電車に乗っていた時の話。
タタンタタン……タタンタタン……
レールの上を走る電車の中は
あらゆる人の話し声
自分とは関係のないどうでも良い話
社内で騒ぐ子供たち
それは駅に停車するたび増えていく
窓の外に広がる音のない町並みのなんと平和なことか
社内の景色の喧しさに目を閉じる
耳を塞ぐことのできないささやかな抵抗
それでも騒々しさからは逃げられない
嗚呼、五月蝿いなぁ……
鈍く風を切る音が聞こえると同時
まぶた越しに受けていた陽光は消えて暗闇になる
トンネルの中は風を切る音とレール上を走る音が響き
すべての音をかき消した
トンネルを抜けて光が戻った時
妙な静けさを感じて目を開けると
そこには誰もいなかった
タタンタタン……タタンタタン……
前触れもなくたくさんの人たちが居なくなったのを
知ってか知らずか何事もなかったかのように
電車は止まることなく走り続けている
静かで平和な車内には
自分の影と座席の影とつり革の影のみが存在していた
座席にもたれかかるように腰掛けて
差し込む陽光に包まれるような気持ちで目を閉じた