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我が献策  作者: 火御成飛
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第八章 第二節 ネグレクト問題

 さて、第二節です。

 大問題のネグレクトなのですが。

 正直に申し上げて、この問題は私にとって「お手上げ状態」なのです。

 米国や中国ならば方法があるのでしょうが、ここ日本国において「先制的に発見して保護」することは極めて難しいと言わざるを得ません。


 何を隠そう私もネグレクトの出身ですから、その闇の表層くらいは理解しているつもりです。

 しかし今のネグレクトは「ペットを始末する」ぐらいの感覚で実の子供を殺害します。身勝手などと言う範囲を超えて、自分が何をしているのか解らない狂人と化しているのです。


 その上、ネグレクトに対する報道のバッシングは苛烈を極めますから、両親は何があっても隠蔽します。実子の命より、自分の私利私欲、保身を優先します。

 そして子供達は親なくして生存は見込めない訳ですから、言う事を聞くしかない袋小路にハマッているのです。

 その絶望感にも覚えがあります。


 決して、死亡している子供達の割合が問題ではないのです。

 産まれて来たことを後悔し、殴打の苦しみに悶絶し、死の痛みを味わい尽くし、泣き叫んで死ぬだけの幼い人生。

 そんな終わり方をして欲しくないのです。

 

 先にカミングアウトしておきますが、私、自殺未遂者なんです。

 …ああ、私の場合ちゃんと足はありますよ、未遂ですからね。しかし、それも単に運が良かったのか、悪かったのか…。その話も随分と大人、それも老境に差し掛かっての話です。


 当時、両親が、あれだけ夫婦喧嘩をし、離婚をすると喚き、私を殴り、母親も布団叩きで滅多打ちにしては「躾」と言ったものです。

 昭和ですよ、昭和の時代です。

 一時、その痣を学校の先生に見咎められましてね。返答に困ったことを『今でも』覚えていますよ。


 そんな鬱積した状態ですから、学校でマトモな状態な訳がなかった。とにかくストレスを軽減したかった。

 元来、体を鍛えることが苦手だった私は、人をからかって貶めては、敵を作ったようでした。無自覚だったんでしょうね。必然的にイジメの的にされていました。

 それが中学から高校と続き、専門学校へ行かせて貰いましたが…正直、心の中は怨念で一杯でした。心理状態が「現実逃避」ではモノになるハズもなく、ただ、ただ、社会に出て逃げ回っていましたよ。


 一つだけ補足する事件があります。

 高校生の時。自分の筋力がいよいよ父親を上回った事を実感した私は、泥棒除けに備えていた「木刀」を持ち出して、いつものようにビールを飲んで荒れている父親を「襲撃」しました。

 父親が三十代? の頃、サントリービールが青い缶で、500CCのコーラが引抜きの自動販売機だっの頃の話です。父親はビールを、まるでシャワーでも浴びるかのように飲んで現実を忘れては荒れていました。

 そして、なにかにつけて母親に対して暴力を振るっていました。それをずっと見ていた私に父の怒りが解らなかったのです。

 その暴力や怒りは「私達」にも向けられた事もあり、無力だった子供である私には、どうにもできませんでした。


 その積年の謎と怨みを清算すべく、筋力のない分、武装での襲撃でした。

 結論から申し上げましょう。父は、情けないほど醜く弱かった。滅多打ちにしてやりましたよ。暴力で躾てやりましたよ。ただ、ただ、木刀で、力づくで。二度と…二度と暴力や恐怖でモノを言わせないよう、その意味が「解るように」。


 以来、私は木刀を手放さなくなりました。

 

