第十話 魔王様!お姫様に魔の手が迫ります!
ー魔都 ルーデウスー
魔王ルーデルが週に一回休むことは、
魔王軍でも問題になってきていた。
戦線が膠着し、ヒューム絶滅まであと一歩だったアルデンヌ攻略戦などは、
もう遠い日のことの様であった。
いろいろな不穏な噂も流れる中、
「いっそのこと、アルフォルトを排除すべきでは?」
と、ついにアルフォルトの抹殺計画が実行に移されようとしていた──。
アルフォルト抹殺計画の首謀者は、表向きにはわからないようになっていたが、情報収集や暗殺者を招集できるということは、この計画に魔王軍の幹部クラスの関与があることを物語っていた。
凱旋パーリィの終了後である。
会場からの回廊で、アルフォルトの後ろから迫る影があった。
後ろからの奇襲攻撃に、アルフォルトは気が付かない。
陰からのびるその鎌がアルフォルトに降りかかる!
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ガキィンッ!
金属がすり合う音がひびく!
アルフォルトが振り返ると、
そこには鎌を弾き飛ばした魔王ルーデルの姿があった。
魔王ルーデルはドラゴンナイトであり、タンク役のブラックナイトでもある。
アルフォルトへはガード魔法を常に展開していた。
アルフォルト以外に、スイーツの呪いを解除するものがいないため、
ルーデルにとっては、アルフォルトを守ることは、
至上命題なのである!
「アルフォルトを守ることが、我が軍の安定に繋がる……
それを理解できない者には容赦はせん。」
静かに、そう告げると、ルーデルは暗殺者たちに一瞥をくれ、
力強く剣を振りかざした。
アルフォルトは、予期せぬルーデルの行動に驚きながらも、
胸が少し温かくなるのを感じていた。
暗殺に失敗し、逃げ始める暗殺者たち。
ルーデルは、アルフォルトを守るためここを離れられない。
ここは逃亡を許すほかなかった。
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回廊に静寂が戻り、アルフォルトは安堵と驚きが入り混じった表情でルーデルを見つめた。
「ルーデル様……ありがとうございます。」
ルーデルは少し気まずそうに目をそらし、照れ隠しに咳払いをする。
「……気にするな。お前が倒れれば、私が困るだけだ。」
その言葉の裏に、ほんの僅かな優しさを感じ取ったアルフォルトは、
ふっと微笑んだ。
魔王ルーデルの「ガード魔法」がかかっている状態では、うかつにアルフォルトへの干渉は困難なことが判明した。
その後アルフォルトは警戒し、転移魔法を移動で使用するようになり、常にアルフォルトを視界におく魔王ルーデルの前には、暗殺はもはや不可能になっていた。
ただ、闇の中でこの計画をじっと見ていた2つの赤い目は、
滾る怒りに燃えていたのである。
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翌朝、アルフォルトはさっそく魔王様に「スイーツ」を届けるべく、
特製のチョコレートバタークッキーを手にして現れた。
ふわりとしたチョコレートに濃厚なバタークッキーを張り付け、チョコレートに優雅な「船など」の紋様を彫刻した異世界のお菓子を改変した「危険な」お菓子である!
「さぁ、魔王様、今日のスイーツタイムです♪」
差し出されたスイーツを一口頬張ったルーデルは、バタークッキーの甘さと、ビターなチョコレートのハーモニーに一瞬気を緩めるが、
次の瞬間、意識がふっと遠のき──
今週もまた、魔王ルーデルはこのスイーツにより、
見事に失神したのであった。
ルーデルも自信は意識はしていなかったが、
スイーツを堪能できるようにはなってきたようだった。
「ふふっ、魔王様、いつもお疲れ様です♪」
微笑むアルフォルトは、静かに彼の傍を見守った。
今日も丸一日は一緒にいられることに安心しながら。




