第86話 第九層攻略③
「サトちゃん、沢山の氷団子虫が居るよ」
『あ、ここは氷団子虫のコロニーですね」
少女達が滑走っている傍には多数の氷団子虫が動いている。
団子の様にはなっておらず、左右についた多数の脚で歩いている。
『氷団子虫は獲物を狙う時に団子になります。この虫は、草食性で愛国竹や地雷竹が好物です』
「ってことは氷団子虫は無視しても大丈夫な虫なの?」
『うーん、氷団子虫はある虫を呼ぶので大丈夫で無いですわ』
グゥワァアアアアっと氷団子虫の絶叫が氷上に響く。氷団子虫は見えない何かに真っ二つにされる。
そこにはキラキラと光る何かがおり姿が見えなかったが、氷団子虫の返り血で姿が露わになる。
『氷団子虫の天敵、氷蟷螂』
氷の様に蒼い躰、両手に鎌、細い顔に赤い瞳が不気味に光る。
氷蟷螂は第九層に置ける序列第二位のモンスター。躰を光の反射により不可視にすることで、奇襲攻撃が得意。
また、自分より弱い存在を意味なく殺すシリアルキラーモンスター。
ちなみに、氷蟷螂の主食は愛国竹で、食後に氷団子虫を殺すことは日課。
あっという間に氷団子虫達は氷蟷螂により細切れにされていく。
氷蟷螂はこれだけで満足せず、2人の人間の少女に目を着ける。
(ああ、なんて超芳醇な甘い匂いをしているんだ、食べたい)
主食は愛国竹だけど、たまには女の子も食べたい。だって、氷蟷螂だものbyダンジョンさん。
っとポエムが空耳と思いきや少女達に襲い掛かる。
氷蟷螂は、何時もの様に不可視で姿を消す。そして、鎌の射程に入ると高速で両手の鎌を振り回す。
いつもの様に、不可視を解き獲物の命を刈り取ったっとニヤリと醜い顔を見せる。
低レベルの冒険者なら、一瞬で命を狩られる一撃。この一撃で、氷蟷螂は今まで多くの冒険者の命を刈ってきた。
「氷蟷螂の攻撃ってこんなんで止められるんだ」
『はい、コンニャク1枚で止められるのです』
鎌が刺さっているのは、シオちゃんが手にしているのは板コンニャク。
〝第四層のDキャットと一緒なのかのよ!〝
〝鋼すらバターの様に切る氷蟷螂の鎌が……〝
〝何でも切れるが、コンニャクは切れないという誓約と制約やなぁ……〝
人間の少女に自慢の鎌を抑えられた氷蟷螂は一度距離を取るために背後にジャンプする。
が、この瞬間、途轍もない激痛が氷蟷螂を襲い氷蟷螂が悲鳴を上げる。
氷蟷螂は痛みの先を見ると、自慢の両手の鎌が無くなっているのだ。
鎌は人間の少女が持っている何かに刺さったままだ。
『はい、氷蟷螂は関節が脆いです。そして、コンニャクに鎌が刺さった事に驚いていきなり飛び上がって距離を取る癖があるので、自分の鎌を落とします』
「わぁ、なんだっけ?テレビで見るカニの腕みたいに取れている」
『シオちゃん、氷蟷螂の鎌で、そのまま氷蟷螂を倒しちゃえ!』
「分かった!」
板こんにゃくに刺さる氷蟷螂の鎌を取り、シオちゃんは痛みで叫び、無防備状態の氷蟷螂の首を切り落とす。
氷蟷螂が消えると中型の氷の魔石とスキル石をドロップする。
「こんどのスキルは【鎌術】だって」
『そのスキルと氷蟷螂の鎌を使えば、氷団子虫は蹴散らすことができますね』
氷団子虫を倒す方法は簡単。まず、氷団子虫を狙ってやってきた氷蟷螂の鎌を板こんにゃくで奪い倒す。
そして、【鎌術】を覚えれば良いのだ。
『では、サトちゃんやってみましょう』
「やってみるね!」
もぞもぞと氷の上を歩いている氷団子虫まで滑走し、氷蟷螂の鎌で一撃を与えると氷団子虫は、細切れになり絶命する。
『素晴らしい一撃でしたわ』
「あんなに硬そうな、氷団子虫がバターみたいだった」
『さて、次はボス戦ですわ、その鎌も使えるので出しといてね』
「そうする……」
少女達は次のボスが居そうな方へ滑走っていく。
次回、九層ボス戦