 結局、父親は66歳だったかな? 死にました。正確な享年すら覚えていない程、どうでもいい存在に感じるのです。

 墓参り? 行く意味を感じません。


 しかし、未だに謎なのは、父が『どうして母と私達三兄妹』諸共離婚し、自分の幸せを追求する道を進まなかったのか? という謎です。

 父は嫌がっていました。生活と仕事に。その果てに、脳梗塞で憤死したのです。

「人はどこから来て、どこへ行くのか」という言葉が蘇ります。彼は…父は、何の為に産まれ、何がしたくて生き、そして死んだのでしょうか。


 人間には自分の幸福を追求する権利がありますが、子をなして育てるという事もまた、その幸福な一大事業のハズなのです。

 なのに世相と企業搾取が子育てを「別なモノ」に変貌させてしまったのではないでしょうか。


 私は「周囲からの圧力、説得」という「かくあるべし」という恐ろしい「コミュニティー理論」によって、父が『殺害』されたのではないかと考えています。

 もはや死んでしまった父から真相を聞き出す事はできません。全ては灰となって墓の下です。


 たった唯一、私が父に感謝し、尊敬できるものがあるとすれば「私が生きている」という一点のみです。自殺未遂を敢行しましたが。

 その人生は最悪の一言であり、今とて到底、幸福かどうかについては「私の基準」では「悪い」と考えています。


 従って、現在のウチで私という存在は孤独であり、私は母を死んでも憎むでしょう。

 何より憎んでいるのは、父方のコミュニティーです。

 叔父が死んだ時すら葬儀に呼ばなかった。村八分未満の扱いです。


 …失礼。少々話が脱線しました。

 私自身がネグレクトに少々、身に覚えがあり、今でも私に危害を加えた連中の顔と怨みを忘れていない以上、今、ネグレクトに遭っている子供達の心中と恐怖を察するのに余りるとだけ、申し上げたかったのです。

 

 探し出せるものならば探し出し、救出できるものならば救出したい。

 しかし、それを阻むのが「プライバシー」です。


 いや「プライバシー」を責めているのではなく、これは当然として、それでも何とか救いを求める子を救い出したいと考えるのです。


 敵…つまり両親達は必死であり巧妙です。表の顔と裏の顔は人と妖怪ぐらいに違います。

 

 ネグレクト世帯に至るには、ある程度、条件があると考えます。

 第一に『子供がいなければネグレクト世帯には成り得ません』。

 第二に『貧困に窮し、ストレスを子供という無抵抗な存在に叩き付ける』ことです。ただし資産家にネグレクトがいないのか? と問われますと割合としてゼロではありません。少ないというだけです。貧困層に多いというのは事実です。

第三に『活発になり易い三歳児辺りで、躾と称する暴力行為が目立つ』のではないでしょうか。今の今までハイハイしか出来なかった子が、好奇心と情報収集の為、アレコレと動き回る時期です。これを勘違いして暴力で弾圧しようとする者がいる可能性があります。そもそもネグレクト行為を行う者は親に成り得る者ではありません。

 

 申し訳ありません。私の頭では、これ以上のアイデアが浮かびませんが、以上の三つまでの条件に該当する世帯に対して…これはブラック寄りのグレーな提案であり、事実上、違法であることは理解しております。なので採用するか否かは、よくよく吟味していただきたいと思います…『盗聴器』使用を提案致します。


 『盗聴器』と言っても露骨に『盗聴器』と解るものではなく、例えば当時人気キャラクターストラップに仕込んだ、内蔵電源によるものや、医療測定器などを貸し出す名目で、肉体密着型医療具を無償貸与したりして、盗聴器を内部に仕込んだものを渡したりします。

 病院、保健所、役所など、複数の場所から仕掛け、捜査対象世帯として『抜き打ち盗聴捜査』を行います。


 幾ら条件を三つに絞り込んでいるとは、それでも一つの所轄署が対象とする世帯は結構な数に登るはずです。

 これらをしらみつぶしに当たって行くのは大変な労力になるでしょう。

 しかし敵はIS-Kと同じで、一般市民に潜伏している以上、ある程度条件を絞った対象の「全て」を捜査しなければなりません。


 結果として何もなければいいですが、入浴時間や夕飯の時間を狙い、不信な言動があった場合や悲鳴、助命嘆願などが複数回、聞き取れた場合は「110番通報があった」と誤魔化し、強行突入をしてでも子供の身の安全を確保できるよう、法改正は調えておくべきだと考えます。


 そうして一定期間、監視を続けて何事もなければ、リストから監視世帯を外し、近隣からの通報、110番通報でもない限りは、児童相談所に任せる方向しか思い付けません。


 本来、こうした話は米国の方が詳しいのかも知れませんが、日本はネグレクトを隠している親の見分け方について、ノウハウがなさ過ぎると実感する次第です。


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