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ほしいものすべて――砕けた瓦礫の下にも、 あの人の瞳の奥にも

 陽が白く傾き始めた頃、わたしたちは馬を引きながら、徒歩で国境検問所の砦へと立ち返った。


 砦の中庭に足を踏み入れた瞬間、甘く焦げた木樽の匂いと、湿った灰の鋭い酸味が、舌の奥を痺れさせるように纏わりつく。腹の底に澱むようなその濃い空気に、息が詰まった。ここにはもう、秋風の清涼さなど欠片も残されてはいない。


 ふと、幻聴のように遠い耳鳴りがして、わたしは空を仰いだ。そこには、天そのものに刻まれた癒えることのない傷痕のように、紫白しはくの稲妻が走っている。巻雲が、ちぎれた翼のように盆地の一点へと吸い込まれていく。〈虚無〉は息を継ぎながらも生き、この星の鼓動を狂わせ続けていた。


「……降りられるか?」


 ヴォルフが低く問う。彼の吐く息が、わたしの髪を白く掠めていく。甲冑越しに伝わる鼓動は僅かに乱れ、わたしの胸骨にまで共鳴した。


――いま足を下ろせば、この震えが、皆に伝わってしまうかもしれない。


 一瞬の躊躇いを振り払うように、わたしはこくりと頷いて、彼の腕からそっと足を下ろす。石畳の冷たさが膝の震えを吸い取り、靴底へと抜けていくようだった。


 灰に覆われた兵士たちが、崩れた胸壁の陰に、魂の抜け殻のように身を寄せ合っている。ただ虚ろに空を仰ぐその瞳は、もう何も映してはいない。主を失った一本の槍が瓦礫に突き刺さり、掲げられていた軍旗は、風に揺れる意味のない、ただの朽ちた布片になっていた。

 人知を超えた恐怖は、人の尊厳をかくも容易く剥ぎ取ってしまうものなのだ。


「──女王陛下! なにゆえ、ここへ!?」


 乾いた空気を裂く叫び。

 弾かれたように振り返ると、灰に染まった高級将校らしき人物が、よろめきながら駆け寄ってきた。肩章の金糸は煤で曇り、その瞳だけが、燃え尽きる寸前の蝋燭のように、必死の光を宿していた。


 わたしが声を発するより早く、ヴォルフが一歩前に出る。わたしを庇うように壁となった彼の身体。甲冑が擦れる、低く重い金属音が、張り詰めた場の空気をさらに締め上げた。


「今すぐ総督にお会いしたい。……どちらにおいでか」


「総督なら、幕舎におられますが……」


「失礼を承知で尋ねる。現状は、首都ハロエズはどうなっている?」


 ヴォルフの鋼のような声に押され、将校は一度視線を彷徨わせた。砕けた煉瓦を握り締めたその拳が白く強張り、震えが彼の絶望を物語っている。


「申し訳ありませんが……それはお答えしかねます。王配殿下」


「これほどの事態だ。盆地を監視する山麓の砦からは、狼煙も上がっていない。首都との連絡が、完全に途絶している。……そうではないか?」


 追い打ちをかけるようなヴォルフの言葉に、将校ははっと顔を上げた。瞳が大きく見開かれ、こらえていた息を、苦しげに吐き出す。


「い、いかにも……盆地側は――」


 彼は一度、唇を固く結び、視線を足元の瓦礫へ逃がした。


「……完全沈黙。それゆえ、閣下も幕僚たちも……」


 言葉の先は、絶望に呑み込まれて消えた。


 わたしは頷き、ヴォルフと視線を交わす。彼の蒼灰色の瞳が「急げ」と告げ、胸の奥に、小さな決意の灯がともった。


「状況は理解いたしました。至急お目にかかりたい。案内をお願いします」


 静かに、けれど有無を言わせぬ響きを乗せて告げる。将校は、わたしの声に我を取り戻したのか、乱れた呼吸を整え、片膝をついて敬礼した。


「……かしこまりました。どうぞ、お入りを」


 その声に宿った微かな決意の響きが、吹き抜ける灰の匂いを、一刹那だけ和らげたように感じられた。


◇◇◇


 幕舎の布扉を押した刹那、燻った炭と血膿の鉄錆、そして砕いた薬草が混ざり合った濃い匂いが、絶望の熱風のようにわたし達を襲った。腹帯の下で、胎動とも呼べぬ、命の微かな脈打ちがきゅっと縮まる。わたしは無意識に外套の下でそっと掌を添えた。


