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秘めやかな違和感と、やわらかな支え

 「それでは、本日はこれにて失礼いたします。一度王立侍医院に戻り、ミツル様の治療方針に基づいた体制を整えた上で、明日にでも正式に先王陛下の診察を執り行いましょう」


「はい。よろしくお願いいたします」


 侍医司の一行は一礼ののち、白衣の裾をそろえて退室した。重厚な扉が静かに合わさり、金具がかすかに触れ合う乾いた音が消える。

 たった今まで熱を帯びていた空気は、波紋が収まるみたいに静まり、胸に溜まった緊張がひと息とともにほどけていく。


 深く吸って、ゆっくり吐く。薬草の青さと紙の粉っぽさが薄れ、呼吸はやっと自分のものに戻った。


 ふと顔を上げると、ヴィルが無言でこちらを見ていた。

 鋭い青に、今日は和らいだ色が差している。受けた光の角度のせいだろうか、不安の輪郭まで包むようで、胸の張りがゆるむ。


――ほんと。彼がいるだけで、こんなに心強いなんてね。不思議だ。


 出会った頃の彼は、粗野でぶっきらぼうで、瞳の底にいつも遠い憂いを宿していた。不器用な優しさに、私はよく足をもつれさせた。

 けれど今、光の中の横顔は、余計な棘が静かに落ち、肩の力の抜けた呼吸が周囲の空気までやわらげる。孤独に剣だけを握っていた頃の自分が、少し遠くなる。


「ヴィル、あなたにもいろいろと心配をかけさせてしまったわね」


 声に小さな震えが混じる。彼は静かに首を振った。喉仏がひとつ上下し、手袋の親指が無造作に縫い目をなぞる――“気にするな”という温度が、その仕草に確かに宿る。


――ありがとう。


 心の中でつぶやくと、彼の口元に淡い笑みが灯った。目尻の皺が、やわらかくほどける。


「そんなことはないさ」


 短い一言が胸に落ちる。言葉より先に、共有してきた時間の手触りが意味を伝えてくる。


「グロンダイルの名を受け継ぐお前が、こうして今は皆に頼られる存在になっている。それが俺には何よりも嬉しい……」


 私は、“王女誘拐の大罪人”とされた父ユベルと、“国を裏切った”とされた母メイレアから生まれた子。忌避されて当然の身が、今は“黒髪のグロンダイル”として王家を支える一人に数えられている。

 そこに至るまで、多くの手があった。お祖父様の庇護、選定の儀の修羅場、玉座での対峙、カテリーナの工作、そして――影でも日向でも、いつも彼がいた。


「あのね、ヴィル……私の話を聞いてくれる?」


「お、おう?」


「以前の私はずっと一人で、頼れるのは剣の中に宿る茉凛だけだった。それでもね、彼女さえいればやっていけるって思っていたの。

 でも……それじゃダメだったんだね。誰かのためにできることをする。そんな大事なことを考える余裕も、勇気も持てなかったんだから。そうやって、一人で突き進むことに慣れてしまっていたんだよね……。

