第六話 魔王様! 往生際が良くないですよ♪
ルーデルは、1日も失神をしていた。
気が付くと居室で失神をしていることに気が付いたルーデル。
わきには、アルフォルトがついていてくれていた。
きまずいシチュエーションである。
ずっと無視し続けた相手に、
いまや、決定権を握られているのである。
この泣く子も黙る、恐怖の大魔王が、
こんな小娘に、
してやられているのである。
ルーデルは、怒りでいっぱいになりながら、
この呪いを否定したかったので、とりあえずこの居室を離れた。
ーヒュームの城下町 アルデンヌ ー
魔王ルーデルは、自らにかかった呪い
―毎週愛する者の手によるスイーツを食べなければならないという呪い―
を無視することを画策していた。
魔王としての「誇り」が、魔界にはない「愛」などどいう存在に屈することがどうしても許せなかったのである。
そこで、本当に普通のスイーツではだめなのか確かめるために、ヒュームの街に潜入し、スイーツを食べることを決意したのであった。
普段のままでも、ちょっとした「旅芸人」で通せそうではあったが、さすがに魔力などで悪魔だと察知されるかもしれず、変身魔法を使用し、お忍びでヒュームの街、アルデンヌに来ていた。
市場では様々なものが売買されていた。
その中でスイーツの物色をするルーデル。
「おやおや、おにいさん、スイーツをお探しかい?」
と老婆に話しかけられ、びっくりするルーデル。
みると、年老いた目の不自由な老婆であった。
「となりの店のスイーツは有名だから食べてみるといいよ。」
と、となりの店を指し示す老婆。
ルーデルはだまって、その店に入っていったが、
老婆はにんやり笑ってルーデルの後ろ姿をみつめていた。
「らっしゃーいませー」
と、年ごろの女の子が5人も働くこのスイーツの店は、
アルデンヌで一番人気のある「チョコ」の店であった。
ありとあらゆるチョコが並べられ、
このにおいだけでもまがまがしさを感じるルーデル。
この凶悪さはどうにも耐えることができなさそうだ。
ルーデルは、そそくさと小さなチョコを1つだけ金貨1枚で購入すると、
即座に街をあとにしたのであった。
しかしながら、そのあと店では大騒ぎになっていた。
この戦争による不景気において、
ぷちチョコ1つに、大金貨1枚!
を置いていった気前の良い青年に皆、驚愕していたのであった。
そして、この騒動を見ていたものがひとりいた。
副官ラヴィニアである。彼女はルーデルを尾行し、
ルーデルがスイーツを入手する一部始終をみていたのである!
「どうしてルーデル様は、スイーツなどを、、 」
と不審に思うのであった。
魔王城に帰還し、ぷちチョコを眺めるルーデル。
このチョコを食べると、おそらく前回と一緒であれば、
1日で回復するだろう。
しかしながら、最終日まで待ってしまうと、「ご臨終」になりかねない。
つまり、今日がアルフォルト以外のスイーツの
トライアルタイムリミットなので、
つべこべ言わす、
ルーデルは、
黙ってチョコを食べて、
黙って気絶をした。
ルーデルは、今回も1日失神をしていた。
気が付くと居室で失神をしていることに気が付いたルーデル。
わきには、前回同様にアルフォルトがついていてくれていた。
「ルーデル様、これで、「4日」経ちましたよ。
あと2日後には、また「あの日」がきますからね!
わかってらっしゃいますか?」
と、きつめの口調で話すアルフォルト。
アルフォルトは、たいへん不服であった。
自分の話を信じようとしないルーデル、
そして自分以外のスイーツを食べたことに、
たいへんご立腹であったのである。
ルーデルには、嘘ばかり説明していた自分は棚において、
アルフォルトは、怒っていたのである!
ルーデルは、
「あと2日たたないとわからぬではないか!」
と言って、部屋を出て行ってしまった。
部屋の外では、副官のラヴィニアが会議にこないルーデルを問い詰めに来ていた。ルーデルはラヴィニアも無視して出て行ったので、ラヴィニアは、アルフォルトをきつくにらむと、ルーデルの後を追って走っていった。
でも結局ルーデルには、「その日」が来てしまったのである。
予想に反し、再び強力なデバフの影響に打ちひしがられるルーデル。
仕方がないので、再びアルフォルトを内密に呼んだ。
今日はアルフォルトは、スフレチーズケーキをホールケーキで持って登場した。
ふわりと甘く優しい禍々しい香りがルーデルの鼻をくすぐった。まるで雲のように軽やかな、ふんわりとしたスフレチーズケーキだった。その表面は僅かに焼き色がついており、たちのぼる湯気が中はまだ温かそうなことを物語っていた。
「魔王さま、このケーキの触感は、まずその軽やかさです。まるでチーズが空気を含んだかのようにふわりと溶けていくのです。口に含むと、全体がチーズの豊かな風味で満たされます。甘さと酸味の絶妙なバランスがポイントです!」
と言ってアルフォルトは、皿を持ったまましばらく待った・・・
すこしづつ苦しみ始めるルーデル。
苦しんでいるルーデルを見て、アルフォルトは思わず悦んでいた。
「ルーデル様、何かおっしゃることはございますか?」
「アルフォルト、スイーツをくれ!」
「よく聞こえません♪」
アルフォルトをにらみながらルーデルは答える。
「スイーツをよこせ!」
アルフォルトはゆっくりとルーデルの目を見て言った。
「いったい「誰の」作ったスイーツが欲しいのですかぁ?」
勘弁してくれという表情をしながら、
だらだら冷や汗をかきながら、ルーデルは少しづつ屈する。
「アルフォルトの作ったスイーツが欲しい。」
ゆっくりと首を振りながらアルフォルトは続ける。
「どうして私なのですかぁ?」
ルーデルはさらに苦痛に顔をゆがませた。
しばらくうつむく魔王ルーデル。
15分後、
「アルフォルトが私を愛してくれているからだ。」
とか細い声でルーデルは言った。
魔王ルーデルが、「お菓子の悪魔」に敗北した歴史的瞬間であった。。
アルフォルトはケーキの皿をルーデルに差し出した。
一口食べて無事に失神した魔王ルーデル。
「魔王様、今日は残さず食べて頂きますね♪」
さっきのセリフにちょっと恥ずかしくなってしまい、
アルフォルトは、ホールケーキをすべて魔王の口に突っ込んでいた。
今回は、魔王は5日間失神し続けていた。
アルフォルトは、この5日間ずっと魔王に付き添っていた。
そろそろ目を覚ましつつあるのを感じ、
ほっと一息をするアルフォルト。
アルフォルトは、
この空間でルーデルといることに、
幸せを感じ始めていた。
今回やっと「愛」が必要なことは理解してもらったわ!
そしてケーキも丸ごと食べて頂いたわ!
でもこれ以上食べていただくと、
「大変なこと」になるかもしれないから、
今後は自重しよっと♪
今回はあと一歩のところで危ないところだった。。
と、アルフォルトはさすがに少し反省したのであった。




