第69話 雑談配信⑤ in江戸川スケートリンク
『六甲さん危ないのでリンクから上がって下さい』
六甲がリンクから上がるとリンクの上が光る。リンクの上に現れたのは、スケート靴を履いたゾンビ達だ。
「さて、やってみるか!?」
シオちゃんが銃剣のレクイエムとメメントモリを構え滑り始める。ゾンビ達もシオちゃんの存在に気が付いたのか、一気に襲って来る。
襲って来るゾンビを回転しながら避け、切り倒していく。一体のゾンビが上半身を水平に倒し、上半身と水平になるように片足を水平にする。
「あれは、キャメルスピン、ゾンビがするだと……」
六甲さんの驚愕にゾンビは顔をニヤリと歪ませ、スケート靴をシオちゃんに向けて切りつけて来る。
が、シオちゃんの銃剣の剣に止められ鍔迫り合いが起こり火花を散らす。
今日の対バンでは立体映像が透過していたので、多くの人達はこれも透過するのかと思っていた。しかし、スケート靴の刃と銃剣の鍔迫り合いに驚く。
『皆さん、この魔導システムは映像の透過は勿論出来ますが、質量がある映像とすることも出来るのです』
複数のゾンビ達がキャメルスピンをしながら、右足、左足、左手、右手で多彩な連携攻撃を行う。
上手く躱していたシオちゃんの白い左腕に初めて赤い線が入り、リンクを赤く染める。
「やってくれるじゃないか!?」
普通なら、恐怖し逃げるルートを探すがシオちゃんは全力で向かっていく。そして、ゾンビ達のキャメルスピンを躱しながら、一体、また一体と屠っていく。
旧人類にはゾンビ達のキャメルスピンが早すぎて高速で光る何かが回転している様にしか見えない。
だが、新人類は優れた動体視力によりゾンビの攻撃はスローモーションで刃物が迫って来るように見えるのだ。
『お見事ですね、次はDキャットですわ。シオちゃんが戦っている間に視聴者さんと雑談コーナーをしたいと思います。時間的に今日、最後の質問コーナーだと思いますの皆さん何か質問したい事があったらどうぞ!』
ゾンビ達が消え、今度は長靴ならぬスケート靴を履いた殺意増し増しのDキャットがシオちゃんに襲い掛かる。
〝サトちゃんもシオちゃんもフィギュアスケートの世界には興味ないの?〝
『ウーン、私たちはフィギュアスケートの世界で頂上を目指すよりも、ダンジョンの最下層を目指したいですね。何より銀盤という狭い檻は私たちには狭すぎますね』
〝そんなにダンジョンって良いの?〝
『そうですね、ダンジョンは自分の決断が自身の一度きりの命を左右するワクワク感がありますね。逆にフィギュアスケートは他者の採点で人生が左右され、他者に生殺与奪がありますよね?それは面白くないです。後、命がある限りスケートが出来るってある意味で温いスポーツだと思います』
〝今、サトちゃんはダンジョン何層まで行ったの?〝
『ふふ、聞きたいですか?確か110層まで行きました。この前、石碑を解読した時は深いダンジョンは500層まであるらしいです』
〝一体、サトちゃんもシオちゃんも一生懸命ダンジョンを攻略しているけど、一体何が2人をそこまで駆り立てるの?〝
『そうですね、自分の成長……進化ですかね?』
新人類は旧人類に比べて人類として5段階ほど進化している。だが、新人類は常に何かが彼ら駆り立てる、そうそれは闘争心だ。
闘争心から生まれる人間同士の戦争や争い、それが人類の悲惨な歴史を生んだ事に変わりはないが、同時に人類を進歩させてきたプラスの面もある。
そして、今、ダンジョンという人間同士で争わなくても進歩できるツールが生まれた。
これを使わずして、一体人類はどうやって成長できるのか?
だからこそ、新人類は自らの可能性を極限まで高める為にダンジョンの深みへ歩みを進めている。
「サトちゃん!全部倒したよ!」
声の主の足元には、Dキャット達の死屍累累。Dキャットの返り血を浴びながら、シオちゃんも所々に擦り傷を受けている。
〝ドン引き〝
〝Dキャットさんの殺猫現場はこちらですか?〝
〝やはり、シオちゃんはDキャットを殺す事が癖になっているやろww〝
『さて、時間になりました!!ではまた明日も宜しく!!』
サトちゃんとシオちゃん(血まみれ)は両手を振りながら配信を終える。
次回、掲示板回




