!」
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グレイブは思い出したかのように
「そーそー、俺もその大剣見たかったんだよねー!」
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アリスの表情が晴れてテンション上がり
「お、お兄様もこの大剣に興味あるんですね!」
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グレイブが
「おうよ!アイツらが邪魔で全然見えなかったから解散させたんだ!」
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アリスが
「そ、そんなに見たかったんですね!」
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ゼストが
「この大剣かっこいいもんなー!」
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グレイブ何かを決意した表情で
「よし!俺も嬢ちゃん達についてったる!君達だけじゃ危ないからね」
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上空から民家を見下ろしている
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その民家の室内
ベッドに横たわっている人物ともう1人の人物はその横たわっている人物の手を両手で握り涙している
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木々が生い茂る森
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グレイブは弱々しい声で
「おいおい…。マジこんなとこまだ歩くんかい…休みましょーぜー…お兄様ちょっと疲れちゃったぜ…」
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ゼストは呆れ顔で
「あの人なんでついてきたんだ…?」
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一軒家のドアをノックする
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ドアが開き女性がでてきた
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グレイブは満面の笑顔と愛想の良い口調で
「どーもー魔法解除もできる魔法の何でも屋さんでーす!」
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一軒家の玄関
スラっとしたスタイルでロングヘアのタレ目の女性はお手本の様なお辞儀をした。
その立ち振る舞いからは、落ち着き払った雰囲気を醸し出していた。
したっ足らずな声で
「初めまして。エリカと申します。どうぞ、よろしくお願いしましゅ…」
そう言うと顔を赤らめ再度深すぎる角度でお辞儀した
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グレイブは何事もなかったかのように
「どもー!グレイブって言います」
(この人今完全に噛んだな。顔赤くしてまだお辞儀してるし。恥ずかしかったんだな)
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顔お上げたエリカは何事もなかったかのように
「グレイブ殿の後ろに隠れてモジモジしているお二人はグレイブ殿のお子さんですか?」
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グレイブはまたかという表情で
「あははー!よく言われますが全く全然違います!」
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グレイブは恥ずかしがってる子供を諭すように2人の背中を押し
「ほら、ご挨拶しなさい」
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部屋の一室でテーブルを囲んで全員座っている
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エリカは真剣な顔つきで
「そーいう事なんですね…」
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グレイブはクッキーを食べながら
「そーなんす…。」
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アリスとゼストはクッキーを口いっぱいに頬張り頷いている
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エリカもクッキー頬張りながら
「じゃいちゃいのこちょはわきゃりましぃた」
と食べながら喋っている
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グレイブも食べながら
「それにしても…このクッキー美味すぎ!!」
それに追従するようにアリスとゼストも首を縦に振っている
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それを聞いたエリカが真剣な面持ちで
「実は…このクッキー、私が作ったんです!
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アリスが頬張ってるクッキーをゴックンと飲み込み、お茶を飲み干した後テーブルに両肘をつき、手を組み神妙な表情で一言
「…合格。ぜひパーティの一員になってください」
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エリカは嬉しさで両手を振り上げ
「やったぁー!!」
と両手を振り上げた
お茶を左手に持っていたので完全にぶち撒けてしまった
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エリカは慌てて立ち上がった為に椅子を後ろに勢いよく倒してしまう
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エリカはショボーンと立ち尽くし涙ぐみ覇気のない声で
「…こんな私でも良いですか…?」
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アリスは親指を立てて
「もち合格…。こんなおいしいクッキー他では食べれないので是非。そしてまたすぐ作ってください。志望動機聞いてもいいですか?」
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エリカの口角が上がるがなんの感情も込められていない声で
「消したいからです」