暖簾の向こう
ある日、俺は掘り出し物を求め、古本やホビーなどを扱う中古屋を訪れた。
車を止め駐車場に降り立つと、徒歩で店舗入口へと向かう一人の男が目に入る。
ベージュのチノパンに黒いナイロン素材のジャケット。そして、強力な男性ホルモンにより禿げ上がった頭頂部。
この男、もしや・・・
そう思いながら男の後に続いて俺は入店した。
入店後、男は真っ直ぐ奥まで進み、そのまま18の数字に大きなバツが描かれた暖簾をくぐっていった。
やはりアダルトコーナーに行ったか・・・
男の雰囲気から暖簾の向こうへ行くという確信があった。
そして、俺も周囲に人がいないタイミングを見計らい暖簾をくぐる。
法を犯している訳では無いが、このエリアに立ち入るのはいつも少し恥ずかしい。
いや、待てよ?
俺はふと考えた。あの男からそういった雰囲気が出ているように、俺からもそんな雰囲気が出てるのでは?
そう思うとなんだか周りを気にするのもバカバカしくなってきた。次からはなんの抵抗もなく暖簾をくぐれそうだ。