第61話 勝ち取った30分③
シオちゃんことレイは、熊本生まれの元お金持ち生まれのお嬢様だった。
なぜ、過去形か?
それはレイが、小学低学年の時に過剰魔力症という病気にかかったのが発端。
レイは元々、眉目秀麗なお嬢様で周りからは蝶や花よと可愛がられていた。ただ、過剰魔力症に掛かり体のあちこちが異形になる症状を発すると周りの大人や子供たちは【化物】としてレイを虐めに虐めた。
・学校に行けば、全員が無視をする
・商店街に行けば物を売って貰えない
・帰り道に知らない人達から殴られ蹴られ橋から突き落とされる
・レイがこっそり育てていた野良猫を電子レンジに入れて殺し、レイに喰わせる
・警察に訴えても、虐めた人間達の親が議員や警察の上層部の為に揉み消した
…という感じの事をしていた。
レイの母親も【化物】を生んだとして嫁ぎ先から追い出され、実家からも離縁され、その後に生まれたチビ達と3人肩を寄せあいながらボロアパートで生きていた。
何とか家族3人で生きて行けたのは、たまに姿を見せるオジサンや親切にしてくれて神社の人達がお金や食べ物を差し入れてくれたからだ。
3年後に過剰魔力症は収束し、見違えるようにレイは美人となり、大人達や子供たちは再び綺麗になったレイに擦り寄って来た。
しかし、レイは自分にやって来た事に対して謝罪もせず、悪いとも思っていない地元の人間達に愛想を尽かした。
当時小学生であったが、とある団体の援助を受け単身上京し炎上系の炎上円禍としてネットの世界で活躍することになった。
そんなレイの過去が「3 YEARS MONSTER」として曲になる。
(シオちゃん)
鏡の前 歪んだ手
ツギハギみたいなこの姿
「気持ち悪い」って誰かが言う
でも これが私の運命
(シオちゃん)
角が生えても 爪が伸びても
獣の目が夜に光っても
まだ終わっちゃいないんだ
3年後には輝くって 信じてる
(サトシオ混声)
痛みも嘲笑も飲み込んで
このカウントダウン走り抜けろ!
(サトシオ混声)
3 YEARS MONSTER! 今はまだ
3 YEARS MONSTER! 醜くても
3 YEARS MONSTER! 信じてる
この異形の先には光がある!
(シオちゃん)
街の視線 突き刺さる
「もう諦めろ」って言われても
笑わせんな 運命なら
ぶっ壊してみせるだけさ
(シオちゃん)
この傷も爪も 無駄じゃない
生きてる証を刻んでいく
夜の中 叫び続ける
美しさは 選ばれた者のもんじゃない
(サトシオ混声)
信じた者だけが手にできる
このカウントダウン乗り越えてけ!
(サトシオ混声)
3 YEARS MONSTER! 今はまだ
3 YEARS MONSTER! 醜くても
3 YEARS MONSTER! 叫べ!
この異形の先には光がある!
(シオちゃん)
「あと1年…あと半年…」
(シオちゃん)
「あと1日…変われる!」
(サトシオ混声)
3 YEARS MONSTER! ほら見ろ
3 YEARS MONSTER! 笑ってみせろ
3 YEARS MONSTER! もうすぐだ
この異形の先で私は生まれ変わる!
レイが涙と笑顔を見せながらギターで全力で歌う。ギターもレイの感情を乗せて謳う。
観客たちもレイの感情に乗せられて涙を流す。演奏が終わるころには、多くの観客が涙を流しながらレイの曲に聞き入っていた。
「これは、俺の悲しい過去を歌にしたぜ。過剰魔力症は3年で治ります、でも社会の人達は過剰魔力症の人達へ冷たい。確かに異形で有る事は、怖い事だと思います。だけど、怖がらないで!過剰魔力症は3年で治ります!どうか3年間、一緒に居てあげてください。声援も同情も要らない!欲しいのは、変わらない周りの態度です」
レイがこの様にお願いするには、理由がある。過剰魔力症の患者が命を絶つ理由の多くが、過剰魔力症に周りの理解が無く孤立からの人間不信になり自分の存在意義を失うことだからだ。
「さて、かなり、湿気っぽくなっちまったな!」
『次の曲は、そんな理不尽な世界への挑戦する歌です』
『「TAKE IT ALL」』
本日、四曲目、ソルシュガの歌が始まる。