第139話 武台少女、第二回公開オーディション⑥
殺戮人形役のレイは歩きながら、スマホでドローンの中継画面を見る。
「おかあちゃん、東京で一旗があげしようとおもってきたけど、つまらんかったごめんなさい……」
「おじいさま、先立つ不孝をお許しください……」
1Fに激突した時に、にゃむこがどうやら雪子を庇ったようで、幸運《●●》にも生き残っていたが、2人とも外傷が激しく仲良く手を繋ぎながらこと切れた。
〝面白武器 で死んだと思っていないからリアル……〝
〝解除されるまで、死体は残るから……1Fの地獄よ……〝
〝リーダーちゃんと2人、今の2人で計5人の死体があるけどさぁ……〝
〝にゃむこと雪子ちゃんしかまともな死体がない件www〝
「よう、スマホでよそ見とは良いご身分なことで」
突然の声と共に、レイの首筋を一陣の風が通り抜ける。声の主から連続攻撃をレイは受けるが、スマホを見ながら回避を行う。
新人類で、ダンジョンを攻略しているレイなら当然避けることは容易。
さらに、今は風の大聖霊であるシルフィがレイの躰を使い演じており、新人類以上に風の流れでより効率良く避ける事が出来ている。
柱や壁に穴が開き、置かれている調度品が破壊され土煙が起きるような攻撃をレイは次から次へと避けていく。
「避けるな!戦え!卑怯者」
土煙が晴れると其処には黒髪短髪、日焼けした肌に黒帯を着けた少女が立っていた。
〝空手少女と話題の千里山蘭ちゃんだ〝
〝全国大会で中学生の部で3連覇している凄い子や!〝
〝この子ならワンちゃんやってくれるかも……〝
「へー、君の名前は千里山蘭ちゃんて言うんだ、宜しくね」
「そんな、顔で見てくれるな、邪悪さと殺気が隠しきれていないぞ」
「そうなのかな?ちょっと待ってね……」
「ん、なんだ、殺気が消えた、イヤ、気持ち悪さは残っている」
先ほどの武家で剣道をする雪子ちゃんや千里山蘭ちゃんは、何故、大聖霊を邪悪という風に呼んでいるのか?
それは簡単、視点というか感性の違い。
大聖霊達は、日本だと【国生み、出雲神話、国譲り】といった神話が国家により創られ、同時に信仰象徴として為政者に都合の良い神々が生み出され信仰という世界から追放された、服従しなかった者達。
それ故に、剣道や武道という国家の作り上げた神々を奉納し信じている者達からしてみれば、服従しなかった者達は邪悪な存在に見える。
まぁ、日本という国は邪悪な神様も良い神様も十把一絡げにして神様と祀っているため、大聖霊達は滅ばず存在する事が出来た。
そのため、この国には精霊の愛し子が多く、現在は聖霊や大精霊と契約している子は多数いる。
さて、レイちゃんこと大聖霊であるシルフィはスマホで今、何を見ていたのか?
それは、優秀な人材の転職を進める講座の動画(verアニメ風)。
殺気を消したシオちゃんは、改めて千里山蘭ちゃんと対峙する。
「提案があるのだが、貴女は冒険者にならないか?」
「ならない、冒険者なんかにならない」
「先ほどの攻撃からわかるよ、弱冠15歳で空手で至高の領域に達し掛けている」
「ならない、冒険者なんて武の道に達せない卑怯者が成るもの」
「冒険者はよいぞ、銃弾を受けてもダメージは無いし、業値が高ければ寿命が延び、至高の領域へ達することも出来る。人の身を捨てて冒険者にならない理由が無い」
「分かってないね……人は短い寿命だからこそ切磋琢磨し、己を磨ける寿命が長くなっても達せない人間は達せないものよ!」
まさかの提案に失敗するレイこと大聖霊であるシルフィ。
「オカシイナ、この方法だと100%勧誘に成功するって書いてあるのに……」
〝猗〇座の転職勧誘講座で草ww〝
〝一般人⇒冒険者は確かにジョブチェンジだけどさぁww〝
〝レイちゃんはインターネットの知識を真に受けちゃうタイプやね……〝
レイは溜息を吐き、プランBに移行を開始する。
「仕方がないね、殺すしかなくなっちゃたね」
「なぜ、そこで背後を向き、首を傾けながらこちらを向き泣く」
「だって、スマホにヒロイン度を上げるには、そうした方が良いって書いてあるし」
〝シャ〇ト角wwwヒロイン度www〝
〝殺戮人形先輩……ヒロイン度ってヒロインのためですよ……〝
〝たしかに、泣いているレイさんの方がヒロイン感が……〝
〝クソっつ、俺たちは何を見せられているだ!〝
「じゃ、ヤルヨ」
殺戮人形と空手少女の戦いが始まる。
次回 武台少女、第二回公開オーディション⑦




