キノコ狩り5
「うむ、今年はさすがに無理じゃが、来年は山盛りのキノコを送ってやろう。いや、ここまでの魔力があれば儂が注がなくても結界は持つじゃろうな。というわけで、来年はお主らの──否、モクシアの家に行くとするかのぅ」
お主ら、ではなくモクシアと言ってくれたことに驚いて、私は目を丸くさせた。私を1人の人間として認めてくれた⋯⋯ってことだよね。来年の秋になる前に私は独り立ちしちゃうけど⋯⋯キノコ貰ったらみんなで食べたいな。
「そろそろ昼飯が出来る頃合いではないかの?儂は食べるという行為ができぬ故、気にせず行くといい」
そう言ってカエデさんは世界樹もどきにふわっと腰掛けた。
たしかにそろそろ出来そうだね。早く戻らなきゃ。
最後に世界樹もどきの方を振り向くと、カエデさんは跡形もなく居なくなっていた。それでもどこからか見ているような気がしたので、軽く手を振ってから、私はみんなの方へ走っていった。
「おかえりなさい、モク。そろそろご飯ができますよ。世界樹もどきはどうでしたか?」
そう言う師匠に、私は笑って答えた。
「新しい友達ができました!来年から毎年キノコを送ってくれるらしいです」
「へえ、あの子もそんなことするんだねぇ。よっぽどモクのことが気に入ったみたい。何かしたの?」
横からひょこっと飛び出してきたロイは、そんなことを聞いてきた。どこから取り出したのか、黒色のエプロンをつけている。
「ええと、ここの結界を維持している水晶の玉があってね、それの魔力を補充したんだ。昔ここに住んで魔力を補充してくれてた人たちが居なくなっちゃって、困ってたんだって⋯⋯というか、ロイはカエデさんのこと知ってるの?」
「うん。昔あの子とよく遊んだんだよね。ここの水でエリクサーを作ってお店屋さんごっことか」
わ、わあ⋯⋯さすが精霊。やることが豪快だ。
「モクちゃん、ご飯出来たわよ〜。並べてくれないかしらぁ」
と、エリーが石の影から顔を出して叫んでくる。その声に驚いた小鳥たちが慌てて飛んでいく音が後ろから聞こえてきた。
エリーの元に駆け寄ると、何故かパンを焼いていた。
「ほらぁ、私の手作りパンよ。やっぱりフィーちゃんって便利よねぇ。発酵を促進させる魔法なんてのが使えるんだもの。私も魔法使えたら良かったわぁ」
やっぱり魔法の適正はある方がいいのかな、と一瞬思ったけれど、エリーの筋骨隆々な姿は魔法が使えなかったからこそのものなのかもしれないからこのままでいて欲しいな。
「エリーがそのかっこいい肉体手に入れたのって魔法がなかったから⋯⋯だよね?私、エリーのその体気に入ってるんだよ」
そう言うと、エリーは私にパンが入った皿を手渡しながら体をくねくねと捩らせた。
「嬉しいこと言ってくれるわねぇ。別に本気で魔法が使いたいとは思っていないから安心してぇ。私、元々パン屋になりたかったのよぉ。でも、パンを持ち上げるのに力が足りなくって鍛えたのが始まり。だから魔法とは関係ないのよぉ」
そんなことがあったんだ⋯⋯だからパンが作れたんだね。なんかエリーの話は掘れば掘るほど面白いのが出てきそう。今度時間が空いた時に聞いてみるかな。
「ほら、パン持って行ってちょうだい。私もこれ持っていくから」
そう言ってエリーが持ち上げた腕の先には、何故か小さく見えるけど明らかに私のより大きいパンがズラリと並んでいた。いや、こんな食べられないよ?
明日⋯⋯明日になったら一旦リアルが落ち着く⋯⋯
ここまでお読みいただきありがとうございます
面白かったと思ったなら☆☆☆☆☆を、つまらなかったと思ったなら☆を。
思ったままの評価で構いません。少しの評価でも僕の励みになるのでよろしくお願いします。