 けど、今は違うよ。人と協力し合える。こうしてお祖父様を救うために、たくさんの人々が手を貸してくれている。

 どうしてそうなれたか、わかる? 全部……ヴィル、あなたと出会えたおかげなのよ」


 言い終えると、呼吸が少し上ずっていた。途中で気持ちが崩れてしまわぬよう、一息に言い切ってしまったみたいで、舌の先に乾きを覚える。


――ああ、まただ。肝心なところで、言葉が少し遠回りになる。


 照れ隠しなのか、感情の逃げ場なのか。それでも言葉にすると、胸の結び目がするりとほどけていく気がして、ほっとした。


 ヴィルは目を細め、穏やかに笑った。視線が一瞬だけ私の唇をかすめ、すぐに目の奥の光へ戻る。その無意識の往復に、自分の心がわずかに跳ねる。


「はて、俺が何か感謝されるようなことをしたか?」


「なによそれ……せっかく真面目に言ったのに。これじゃ馬鹿みたいじゃない」


 わざとむくれて見せると、彼は大きく息を吐く。肩がほんの少し落ち、眉間の皺がほどける。


「そう言われると、なんだかこそばゆいんだがな。

 ……だが、悪くない。けどな、お前が前に進めたのは、他でもないお前自身の意志の力だ。俺はただ、その背中を押しただけにすぎん」


 素っ気なさに見せかけたやさしさ。何度でも“ひとりではない”を確かめさせてくれる声音だ。

 私は無意識に頷き、耳の後ろへ落ちた髪を指で払う。指先がかすかに震え、そこへ彼の視線が触れて、すぐに外れる。見られた、と思った瞬間、胸がきゅっと縮む。


 鞘に収めたマウザーグレイルへ指を伸ばした。かつて“対精霊族殲滅兵器”の補機と聞かされて震えた白銀は、今は掌の熱を受け止める静かな支えだ。

 その剣の中の茉凛は気を利かせているのか、黙って見守ってくれる。柄革の温度が脈に沿ってじんわり伝わり、絡まっていた心をほどいていく。


「ヴィル……本当に、ありがとうね」


 何度でも言いたい言葉。彼は髪をかき上げ、窓辺へ視線を流した。雲が裂け、薄い光が床の木目に指先のような筋を描く。


「私ね……これからはもっと、みんなの力を借りながら歩こうと思うの。一人ですべてを抱え込むんじゃなくて、必要なときには頼っていきたい。お祖父様を救うためにも、そして私が私らしく生きるためにも、信じられる人たちとともに歩みたいの」


 口にすると、決意の輪郭がはっきりする。彼はほっとしたように目尻をゆるめ、靴先で床をそっと確かめるみたいに重心を移した。


「それでいい。お前が選んだ道なら、俺はどこまでだって支えるだけだ」


 遠くから差す光みたいな声が、不安の影を薄くする。私は飾り気のない鍔を撫でた。ここにある力――そして、私を守る人がいる事実が、足もとを確かに照らす。


――どれほど道が険しくても、私は前を向いて歩いていける。そんな気がする。


 不思議な感覚。私を支えるのは茉凛だけじゃない。この人が、当たり前のようにそばにいて、見守ってくれる。その姿が、どうしようもなく愛おしいと感じる瞬間がある。けれど、それが何を意味するのか、まだうまく言葉にできないままで――。


――これからも、ずっと一緒に、ずっとそばに……。


 無意識に浮いた願いに気づいた途端、胸がふわりと浮く。くすぐったさを隠すみたいに、私は視線を剣へ落とした。きっと茉凛は、黙ってそれを知っている。


「ヴィル、行きましょう。まだ、やるべきことは山積みだし……」


「そうだな。これからだ」


「私は、お祖父様をしっかり救ってみせる。何より、自分にできることを、精霊魔術の可能性を、ちゃんと証明したいの。まずは明日に向けて、十分にシミュレーションしなきゃ」


 彼は踏み出した足をゆるめ、私の歩調に合わせる。いつものように、ほんの少しだけ後ろを歩き、風よけになる位置で。並んだ影が床の光の帯に重なり、彼の肩幅が私の影をやさしく覆う。半歩うしろで、風だけを引き受けてくれる。