 薄暗い天幕の中――地図卓に身を折るように凭れる、ひとりの男がいた。


 アウレリオ枢機卿。


 その背は、陽の差すことのない深海のように静まり返って沈み、肩先でほどけた銀髪が、まるで光の届かぬ海草のように力なく揺れている。


 扉の布が揺れる音に、枢機卿は、まるで錆びついた人形のように、ゆっくりと顔を上げた。憔悴しきって陰を帯びた頬。けれど、その薄い影の奥で揺れた光は、国を背負う将軍のそれではなく、残してきた家族の無事を祈る、ひとりの父親の目に見えた。

 その痛みを映す瞳を前に、踏み出すはずの足が一瞬、石になったように縫い付けられる。


 わたしが声を探して唇を震わせるより先に、ヴォルフが低い息を吐き、静かに口を開いた。幕舎の梁が、彼の声に共鳴してわずかに震える。


「アウレリオ殿。あの光、あの爆風――軍人であるならば、それが尋常ならざるものであると、理解できたはずだ」


「……リーディスの王配殿下よ。貴殿の立場は理解しております」


 枢機卿の声は、乾いた砂が擦れるようにか細い。


「ですが、これはサニル共和国の主権に関わる問題。たとえ隣国の王族であろうと、我が軍の進退に口を挟む権利はございません」


「主権、だと? この期に及んで、ふざけるな」


 ヴォルフの声が、侮蔑を帯びて低く唸る。


「あの光が、法や国境を選ぶとでも? あんたも見たはずだ。あれは、人間の定めた理屈など、すべて焼き尽くす。それでもなお、あんたは地図の上の線に拘るのか」


「だとしても……できぬのです」


 アウレリオは、血に染まった駒へと目を落としたまま、かぶりを振った。


「私には方面軍総督としての責務がある。議会の承認なく、独断で軍を動かすことは、即ち国家への反逆。そうなれば、この砦に残った兵たちさえ私は守れなくなる。……ただ一人の感情で、組織を危険に晒すわけには……いかないのです」


