第14話 リアルも燃える②
円禍を抱きかかえながら、ルミは配信用のドローンを起動させる。
ルミは日ごろから何かに巻き込まれたら、ドローンを起動させ配信しているのだ。社長や周りから、「配信で衆人環視されている状況を作ることが君を守る事になる」と言われているからである。
『円禍さん家が燃えていますわ』
〝炎上系の円禍さんの自宅が燃える〝
〝あそこに有るのって、何、イヤな気がする〝
〝ルミッチ何があったか?聞いてみて〝
コメントを見て、ルミは早速周りの住民たちに話を聞いてみる。突然現れたアイドルに人々は驚きながらも、まるで、人々は何か魔法にでも掛けられた様に、ペラペラと話し出す。
中には、円禍の本名と住んでいる階まで聞いていない事まで語る住民もいる。
『何か?迷惑系の人達が数名来ていたみたいです』
『そして、警察官の人と揉めてファイヤーボールを当てられたとの事です』
『その結果、アパートも燃えているとの事です』
〝ファー、あそこの燃えカスって警察官かよ〝
〝あそこで倒れているのは、凸した迷惑系かよ!〝
〝パパがキスしてアへった炎上系の人を送ったら火事に巻き込まれた件〝
〝状況を文字に起こすとトンデモナイ状況やでwww〝
「うちの子が、居ない、まだ中に居るかも!?」
「消防車は!?消防車は!?」
そう、まだ誰も消防車を呼んでいないのである。最初の警察を呼んだ時点で満足して、誰も消防に電話していない。
『子供さんは何処にいるのですか?』
「3階の――さんの家がこっちの正面302なので右隣の301ですね」
『円禍さんちの横ですね、行ってきます』
「アイドルが火の中に入ったら顔が火傷しちゃうよ!」
『イエイエ、大丈夫です、これは耐熱仕様ですので』
何もない空間から暗黒卿の仮面と今日は暗黒卿の服とマントが出てくる。内側が赤と金のメッシュが入っていてカッコいい仕様の服とマントだ。
その服は、まるでルミ専用のように躰を一部の隙も無く覆い、ルミが仮面を被るとコーホッっと音がし酸素マスクが稼働を始める。
〝暗黒卿のルミ専用の服やんけかっこいい、ゴシックよりもこっちやろ〝
〝炎上するアパートの前に居るだけで、絵になるやんけ〝
〝切り取られたら、暗黒卿がジェ〇イのアパートに放火している様に見える〝
〝築50年の家に住むジェ〇イ、緑色の小さい生き物が住んでそう〝
『それでは、――さんを宜しく』
「気を付けて下さいね!お願いします」
子供の母親に円禍を預けると業火の中に飛び込んでいく。ルミも助けられる子供もこれが、それぞれの分岐点になることを知らない。