第77話 第八層攻略①
シオちゃんが、八層へ続く階段を下りて行き扉を開く。
「わぁ、綺麗な風景、なんだっけこれ?山形のニュースで出るやつ」
『樹氷、ダンジョンでは、Dスノーモンスターって言われています』
「ってことは、これ全部モンスター?」
雪原全体に多数の樹氷の群がウネウネと生き物の様に動く。まるで、山全体が一つの大きな生き物のように見える。
「これを全部倒していくの大変すぎる」
『唯一の救いは、彼等には攻撃力と防御力が無い事です』
「じゃ、どうやって冒険者を倒すの?」
『冒険者の行く道に先回りにして、通せんぼして迷わせ方向感覚を失わせ凍死させる、それがこのDスノーモンスターの特徴です』
読者諸君は、遊園地や動物園の迷路に行った事はあるだろうか?迷路の攻略方法は、右手で壁を触っていれば出口に行けると昔から言われている。
もし、右手の壁が永久に出口に向かわなかったら?永久に迷路から出れなくなる。
これをやるのが、Dスノーモンスター。
『簡単な攻略方法は、除雪車を使う事です。これもDマーケットで買えます』
闇の空間から、サトちゃんは除雪車を取り出し乗り込む。そして、一直線にDスノーモンスターの集団に除雪車で向かっていく。
ベキベキメシメシと除雪機の中で、木が折れる音もするが、構わず進むと除雪された空間がぽっかりと穴が開く。
サトちゃんは除雪車を回転させ、降りるとシオちゃんの所に戻って来た。
『除雪した所は一日くらいはずっと空いたままになります。また、ここのステージに限っては除雪車で倒しても経験値やDコインが少し生まれます』
「微妙に優しい設定だね」
『でも、私は経験値やDコインが満足できないので、何時もこっちを使います』
指を指した方向には、カチカチに凍った河がある。しかも、丁寧な事に河の前にベンチが置かれている。
まるで、此処でスケート靴に履き替えろと言っているようである。
「まさか、前の1stライブ後のスケートの練習って」
『そうだよ!この河の上を滑っていくよ!』
2人がスケート靴に履き替え、河の上を滑走する。暫く、すると氷の上を滑ってくる何かが姿を見せる。
それは、みんなが大好き南極にいるあの可愛らしい動物の姿をしている。
「あ、ペンギンだ!こっちに向かっ…ッ!」
言葉を切り、イナバウアーしてペンギンを避ける。黒光りした何かが、シオちゃんの前髪を数本ハラリと切り落とす。
避けたペンギンの両翼の下にはジェットエンジンが付き、両翼には黒光りする刃物が付いている。
『あ、このペンギンはジェットペンギンです。両翼の下にジェットエンジンがついていて、両翼が刃物になっています』
「それを先に言ってよ!危なかったよ!ジェットエンジンって事は飛行機と同じだよね?風の大聖霊さん、何か良い魔法ありますでしょうか?」
「それなら、この魔法を使うがよい、ダウンバースト」
ダウンバースト、航空機事故番組が大好きなメーデー民なら教養レベルの現象。
強い下降気流が地表に衝突し、建物や電柱、樹木を倒壊させるなどの被害を与える。
航空機も多数が被害にあっており、代表例はパン〇メリカン航空759便墜落事故等がある。
ダウンバーストを喰らったジェットペンギンは氷の大地と接吻をし爆散、氷の魔石を残す。
「ワ~凄い技だね」
『一般の人達は、ここではこれを使ってね!』
もう一体向かってきたジェットペンギンにサトちゃんは、闇の空間からDスノウマンの石炭を取り出し投げる。
エンジンに石炭が吸い込まれるとエンジンから火が噴き、ジェットペンギンは墜落し氷の魔石をドロップする。
飛行機も渡り鳥が、エンジンに入ったりすると火を噴き使えなくなる。しかし、もう片方が使える限り、堕ちる事はまずない。
だが、ジェットペンギンは片翼が使えなくなると墜落してしまう悲しい生き物。
『皆さん、ジェットペンギンは直ぐに堕ちますが、普段乗る飛行機は安全な乗り物なので大丈夫ですよ!』
「飛行機は、ダウンバーストってやつが離陸や着陸に起きなければ安心だよ!」
最大限の航空業界へのフォロワーを入れながら少女達は攻略を続ける。
次回、第八層攻略②