 明日、侍医司と行う陛下の診察。きっと新しい始まりになる。険しい道でも、この存在がそばにあるなら、越えられる。


 もう一度深く息を吸う。朝の光が差し込み、胸の迷いが薄氷みたいに解けていく。鞘へそっと触れ、指先に伝わるぬくもりを確かめて、一歩を踏み出す。


 掌の温みと背の気配こそが、何よりの救いだ――。


 ただ、心の奥で小さな“ささくれ”が残る。光に満ちた静けさの中、違和感が消えない。何かを見落としているのか、それとも――。


 けれど今は、先王陛下の診察が先だ。私はそのささくれを胸の奥へそっとしまい、歩みを止めないことだけを選ぶ。


――もしこの違和感が正しければ、いずれ形を持って現れるだろう。大げさな勘違いであれば、それでいい。


 薄い迷いを振り払って顔を上げる。天井近くのステンドグラスから零れた光が床で揺れ、私たちの影を静かに彩っていた。

シーンの雰囲気と意味

 物語は、「侍医団」が王立侍医院に戻っていく場面から始まり、主人公ミツルが静寂の戻った部屋に残されるところから描写されています。


 議論の熱気が去り、静寂が戻った瞬間に深呼吸をすることで、「安堵」と「次に備える緊張感」が同居していることが伝わってきます。そこに差しこむやわらかな光が、物語全体の「希望」や「前向きさ」「新しい展開への予感」を象徴していると言えます。


主人公・ミツルの内面

ミツルの出自と負荷

 ミツルは「国を裏切った」とされる両親から生まれ、“忌むべきグロンダイル”の名を背負っている。それにもかかわらず、今では「黒髪のグロンダイル」「精霊魔術師」「聖剣を携える伝説の巫女」など、王家にとって不可欠な存在となっている。これまでの歩みがいかに困難だったかは、「一人で剣を振るうしかなかった」という言葉に集約されている。


内面の変化と安らぎ

 過去の孤独と苦難を思い返しつつ、今では多くの人の協力を得られる立場になったことで、「もう一人じゃない」という安堵感を強く抱いている。それに加え、ヴィルがそばにいてくれることが大きな心理的支柱となっているのが作中から窺える。ミツルにとってヴィルの存在は、単なる仲間以上の意味を持ちはじめている。


ヴィルというキャラクター

過去と現在のギャップ

 初登場時は「ただの酒飲み」「ぶっきらぼう」「何か秘密を抱えている不器用な男」。現在は「太い大木のようなどっしりとした佇まい」で、ミツルを包み込み支えてくれる存在。彼自身もかつて抱えていた“棘”(親友ユベル・グロンダイルの冤罪など)を削ぎ落とし、ミツルに寄り添う余裕を身につけている。


ミツルへの理解と支え

 「お前が前を向けたのは、お前自身の力だ」という台詞からもわかるように、ヴィルはミツルを過剰に保護しすぎるわけではなく、彼女が立つ力を認めたうえで後押ししている。その態度は一貫しているものの、意味合いが当初の保護者的なものから変化している。ミツルにとって自分を尊重してくれる大切な相手となりつつあり、さらに無意識下では特別な感情を育みはじめている節もある。



ミツルとマウザーグレイル(剣)

剣の象徴性

 マウザーグレイルはかつて“対精霊族殲滅兵器”デルワーズの補機・安全装置という、ある意味「忌むべき力」を秘めた存在。しかし、今ではその剣が心の支えとなり、宿る(茉凛)も静かに助けてくれる。


 呪いのようだった出自や運命を、守る力へと転化するという、主人公の内面的変化とも重なる重要なモチーフになっている。


茉凛の沈黙

 二人きりの時以外、ここぞという時に茉凛が黙っているのは、「ミツル自身が自力で気づき、乗り越えるべきことを尊重している」「今は言葉ではなく、そっと寄り添うのが一番」という意志の表れとも考えられる。これは、ヴィルとの関係にも少し似ていて、言葉ではなく静かに後押ししてくれる存在感が際立っている。



無意識に募るヴィルへの想い

“ずっと一緒に、ずっとそばに……”

 ミツルの胸中に「無意識の想い」がわき上がっていることが描写される。自分でも戸惑いつつ、一種のときめきに似た感覚をおぼえている。これは戦友や仲間という枠を超えた、相手を大切に想う感情が芽生えつつあることを示唆している。


戸惑いとくすぐったさ

 ミツル自身、まだその気持ちを正面からは受け止めきれていない様子。剣に視線を落として隠す仕草や、「茉凛にはきっと知られている」というくだりが、微笑ましい反面、今後の恋愛的展開への期待を膨らませる演出になっている。


