第6話 生放送にて
「なるほど、ルミさんは幼馴染の為にダンジョンに潜ったのが始まりなんですね」
『はいそうです。今は亡き友にポーションを届ける為に必死でした』
あのにゃむこの配信で姿が暴露されてから、ルミの人気は爆発的に人気になった。
元から病弱系シリーズでトップの人気はあった。
が、例の日常系動画の理不尽に立ち向かう様から、新しいファンが激増した。
それと共に、厄介な事も増えたが……例えば。
「にゃはは、結局は友人を出汁にして小学生でダンジョンに入っただけ!」
「日本人って本当にお涙ちょうだいに弱い、弱すぎる!」
彼女の周囲の大人は顔を顰めるが赤いロングヘアのツインテール、エメラルドグリーンの瞳、見えそうで見えないスカートを履いている今話題の炎上系メスガキ配信者の少女は意に介していない。
そう、ルミの名前に便乗する炎上系、迷惑系の人間たち。
事務所も必死に対策をしているが、いたちごっごで後手に回ってる。
〝もっとやれ!いいぞ〝
〝炎上上等〝
〝ルミのメッキを剥がしてやれ〝
それを指示する一部の熱狂的なネットの視聴者たち。
テレビ局も昨今は若者のテレビ離れと言われる中で、ネット界隈のこういう需要も書き入れないと生き残れない為に、見て見ぬ振りをしている。
「書店では病弱シリーズだったり、ルミさんの写真集が急遽増版されましたね!」
『ええ、とても、ありがたいことです。皆さんも一冊手に取って頂ければ』
「それでは、中継で表参道の本屋さんからどうぞ」
表参道の多数の本屋の集まる区域でポップアップされ売られる本や等身大ルミのパネルが置かれた写真集置き場が映し出される。
夕方の帰宅時間だけあり、主婦やサラリーマン達が手に取りそれらを紹介していくアナウンサーやインタビューされ答える人々の声も流される。
「今までの写真集や出演料の利益は全て、難病の研究・開発を支援するルミナス財団に寄付されているそうですね」
『その通りです、私の友人の様な人たちを多く救いたいと思い、必要経費以外は全て、社長が私の為に設立してくださった財団に寄付をしています』
「どうせ、それも、税金回避のためなんでしょ!分かるわ、所詮はお金持ちにとっては、難病の研究も良く分からないアートと一緒で税金対策なんだってば!」
またもや、赤髪の少女がカラカラと笑うよういに言い飛ばす。
その時であった、ルミがすっと立ち周りも流石のルミが切れたのかと固唾をのむ。
『すみません、先ほどの本屋さんのシーンで赤信号のシーンを見せて下さい』
司会者は首を傾げて、ディレクターに目線を送りGoが出る。
中央の巨大なディスプレイに赤信号が写る。手前にはインタビューされている人たちの姿がある。
『背景を拡大して、明るくして再生して貰えますか?』
拡大される背景、そこには道路を歩く女性。横から来る黒いバンから手が伸びると女性がバンに引きづり込まれる。
そして、黒いバンは何事も無かったように走っていく。
『この通りは表参道から首都高速へ向かるルート、向きはこっちですわ』
ルミが窓ガラスの近くまで歩いて行きながら、魔力で目を強化する。
そこには、法定速度を無視する一台のバンがあった。
『すみません、ちょっと人助けに行ってきます。窓代は弁済します』
「え、ルミさんなにを、きゃ」
窓ガラスが黒い刃物が切られると一瞬で無くなり風が発生する。
そして、暗黒卿の仮面を取り出し、配信用のドローンを展開させ飛び降りた。
「は!ここ20階、はー!っつ飛んだ!」
白いゴスロリ服を着た暗黒卿が黒い羽根を出して空を飛んでいる。
あっという間に視聴率が上がっていく。
そして、ルミは黒いバンに向かっていくのだった。