第141話 武台少女、第二回公開オーディション⑧
「あら、バレちゃいましたか?」
「最初の1人目をやった時から見ていただろ?」
セミロングの茶髪、蒼色で宝石の様な瞳の美少女が姿を見せる。
〝あ、テルちゃんだ!〝
〝悪役少女シリーズのテルちゃんだ〝
〝最後の役に相応しい登場の仕方で草www〝
彼女の名前はテルちゃん、母親は悪役役で右手に出る者は居ない大女優。パパも映画やドラマで常に悪役を演じる、驚異的身体能力の男優。
そのサラブレッドとして、生まれたのがテルちゃん。
ママから並外れた容姿とパパから貰った身体能力を使い、テルちゃんも子役として、悪役街道を突っ走っている。
テルちゃんの一番特徴的な点は、笑顔になると悪役のする口角を上げる状態になる所で、周りからは「テルちゃん、笑顔怖っ」っと言われている。
「それにしても、酷い笑顔だな」
「貴女の顔こそ、酷い顔ですわね」
〝うん、両方とも悪役の顔で草ww〝
〝テルちゃんもレイちゃんも中学三年ww〝
〝こんな顔の中学三年生が通学路に居たら、オジサン泣いちゃう〝
まじまじとレイはテルの顔を見て首を傾げる、所々、誰かにそっくりなのだ。まるで、自分のMABであるアイツを見ているようなのだ……。
「どうされました?」
「イヤ、一瞬、ルミちゃんに似てるなって思ってさ」
「ああ、従妹同士ですからね」
「どうりで、にているわけだ」
〝あー、誰かに似ていると思ったら……〝
〝ルミちゃんが悪落ちしたら、テルちゃんになると……〝
〝清純と悪役で家内分業してて草ww〝
〝↑役の家内分業に草ww〝
そう、ルミちゃんとテルちゃんは、従妹同士で、歳も生まれた日も同じ。
顔の所々はとても似ているというか、ほぼ体形もそっくり。似ていない点は、笑顔が優しいか優しくない位の違いである。
「ふふ、ルミちゃんの顔だとやりにくいですかね?」
「そんなことは無いよ、ヤルコトはやるさ」
「じゃ、やり合いましょうか?【魔力圧縮】!」
テルちゃんの右手に蒼色の魔力棒が集まり、胸元には八卦炉のペンダントが光る。
「十四層まで達したのかよ!相手にとって不足は無し!」
右手で斧を取り出し、先ほど息絶えた褐色空手ちゃんの足を左手で掴むとテルちゃんに投げ飛ばす。
テルちゃんは魔力棒で、褐色空手ちゃんの躰を切り裂こうとした瞬間に、褐色空手ちゃんは細切れ肉になり血肉がテルちゃんに降り注ぐ。
「スキル、【糸使い】、某鬼〇のサイコロステーキ先輩を参考にしてみた」
〝鬼〇隊のサイコロステーキ先輩ww〝
〝イメージと柔軟性は重要だけどww〝
〝ここで、死体を細切れにするとか鬼より鬼で草ww〝
その血肉を隠れ蓑にして、テルちゃんに襲い掛かる。
「ねぇ、知っている?人間は99%は水分でよ!スキル【流水操作】」
降りそそぐ血肉が槍に変わり、レイに向かって飛んでいく。それを全て薙ぎ払い、レイはテルに迫る。
〝嫌なマメシバで草ww〝
〝もうこれ、鬼側に寝返った水柱やろww〝
〝悪役VS殺戮人形、史上最低の戦いやろww〝
魔力棒でレイの斧を受け止めながら、テルは距離を取ろうとするが、構わずレイは踏み込み、テルちゃんの左腕を跳ね飛ばす。
「くっ、流石に近距離戦は貴女の方が優れているようですね……」
「さぁ、次は右手で左足、どっちがよい?人間の手足は沢山あるよ」
レイの替わりに、演じている風の大聖霊のシルフィが次の攻撃をしようとした時だった、明らかにテルちゃんの雰囲気が替わり距離を取る。
突如として、レイの周りに水の槍が生まれ、レイへ攻撃を始める。レイも余り使いたくないが、風の槍にて水の槍を相殺する。
「近距離攻撃も出来るじゃないか!ところで、お前誰だ?」
「私はテルだよ、一億と二千年ぶりかな?」
左腕を飛ばされ、痛がっていたはずのテルちゃんはおらず、深海の様に蒼い虚ろな瞳をした少女がゆらりと立って居る。
〝でた、不思議テルちゃん〝
〝あーたまに話題になる、不思議テルちゃん〝
〝ゾーンに入ると出て来るというテルちゃんの第二人格〝
テルの中には、もう1人の自分が居ることになっている。
3歳位の時に、突如として現れたそれは、子供が使わない様な古い言葉を使ったりして周囲の大人達を混乱させた。
親は、病院に連れて行ったが、原因不明で多感な幼児が芸能界の出会いでどこからか拾って来たという事でとりあえず落ち着いた。
しかし、子役として悪役を演じ始めるとその不思議な何かが出てきて演じるようになる。
まるで、本物の悪役とは何かを知り演じている様に大人や周囲の人達は、困惑をしながら、流石サラブレッドの娘と賞賛し持ち上げている。
「私はお前など知らぬ!ん、一億と二千年前だと……」
「八千年前ではこのように殺し、殺されあったというのに、大波」
「まさか、お主は……」
レイが言葉を発する前に、テルちゃんとレイを巨大な波が覆い、建物の内部を破壊する。
次回 武台少女、第二回公開オーディション⑨




