第10話 炎上ガール・ミーツ・ガール①
「暇すぎる」
赤いロングヘアのツインテール、エメラルドグリーンの瞳、見えそうで見えないショートスカートを履いている炎上系メスガキ配信者が呟く。
〝炎上させろ〝
〝ネタが無いのか〝
〝一体どうした?〝
「この間のルミの件で警察が多すぎて、炎上出来そうな奴が都心に居ない」
〝あー分かるわ、ネタになりそう奴ら出てこないもんね〝
〝3m置きぐらいに、警察官が立ってるもんな〝
〝普段からあれだけ配備しろって思うわ〝
先日の女性誘拐未遂事件は、安全安心な日本に大きなインパクトを与えた。
日本政府は東京が安全な街であることのアピール、警察は失った面子の回復。
普段なら何だかんだ理由を着けて、互いに非協力的な巨大組織が手を組んだ。
しかも、国民国家の為という名目で予算は青天井。
「なんだよ、日本全国から警察官集めて、都心の安全を確保とかサミットかよ!予算無制限って何だよ!何で誰もそこを指摘しないんだよ!イヤ、指摘したら別件逮捕ってなんだよ!」
〝政府「これは言論弾圧では無く、法に照らし合わせた適切な逮捕」だもんな〝
〝野党もここで与党を非難したら、票が与党に逃げるもんな〝
〝で、円禍っちはどうしてお台場に来ているの?〝
「ふふ、良く聞いてくれたわ!都心の警察官が多くて気楽に楽しめないカップルたちがお台場に沢山来ているのよ!っという事は、交際禁止のアイドルとかの炎上ネタが転がっている可能性があるのよ!」
〝もう、こいつ令和のアベック狩りやろww〝
〝子ども家庭庁さん、こいつ、少子高齢化社会を企む悪人です〝
〝自分がモテないからって、同性の炎上狙い過ぎやろww〝
「何よ!私だってモテない訳じゃないのよ、炎上回避しているのよ!」
関東平野のようになだらかな胸を張るが周りの女性たちは、ボンキュッボン。俗にいう港区女子の様に、キラキラしている子が多い。
そんな中で炎上円禍の今の様子は、小学生が大人の世界に紛れ込んだようである。周りの大人達は、円禍の事は親子連れで来て、親達が買い物している間に放牧されているのだと勝手に理解しているのだ。
『今日は人が多いですね』
「そうだね」
円禍はこの前の番組で聞いた声に思わず振り返る。
一人はセミロングの銀髪にサングラス、白い肌にゴスロリ服の少女、ルミちゃん。
相方は、長い黒い髪にサングラス、ブラウスの制服を着た背の高い謎の女性。
二人は互いの手を恋人繋ぎしている。
今話題沸騰中のルミが謎の女性と歩いているのを見てネタになると思い、内心ガッツポーズをしながら二人を追いかけるのであった。