 自分に言い聞かせるような、そのか細い拒絶の言葉を、ヴォルフは一蹴した。


「組織だ責務だと……立派な言葉だな。だが、瓦礫の下であんたの帰りを待っているのはなんだ? 組織か? それとも……」


 アウレリオの肩が、ぴくりと跳ねた。


「首都ハロエズには、あんたの家族がいるんだろう……?」


 その問いが、枢機卿の纏う最後の鎧に、深い亀裂を入れる。彼は答えず、ただ唇をきつく引き結んだ。その沈黙こそが、何より雄弁な肯定だった。


《警告。第二次臨界収束を確認。エネルギー流束、再増大開始。到達予測、Tマイナス一八分》


 レシュトルからの冷徹な警告が、脳裏を鋭く刺す。わたしの背筋を、見えざる氷の指がなぞった。残された時間が、急速に色を失っていく。


 ヴォルフは、そこで一度息を吸った。幕舎の中の空気が、しん、と張り詰める。


「俺だって……」


 彼の声から、先程までの鋼のような硬さが消え、僅かな、けれど温かい熱が滲んだ。


「来年には、父親になる――」


 その静かな告白は、どんな叱責よりも重く、アウレリオの心を打った。彼の眼底で、淡い火が瞬いた。掻き消えそうな、けれど確かに温かい焔。


「……俺が、あんたの立場であったなら、迷わず首都に取って返すだろう」


 “父親”――その一語が、ふたりの男の間に国境も身分も超えた、ひとすじの道を通した。アウレリオの瞳が、初めて激しく揺れた。


 ヴォルフの言葉が灯した小さな焔を、わたしはそっと囲うように歩み寄る。彼の告白によって生まれた、痛みを伴う温かい沈黙。それを破らぬよう、そっと声をかけた。


「ヴォラント枢機卿。もう一度だけ、あなたに決断をお願いに参りました」


 彼は、まるで壊れたもののように、く、と喉の奥で笑った。それは嗚咽が混じった、ひどく痛々しい笑みだった。


「決断ですと? 女王陛下、あなたはこの惨状が見えておいでか。報告は錯綜し、兵は恐怖に凍りつき、連絡は途絶したままだ。この私に……この私ひとりに、一体何をしろと仰せられる!」


「私は――」


 アウレリオの声は掠れ、胸骨の奥で、砕けた祈りが擦れるような音を立てた。彼は、まるで己に言い聞かせるかのように、その身を縛る鎖の名を、ひとつひとつ数え上げる。


「共和国西部方面軍総督です。国民議会の承認なく、この軍を動かすことは許されない。それは非常立法委員会より“反逆”と断ぜられましょう。作戦の発動には、大統領府、そして議会代表八名の……連名承認が要るのです」


「それが、あなたを縛る法だというのですか?」


 わたしは、彼の言葉を、静かな一語で遮った。

 きしり、と床板が鳴る。わたしは、もう一歩、踏み出す。彼の揺れる瞳を、真っ直ぐに見据えて。


「その法は……山向こうで息絶えたと言わざるを得ません」


「……何?」


「ハロエズとこの砦との間には、距離およそ十五リーグ。その間には山稜が横たわっています。――それでも、届いたあの衝撃――」


 わたしはそこで、剣帯に懸架されたマウザーグレイルの柄頭に、そっと指を触れた。ひやりとした感触が、恐ろしい真実を伝えてくる。


「わたくしが携える聖剣が爆心を解析し、こう告げました。

 中心から半径三リーグ圏内では、木造・石造建築の九割が即時崩壊。七リーグ圏内では人体致死率、七割五分。

 辛うじて生存が望めるのは、半径八リーグよりも遠い場所のみ――」


 わたしの声は、悲しいほどに、凪いでいた。


 卓上に散らばる駒は幾つも無惨に潰され、ただひとつ、白木の塔だけが、彼の指から滲んだ血で黒々と染まっていた。その駒を、わたしは指でそっと弾く。赤いインクがじわりと広がり、紙の湖面に小島が沈んだ――それが、首都だ。


「……まとめれば、こうです。ハロエズ盆地は“一息で灰に変わる”規模の熱と圧力に飲み込まれた。そして、盆地は周囲を高い山々に抱え込まれている。――逃げ場など……どこにもない」


