第148話 3人目の大聖霊契約③
その異変は、全国の潮位計の異常から始まった。潮位結果が送られている気象庁の管理画面に続々とエラーが生じる。
「太平洋側の全域の潮位が異常に減少しています」
「そんな事ある訳ないだろ!海の映像はどうなっている!」
「ライブカメラの映像出ます!」
気象庁の職員が各地のライブカメラを展開する。ディスプレイに映るは、沿岸部から海が引いていく光景。
「これって、あの東日本大震災と同じ……」
「でも、地震なんて起きていないぞ!」
「全国に津波警報を通達!緊急事態だ!」
「た、大変です、ツ、ツ、ナミが……」
引いたと思った津波が今度は迫ってきている、それも10mなんてちゃちいもんじゃない……。富士山より高い4000m位の巨大な波が日本列島に迫ってきたのだ。
しかも、さっきまで、沖に居たはずなのにもう港の前まで来ている。
「スパコンの予測来ました、津波、沿岸部に接触まで10秒」
「カウント開始、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,到着!?」
沿岸部を飲み込むかと思ったらその津波は、空を飛んだ。意味が分からない、津波が空を飛んだのだ。
沿岸部に津波が到達した瞬間に、「アイキャンフライ」っという感じで飛んだのだ。
羽が無い人類も空を飛べる時代なのだ、津波も空を飛べるのだ。
納得しない読者も居るかもしれない。
これが、多様性の時代というやつである。
理解するな、感じろ!これが多様性だ!
「各地の津波が、空を飛んでいるとSNSで報告があります」
「一体どうなっているのだ!」
「列島全域の津波が東京を目指して飛んで行きます!」
列島各地から上京してきた津波は東京の上空を旋回し、一つに纏まる。1つに纏まった津波は一つの水の塊になり、巨大な目を生み出す。
ギョロ、ギョロと何かを探す様に目を動かし、ある所に目を止める。
目が止まった先は、霞が関ダンジョン。
その水の塊は、霞が関ダンジョン上空に来ると一滴残らず吸い込まれて行った。
「各地の潮位計、通常通りに戻りました」
「津波による被害無し!」
「各地の関係部門から、先の事について問い合わせ多数!」
気象庁は、対応に追われ彼等は可哀そうだが、残業が決定した。
そのころ、契約の神殿には、大量の水が浸入し辺り一面を水浸しにしている。
「――――《ピーピー》ちゃん、会いたかったよ!」
「私もティアマトちゃんに会いたかった!」
水が引いて行き、そこには水色のショートへアに瞳、顔に入墨、褐色肌の巫女服を着たロリ幼女が姿を見せる。
いつもは、精神世界でしか会えなかった友の顕在化が出来て思わずスーちゃんことテルちゃんは抱き着く。
そんな2人を見ているのは、火の大聖霊のフレイアと風の大聖霊のシルフィ。
「「ティアマトよ、随分、変わったな?その皮は前の巫女か?」」
「そうじゃ、前の巫女はこの世が嫌になって魂が解脱したからな……我が今は入っている、グハッツ」
「だ、大丈夫?ティーちゃん?」
「どういうことじゃ、皮で覆ったワシの魔力が持たぬとは……」
「「あー、恐らくは顕在化力が不足している……」
フレイアとシルフィは、ティアマトに抱き着いているスーちゃんを離すと、大聖霊同士でお話をして説明をする。
「なるほど、我々が元の姿を取り戻す為には、人間の感情や思いが必要と……」
「「人間界では、宗教または、推し活と言われている」」
「我らの巫女をDアイドルとし、信仰心を獲得するのか!」
「「その理解で、間違っていない!」」
「なるほど、このままでは動けないならばこうするか?」
褐色ロリ少女の躰が光り、カワイイぬいぐるみに変化する。よく、アニメグッズで売り出される精巧なぬいぐるみの様だ。
「ティアマトちゃん!?」
「心配するな、今はまだ、この姿がお主と一緒に過ごすの適している。このぬいぐるみは、元の巫女の躰を使っているから人の温もりがあってよいぞ!」
〝元の巫女の躰を使っているから、人の温もりがあるww〝
〝人の皮膚で本も作るのもやべーけど、ぬいぐるみはもっとやべー〝
〝大聖霊は、人間の事をどう思っているんやろ……?〝
大聖霊にとって、巫女以外の人間は素材である。巫女を保護し、巫女の血を紡ぐための人間は必要な素材という認識である。
ただ、その人間が持つ感情や思いが自分を強くするので、素材の信仰心への対価として、ごく僅かな幸運を餌としているのだ。
「これからも宜しくね!ティアちゃん!」
「巫女として恥じる事ないように、研鑽するのじゃ!」
スーちゃんこと、テルが小さい人形になったティアマトを嬉しそうに抱き替える。
微笑ましい光景に視聴者が頬を緩ませていると突然、【ピンポーン、四属性目の大聖霊が出現したので世界のアップデートを始めます】
っと呑気な声が世界中に響いた。
次回 世界のアップデートver2
 




