第87話 第九層 ボス戦
「サトちゃん、この鎌って保管庫に入れてよいかな?」
『どうしたの?』
「イヤ、サトちゃんと武器が被っちゃうし、自分には二丁拳銃があるから」
『あー、確かに……でも、ここではそのまま使ってください……』
滑走りながら、会話をしている少女達の上に影が差す。それは上から何かを落としていき、それが氷に触れた瞬間大爆発を起こす。
狙われた少女達はというと……。
「防壁が無ければ危なかった!」
『あれは、この九層のボス、氷鬼蜻蜓です』
氷鬼蜻蜓、日本名だと氷オニヤンマ、略略して氷ヤンマ。
自然界でのオニヤンマの躰は、黒と黄色で大きく獰猛な感じがしている。
欧米人には、どう猛さと黄色が金色に見えるらしくゴールデンリングドラゴンフライという名前を勝手に着けた様だ。
この、氷鬼蜻蜓は特徴としては高速移動による上空からの爆撃である。
爆撃に使うのは、愛国竹から取れる地雷竹。
実は、氷鬼蜻蜓は相利共生関係にある。
愛国竹は氷オニヤンマに他のモンスターから自分の身を守って貰っているのだ。
あれだけ、自分に向かって来るモンスターを攻撃しているのに?っと思う人も居るかもしれないが、愛国竹は自分の領域に入ったモンスターを攻撃出来ないという弱点がある。
そうなったときに、氷ヤンマに特殊な信号を送り、自分の領域に入ったモンスターを排除して貰っているのだ。
そして、氷ヤンマは自分の子供達を愛国竹が生み出す熱により生まれた小さな池で育てている。
で、今、氷ヤンマは激怒している。
何故か?シオちゃんが地雷竹を使って愛国竹の群生地を破壊したために、自分の子供達も爆死したからである。
「どうして狙われるのか分からない」
『愛国竹の群生地に氷ヤンマの巣があったからですわ』
「そんなの聞いてないよ!」
『聞かれなかったから、言わなかったですわ』
〝サトちゃん、実はきゅ〇べえ説〝
〝とばっちりのシオちゃん可哀そうww〝
〝シオちゃんには「あたしって、ほんとバカ」って言いながら闇落ちして欲しいw〝
勿論、ここの会話は2人とも昨日の宿で夜に決めた台本通り。だから、2人の仲が悪くなるという事は無いので安心して欲しい。
全て、この会話がバズって切り取られ、SNSで拡散して貰うための仕込み。
((計画通り))
脳内で互いに声を上げる。
シオちゃんの新人類レベルが上がり、2人は脳内で会話が出来るようになった。
「ところで、どうやって氷ヤンマを倒すの?」
『以外に簡単なのですよ、再び氷ヤンマが飛んできて来たら防壁を氷ヤンマのすぐ近くに展開してください』
氷ヤンマの一番の問題は、躰が巨大過ぎるのと早すぎて、小回りが利かないこと。
全長が25mプールと同じくらいあり、羽は更に倍の50mとなっている。
現在の速さは、新幹線と同じ300kmぐらい出ている。
再び、氷ヤンマが2人の元に戻って来て、地雷竹を投下した時だった。突如として、自分の直下にて大爆発が起こる。
何が起きたか?
氷ヤンマが地雷竹を投下した瞬間に氷ヤンマの直下で防壁が張られ、地雷竹が大爆発したのだ。
飛ぶために限界まで薄く進化した氷ヤンマの翅が爆風で吹き飛び、揚力を失った氷ヤンマは高度を落とし、最後は氷と激突する。
「まだ、しぶくとく生きている。さすがボスモンスター」
翅を失い全身から血を流しながらも氷の上を進み続ける、氷ヤンマ。それが、戦国時代では撤退しない縁起物として兜に使われていた。
「でも、これで終わり」
氷蟷螂の鎌で氷ヤンマの首が刎ね飛ばされる。氷ヤンマが光の粒になり、大型の氷の魔石と奇妙な形の石が残る。
「凍てつく心:1/2が手に入ったよ」
半分だったハート型の石が光るとハート型のペンダントになる。
「これは何に使うの?」
『凍てつく心は次の層で使うことになるますわ』
「そうなんだ!どう使うか、楽しみだね!」
保管庫にシオちゃんは凍てつく心をしまう。
「これで、第九層のボスは終わりかな?」
『そうですね、今日は此処までですね……』
【ハーイ、せっかくなのでEXステージ用意したよ!】
間の抜けた声がした。
そうダンジョンさんが、介入して来たのだ。




