美味しいご飯を召し上がれ
前回のあらすじ
お風呂に入った!以上!
お風呂から上がった私はメイドさんに連れられて食堂らしきところに来た。
私が起きた時はまだ朝だったけど、今はもうお昼だそうだ。道理でお腹すいてるわけだね。
メイドさんは、料理長に昼食を貰ってきます、と言って厨房の方に歩いていった。
その間に辺りを見渡す。
ふむふむ、机は木⋯⋯だけど、叩くとコンコンではなくコツコツっていう。これ、もしかして木じゃないのかな。それで、机の数は三個か。
確か、ここはしよう人しか使わないって言ってたから、意外と使用人の数って少ないのかな。
そういえば、ここの壁とか床とか、全部木だったな。この木、実は衝撃とかに強いのかも。
そのとき、美味しそうな香りがふわっと漂ってきた。
厨房の扉が開き、手にお皿を持ったメイドさんが出てくる。
どうぞ、お召し上がりください、という言葉とともに野菜のスープを手渡された。
料理長によると、私はろくにご飯を食べさせて貰えなかったせいでいきなりお肉とかの重たいものを食べたら胃が驚くから野菜にした、らしい。
お肉食べたかったけど、ダメって言うならダメなんだろう。
少しとろみがあるスープをすくい、少し冷ましてから口に運ぶ。
野菜をじっくりコトコトと煮たスープ、なのかな。旨みが凝縮されてて美味しい。お肉とは違って野菜の甘みもあるのがいいね。
夢中になってたら、あっという間に食べ終わってしまった。残念。またいつか食べれるかな。
「ぉいし、かた、です⋯⋯ありが、とぅ」
と言ってお皿を返すと、料理長のクマみたいな巨体がのそりと動き、お皿を受け取ったのとは違う手で頭を撫でてきた。
私に出来る精一杯でニコッと微笑むと、料理長さんもニカッと笑った。
ちょっと怖いけど、意外といい人かもしれない。
いや、いい人だ。こんなに美味しいスープを作ってくれたんだから、いい人に決まってる。
心の中でうんうんと頷いていると、料理長さんがじっと見つめてきた。
「⋯⋯?」
「⋯⋯いや、髪が綺麗だと思ってな」
下ろしままの髪を一房つかみ、持ち上げてみる。お風呂に入る前に比べてツヤツヤさらさらしている。
確かに、お風呂に入ったあとのこの髪は綺麗だけど。そんな見つめることかなあ?
とりあえず、仕返しに料理長さんのこともじっと見てみる。
あれ、料理長さんの目、フィリシムさんと同じで爬虫類っぽい感じの目だ。
種族が同じなのかな。
この世界にはいくつかの種族が存在する、とか?
前世の記憶的には人族、魔族、獣人族、エルフ族、竜人族とか有名だよね。
「では、食べ終わったことですし、そろそろ部屋に戻りましょうか」
メイドさんが一声かけてくる。
まあ種族なんてどうでもいいか、と思い直してはい、と答える。
そのまま抱っこされて、目が覚めた時の部屋に連れていかれた。
見ると、ぐちゃっとなっていた布団が替えられて綺麗になっている。
そこにぽふっと下ろされて、そこで少し休んでてくださいと言われる。
続けて、
「もうすくフィリシム様が帰ってきますから。あなたが保護される前のこととこれからのことを話してくださるそうです」
と言われた。
ベッド脇のテーブルに水差しが置かれ、ついでにお菓子も置かれる。
どっから出したんだろう。さっき料理長さんから貰ったのかな?
「ほら、お口を開けてください」
素直に口を開けると、お菓子──クッキーの形をしたりんごが放り込まれた。
「むぐ!?」
なにこれ、りんごの味だよ!果汁まで出てきてるし。でも形はすっごくクッキーだ!
夢中でもぐもぐしていると、クスッと笑われた。見ればメイドさんが少し吹き出したみたい。
じとーと見つめると、メイドさんはすぐに表情をなおした。
「それはですね、クッキーリンゴというものです。普通、りんごといえばあの赤くて丸いあれですが、このクッキーリンゴはクッキーの見た目をしたりんごなのです。今でもなぜそうなったのか研究が進められていますが、理由がまだ解明できてないんだとか」
異世界は驚きがいっぱいなのかもしれない。
そう思いつつ、私はクッキーリンゴを頬張った。
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目指せ、毎日更新!してたら読み返す時間が無くなった。ある程度余裕が出来たら変なところ直します。