第13話 リアルも燃える①
パチパチっと音を立てながら燃える3階立の築50年のアパート。
「私の収入源が燃える、早く消さないと!消防車は?」
叫んでいるのは、どうやらこのアパートの大家の様だ。だが、全員が傍観してるだけで消防車を呼んでいないので来ない。
なぜ、このアパートは燃えているか?
少しの間、時間を戻そう。
ここは、燃える前のアパート、アパートの前には数名の若い男女。
「ここが炎上円禍の家って本当か?」
「リーク元だとここね、めちぇくちゃボロボロだな!?」
「あいつの年収って1000万越えって言われてなかったけ?」
「まあ、いいさ、それだけ貯めているかもしれないしな!」
彼等も炎上円禍と同じような配信者である。ただ、配信者でもやっかいな、迷惑系というやつである。
炎上円禍は特ダネをスクープして対象を燃やす炎上系。彼らは、炎上した特ダネに凸して小金を稼ぐ迷惑系というやつである。
「あのー、住民の方から通報がありまして」
そんな怪しい彼等を見た住民が、警察に通報をしたのだ。彼等も慣れた物で警察など相手にせず、配信を始める。
「ウェーイ、ルミパパにキスして貰って炎上中の炎上円禍のアパートにいまーす」
「後ろには、何と警察が居ますが配信を進めます!」
「お、いつもの10倍くらいの視聴者と投げ銭キターーーーーー」
「ハイ、君達、名前は?仕事は?何をしてるの?」
そんな彼らを対応したのは、年配の内勤が主な警察官である。体力のある若い連中は、都内の方に引っ張り出されている。
この警官は、配信とか迷惑系とか炎上とかまったく知らない団塊の世代。
「触らないでよ!」
「うぇーい、国家から不当な扱いを受けています」
「なんだっけ、特別公務員暴行なんとかで逮捕されちゃいまちゅよ」
団塊の世代は、手が出るのが最も早い世代とも言われている。
ぷちっと何かが切れる音がしたかと思うと、グーが男の顔に刺さる。
そもそも、この警官が内勤なのは、団塊の世代で体力が無いからでは無く、手が早いから外に出せないのである。
「誰か、助けて!暴力反対!ぷげっ!」
「腐れ暴力老害!俺は冒険者なんだよ!死ね!ファイヤーボール」
女配信者が殴られてる間に男の方が、警官にファイヤーボールを撃つ。
街中で意味もなく、冒険者がファイヤーボールを撃つのは法律では重罪。
程度によるが、執行猶予無しの懲役10年である。
警官が男に振り向いた瞬間、ファイヤーボールが直撃し上半身が無くなる。
そのまま、ファイヤーボールはボロアパートに直撃する。
「あわわわ、やっちまった、逃げよう!」
いつもの、他の冒険者を虐める感覚でサクッと警察官を殺ってしまったのだ。
このままだと間違えなく、死刑、死刑である。
男は人込みをかき分けると足早に逃げていった。
そこに、一台のタクシーが止まり、二人の少女が降りて来た。一人は、虚ろな翠色の瞳で、もう一人は琥珀色の瞳が美しい少女。
そう、アパートの住民で話題沸騰中の炎上円禍とアイドルのルミだ。
 