“心に引っかかること”と今後の伏線

違和感の存在

最後に「どうしても心に引っかかること」「些細な違和感」という表現が加わる。具体的に何なのかは明示されておらず、読者が想像をめぐらせる余地を与えている。


ヴィルとの関係性の変化

はじめは不器用で荒々しかったヴィルが、今ではミツルにとって「愛おしい」と思わせるほどの存在に変化している。互いに徐々に心を開き、信頼を育んだ結果、無意識の好意が生まれつつある。


物語を牽引する“違和感”

 ミツルが最後に覚えるわずかな不穏さが、物語の次なる展開のキーポイントとなりそう。


ファンタジー要素とヒューマンドラマの融合

 王家の因縁、特別な剣と精霊、かつての大罪人と裏切り者の子という重い設定がありながら、そこに「人を想う気持ち」「仲間との絆」というヒューマンドラマが織り交ぜられている。そのため、バトルや政治劇よりも“人間性”に強い興味を抱く構成になっている。


今後の展開予想

先王陛下の診察結果

実際の容態がどうなっているのか。何らかの陰謀や秘密が絡んでくるのか。診察の場面が今後の一大イベントとなりそう。


ミツルの抱える葛藤

 無意識の好意をどう受け止めるのか。自分の出自と王家を救う役割、そしてヴィルへの想いが噛み合うのか、それとも衝突するのか。


ちいさな違和感の正体

 もしそれが重大な謎に直結しているなら、物語はミツルとヴィルがその困難を共に乗り越える姿へと展開していく可能性が高い。


 こうした「ほのかな恋慕」と「暗い運命の気配」が同時に描かれることで、“温かさ”と“わずかな不安”の両方に惹き込まれ、先の展開を知りたくなる構成となります。



1. 茉凛とは何者か

マウザーグレイルに宿る存在

 茉凛は、対精霊族殲滅兵器デルワーズの補機・安全装置として生まれた剣「マウザーグレイル」の中に宿る者です。前世で再生なったデルワーズの精霊子の器の中に、意識と記憶もそのすべての全情報を取り込まれ、転写され(オリジナルは元の身体に戻されている)ました。バルファ世界にデルワーズが帰還した後、どのような理由か、ミツル・グロンダイルをサポートする目的でマウザーグレイルの中にて目覚めました。


ミツルにとっての“心の相棒”

 前世の物語では、柚羽 美鶴が孤独を抱えていた頃、唯一心を通わせられる存在が「茉凛」でした。転生後は、剣の中から人の言葉を交わすようにして、茉凛からアドバイスや助けをもらいながら、困難を乗り越えてきた背景があります。


なぜ茉凛は黙っているのか

“気を利かせている”可能性

 本文中では、「最近は剣の中の茉凛も気を利かせてくれているのか、肝心なときは黙って見守ってくれているようだ」とあります。


精神的な自立の兆しを尊重している

 かつてのミツルは孤独で、ひたすら茉凛に助けを求めるような状況でした。しかし、今はヴィルをはじめとした多くの仲間ができ、彼女自身も精神的に成長しています。そのため、茉凛が“あえて口を出さず、ミツル本人の意思を尊重している”という見方もできます。


茉凛が感じる“これ以上の介入は不要”という判断

 ミツルが自分の足で立てるようになった以上、茉凛は余計な言葉で彼女を惑わせないよう、あえて沈黙している――これは、良い意味での“距離感を保ったサポート”とも言えるでしょう。


“剣の機能”に飲み込まれている可能性

 一方で、ミツルが懸念しているように「剣の機能を引き出すために中に埋没し、人間性を失いつつあるのではないか?」という視点もあります。


補機・安全装置としての茉凛

 マウザーグレイルは、元々“対精霊族殲滅兵器”デルワーズの一部。それを安全に扱うため、茉凛が“内部制御”を担っている可能性があります。


茉凛自身が“強大な力”と融合しつつある危険性

もし茉凛が剣の機能を最大限発揮するために、意識や“人間らしさ”を代償にしているのであれば、茉凛の沈黙は“技術的”あるいは“システム的”なものとも解釈できます。結果として、茉凛が会話できるほどの余裕を失いつつあるのかもしれません。