 わたしは息をのみ、彼が視線を落とす地図を、指先でなぞった。


「ですから、申し上げます。枢機卿閣下。たとえ虚無が首都直上を外れたとしても、“許可を待つ法”は、もはや……存在しない、と」


 灰がひとひら、ふわり――そして、彼の肩章へ静かに落ちた。

 わたしの言葉が幕舎の澱みを切り裂いた途端、空気がぴしりと凍りつく。その場にいた誰もが息を呑み、絶望が、無数の細い刃となって肌を刺した。


「そんな……ありえない……」


 枢機卿の喉から、押しつぶされた声が漏れる。


「それでは……妻も……娘も……」


 言葉の尾が、切れた弦のように震えて消える。

 彼のまなざしは、もう地図を見てはいなかった。この薄暗い幕舎の向こう、わたしには見えぬ誰かの面影を、必死に追って揺れている。


 沈黙は、時の刃より冷たい。

 その氷を砕いたのは、ヴォルフが一度だけ、ごつりと金属籠手の甲を鳴らした音だった。


「……絶望するにはまだ早い。だからこそ、今すぐに動くしかないのだ、閣下」


 その声に、わたしも胸の奥で息を整え、腹帯をそっと押さえた。胎内の脈動は、微かながら確かに続いている。山を隔て、法が死んだ、この場所でも。


「そうです。諦めてはなりません」


 わたしは、彼の魂に直接語りかけるように、一歩、踏み出した。


「あなたの中には、いくつもの『あなた』がいるのでしょう。

 民を守る将軍が。魂を導く司祭が。そして……何より、愛する子を想う、ひとりの父親が。そのすべての声に、今こそ耳を傾けてください」


「簡単に、言う……。だが、責を負うのは――」


「あなた一人ではありません!」


 わたしは、彼の言葉を、静かに、しかし決して退かぬ響きで遮った。彼の瞳を、射抜くように見据えて。


「もし、この決断が、後に誰かの歴史で愚行と断じられるのなら。もし、その責めを誰かが負わねばならぬのなら……その罪枷は、わたくしが、あなたと共に背負いましょう。

 わたしくは、リーディスの王冠を、民から与えられたこのすべてを、脱ぎ捨てる覚悟でここに立っています!」


「なっ、なんですと……!?」


 枢機卿の、そして彼の背後に控える兵たちの目が見開かれる。


「隣国の……ただ、隣国の問題に、女王であるあなたが、そこまで……どうして……」


「咎は、共に分かち合いましょう」

 

 わたしは、祈るように繰り返した。その声は、もう震えていなかった。


「リーディスの女王としてではありません。あなたの隣に立つ、ただの人間として。……いいえ」


 わたしは、そっと腹部に手を添える。この、確かな命の重みを感じながら。


「……子を宿すただの母として。わたくしは、未来を諦めたくないのです」


 その言葉は、もう、ただの祈りではなかった。国も、立場も、すべての鎧を脱ぎ捨てて、なお燃え尽きることのない、魂の願いそのものだった。


 わたしの宣言に、幕舎全体が、まるで息を詰めたように、しんと静まり返った。

 アウレリオ枢機卿の瞳が、答えを求めてわたしを射抜く。その揺らぎに応えるように、わたしは覚悟を決めた。


「わたしくは精霊の巫女。わたしの持てる力、そのすべてを厄災に見舞われたサニルの方々のために捧げると、今ここで誓いましょう。

 その決断の証として、わが魂の象徴たる姿をいまお見せいたします。どうか、ご覧ください……」


 わたしはマウザーグレイルの柄にそっと触れて、告げる。


「レシュトル。『Système de l'Épée Sacrée : Prêtresse et Chevalier』(システム・ドゥ・レペ・サクレ:プレトレス・エ・シュヴァリエ)――巫女と騎士のシステム、起動申請」


≪――申請承認 起動フレーズ、確認。拘束索、全解除。詠唱権限をメービス・マティルデ・アデライド・フォン・オベルワルト=リューベンロートへ≫


精霊子ちからよ、器たる我のもとへ――集え」


 幕舎の外で砦が軋む音さえ、いまは遠い。聞こえるのは、自分の鼓動と――どこからともなく重なってくる、もうひとつの微かな律動。それは 精霊子が巡り、いのちへさざめく雫の脈拍。触れもしないのに、胸膜の裏で静かに反響している。

 しん、と世界が息を詰めた無音の底で、二つの拍がほの白く融け合った。


パキンッ。


 早春の、夜明けの湖に張った薄氷が、最初の光を受けて割れるような、澄み切った裂音が幕舎に響いた。

 わたしの背で、凝縮された光が一つの小さな星となり、――次の瞬間、その星から、音もなく、純白の翼が花弁のように開いた。一枚一枚の羽根が、まるで月光を紡いで織り上げたかのように、柔らかな光を宿している。


