激おこキジトラは如何にして看板猫になったか
激おこキジトラ、彼女は如何にして看板猫となったか。
子猫を養育していた時、もふちゃんが入院してしまちゃんを一人きりにできなくて事務所に連れてきた。
事務所には看板猫の女の子のキジトラがいつもいる。
※このときは、実家の父母の部屋にステイしていたが、変わらず出勤していた。
キジトラは子猫のしまちゃんに対して、これといったリアクションは取らなかったが、ただジッと穴があくほど見ていた。
そして、夕方家に帰ってから……兄や母に激おこだったのだ。
そもそも、キジトラはどこから来たのか。それは2020年の12月の半ば、兄が拾って来たのだ。
拾ってきたというのはちょっと違うかもしれない。
キジトラは、道路の真ん中から動かなかったのだ。その時兄が運転していたのは、大型の車だった。あまり交通量のある道ではなかったが、動かいなキジトラを道の端へ動かそうと抱き上げたが最後だった。
兄にしがみついて離れなかったのだ。
その時、わたしは事務所にいて兄からの電話を受けた。
「猫がさ……抱きついて離れないんだよ」
半分困っているような、それでいて半分嬉しそうな声だった。
わたしは答えた。
「そこに置いてきたら、お前は一生後悔する。連れてくればいい。まずは事務所で飼える」と。
キジトラが事務所に来るまでの短い間に、わたしは猫の受け入れ準備をした。前の猫が使っていたトイレに砂を入れを家から持って来た。まずはトイレだ。それから、猫のご飯や入れ物やら、寝床にちょうどいいくらいの段ボール箱、それに敷く古バスタオル。
すべてそろったころ、兄が帰ってきた。兄にしがみついていたのが、キジトラだった。
触るとあばら骨が分かるほど、痩せいた。けれど、威嚇したりかくれたりすることなく、テーブルに用意していたご飯を平らげ、両親やわたしにあっさり懐いた。
我が家には猫が二匹いるし、実家は建て替えて数年だから猫は入れたくないということで、当面事務所で暮らしてもらうことになった。
※その晩から数日、強い寒波が来たので、キジトラがもし保護されなかったらと思うとベストのタイミングでうちに来たことになる。
キジトラは人嫌いではなかった。事務所に来るお客さんにもフレンドリーだった。
最初こそ、里親を探そうとしていたので「名前はつけないこと」と家族で取り決めていたのに、母がいつの間にやら名前を付けて呼んでおり、結局のそのまま事務所の看板猫となった。
キジトラは、とにかく被毛が細く柔らかく、今まで飼ったどの猫よりも手触りが抜群に良い。
そのせいか、キジトラを撫でたお客さんはメロメロになった。そして、なぜか新規のお客さんが増えた。招き猫効果か。
そんなキジトラですもの。みんなに蝶よ花よとされていたのに!!
突然やってきた、子猫にみんなの関心をさらわれて、プライドがいたく傷つけられたらしい。
加えて、嫉妬もあったろう。
一番の保護者、母までも子猫に夢中だったからなおさら腹が立ったのだろう。
母や兄の手をひっかいて、大荒れ、激おこだったという。
そんなわけで、キジトラはしばらくお休みということになった。実家の両親部屋に残され、のびのびとすごすことになったのだ。
やってきたお客さんからは「あれ? キジトラちゃんは?」と聞かれる毎日だった。
やがて子猫たちは、里親さんの家へと旅立ち、もどってきたキジトラだったが……ストレスフリーの毎日で、すっかり丸くなってしまったとさ。
とにかく、さわり心地が抜群によいのです。
穏やかな性格で、お店向きの猫です。