 これは「黒い記録媒体との接触による共振解析の解放」、「脳内統合デバイス的な大図書館での知識解読や吸収」、「剣の中の内的世界の構築」、「解析に専念すると言って黙り込んでしまったシーン」、「一瞬で十年分百年分の計算」、前回の「まるで無機質なAIのようなコマンド詠唱」などを見ても、不穏な動きとして見ることができます。


なぜ気にかかるのか

ミツルとの“心の絆”があるから

 茉凛はかつて、美鶴の孤独を支える唯一の存在でした。だからこそ、今黙っていることに対して、ミツルは「気遣いかもしれない」と思う一方で、無意識下では「何かおかしいのでは?」という違和感を覚えているのかもしれません。


ずっと側にいた相棒だからこそ、妙な沈黙が不安

 単に静かなだけなのか、それとも深刻な理由があるのか――ミツルは言語化できない不安を抱き始めていると考えられます。


剣の危険性

 “対精霊族殲滅兵器”の補機であり、IVGシステムといういまだ解放されていない超科学技術、さらにはデルワーズ自身の記憶など、禍々しい性質を持つ剣は、本来なら人が手にしてはならないほどの危険性を孕んでいます。ミツルがこれを扱えるのは、茉凛のサポートあってこそ。


茉凛が剣内部で“制御”を担っている

 茉凛が黙っているのは、限界まで力を引き出すために意識を剣の制御へ回している可能性も考えられます。もしそうであれば、そのまま意識が“剣に吸収”されてしまう恐れがあるかもしれません。ですが、茉凛は決してそれをミツルに悟られたくないと考えているかもしれません。


 いまだ解決されていない謎、虚無の悪夢や不具なる紋章、クロセスバーナの思惑など、問題は山積しています。茉凛が機能の解放に向けて水面下で動いている可能性はあります。


「強大な力」と「人間性」のトレードオフ

 茉凛が黙っている=存在が薄れていくことは、制御が強固になっているサインともいえる反面、茉凛という“人格”が剣に飲み込まれるリスクをはらんでいます。


ちいさな違和感”が今後の伏線に?

 本文のラストでは、ミツルが「どうしても心に引っかかる事がある」と感じ、しかし先王陛下の診察が優先だと押し込めている状態です。この“ちいさな違和感”は、茉凛の沈黙とも結びついているかもしれません。


黙ったままの茉凛に何か変化が?

 ミツルが感じるささくれのような不安は、「茉凛が沈黙しているのは、良いことではなく、むしろ警告かもしれない」という直感かもしれません。


今は事態が進行中で顕在化していない

 茉凛の“人格”が剣と一体化しているとしても、今すぐ目に見える形で影響が出るわけではない可能性があります。ミツルが本格的に剣の力を引き出そうとしたとき、あるいは極限状態に陥ったときに、茉凛がすでに人の姿を保てないほど消耗している――そんな展開もあり得そうです。


今後の展開予想

茉凛の意図的な沈黙

 「ミツルの自立や人間関係の変化をそっと見守りたい」という、あくまで茉凛なりの優しさに由来するもの。


茉凛の“人間性”の衰弱

 デルワーズの制御という重責を担ううち、茉凛が剣の中で徐々に人格を失いつつある。ミツルのちいさな違和感は、茉凛の限界を感じ取っている。


剣の力にまつわる陰謀・伏線

 他の謎と結びつき、大きなクライマックスへ向かうきっかけになる。このように、“茉凛の沈黙”は物語の後半に向けて大きな波乱を生む可能性を秘めています。単なる“気遣い”であればよいのですが、もしも「これ以上喋る余裕がないほど茉凛自身が剣の内部で追い詰められている」というのであれば、それはミツルにとって重大な問題へと発展しかねません。


まとめ

 茉凛の沈黙は、一見すると「ミツルをあえて見守っている」ための優しい配慮に見える一方で、実は「剣の危険な機能を制御するために意識を奪われつつある」という可能性を払拭できません。

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