 はらり、はらり――。


 金と銀の燐光が、雪のように舞い落ち、燻っていた炭の匂い、血と鉄の匂いが満ちていたはずの幕舎の空気が、まるで夜明けの高山のように、清浄で神聖な香りへと転じていく。

第七百七十一話「ほしいものすべて――砕けた瓦礫の下にも、あの人の瞳の奥にも」は、「死の風景」と「命の火種」が対峙する回です。


構造の解説 三幕構成の内的転位

第一幕 砦帰還と“見捨てられた戦場”

 冒頭は焦げと灰の「匂い」から始まり、感覚の底に“死”が沈殿していることが明示されます。

 ヴォルフの腕から地面へ足を下ろすメービスの動作に、個としての立ち上がり=女王の覚醒が暗示される。

 将校との応対では「国家」と「無力」の対比が浮かび上がる。あくまでこの砦は“政府”に繋がっていない、「事後の土地」として描かれます。


第二幕 幕舎での対峙、そして“法の死”

 アウレリオ枢機卿の登場により、「父」対「軍人」の葛藤が露出していきます。

 ヴォルフの言葉が“国境を超える父性”を差し出し、それによって揺らぎ始めた心に、メービスが“法の死”という告発を突きつける。

 マウザーグレイルの解析結果と地図の駒が、「論理」と「感情」を同時に瓦解させる演出。


 このパートの核心は、「法はもう存在しない。あるのは人の決断だけだ」という近代の崩壊であり、高い緊張感を保ちます。


第三幕 魂の告白と“巫女の顕現”

 すべての立場・理屈を脱ぎ捨て、「ただの母として」語られるメービスの宣言が、物語を“法の外”から“命の側”へと引き戻す。

 ヴォルフとメービスの言葉は対であり、彼が「父になる」、彼女が「子を宿す母」として語ることで、物語全体が“国家の物語”から“家族の物語”へシフトする。

 その魂の答えとして、巫女システムが起動。光の顕現=希望の火は、これまで「虚無」に奪われてきたあらゆるものに対する、静かな反撃の始まりです。


主題的考察 死の中の対話、法なき時代の選択

1. 「法は山向こうで死んだ」

 これは本話の中心命題です。ハロエズという“物理的”な距離が、国家と法の届かない空間=真空地帯を作り出し、そこに生きる人間たちが、“規範”ではなく“共感”に基づいて動かざるを得ないという、極限の状況が描かれています。


→ これは現代的な問いにもつながります。


 法が機能しないとき、人はどうやって倫理を持つのか。誰が責任を取るのか。

 そして、“責任を共有する”ことで初めて人間は孤立から解放されうるという思想が、メービスの「咎は共に背負いましょう」に凝縮されています。


2. 「父と母の名をもって立つ」

 ヴォルフが“父になる”と告げたことは、「王配」や「将軍」といった社会的地位を超えた私的な存在性の提示です。

 それに対してメービスが「王としてではなく、母として語る」と応じる。

 この瞬間、二人の関係性は“公的な同盟”ではなく、“命を基礎にした共同体”として定義し直されます。


→ この「命が語る政治」は、かつての「統一管理機構」「システム・バルファ」の非人間的機械性への対抗軸でもあり、「デルワーズ=“母性の系譜”」という構造を、地上にもう一度引き戻す行為でもあります。


3. 顕現の詩学――翼はなぜ舞うか

 翼の描写は、匂い・光・音の交錯により、まさに五感を一瞬で“夜明けの高山”へ導きます。


 金属のにおいが清らかな香りへと変わり、閃光が音もなく花弁のように広がり、二つの拍動が“重なり合う”ことで、命の共鳴が物語の芯になる。


 この「“非戦闘的な奇跡(翼はただの無意識の願望が形を取った幻影にすぎない)”」こそ、メービスが“巫女”であることの意味。

 力の発現ではなく、魂の構造が他者に可視化されるという、美しくも静かな告白です。


技術的注意点

 視線の切り替え(地図→駒→灰→目線)。

 耳鳴り、膝の震え、舌の痺れ、鼓動の共鳴といった身体感覚と内面の不安が外の描写と結びつく。

 会話のと緩急。

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