~生徒以上教師未満の存在~
ついにこの日が来た。
教育実習の朝。少し早起きしけだるさを感じながら、学校へ行く準備をしている。
僕は、濱津良。大学で3年以上教職を学びながら教師を目指している、普通の大学生だ。
世間では、コロナの影響で、教育実習に行けなくなったとい話を聞くが、そんなことはない。僕らの大学は田舎にあり、1年近く前から実習校と連絡を取り、枠を手に入れていた。こればかりは、教授に感謝しかない。
そんなことを、考えながら支度を進めていると、時計が6時30分を指している。
「やばい送れる、間に合ってくれ」
「忘れ物はないの?いつも必ず、何か置いてくんだから」
「大丈夫だって、昨日の夜。用意したんだから」
母親が、声を掛ける。急いでいる時に限って邪魔が入る。これが実家暮らしの悪いところだ。
母との会話も早々に終え、倉庫にある自転車に足を掛ける。体はまだ少しだるいがワクワクの方が大きい。
どんな生徒に会えるのか、どんな授業をしようか。妄想は膨らむ。
そう、考えながら家を出た。久しぶりに通る懐かしの通学路。あの頃と全く変わっていない。
朝も早いせいか高校生どころか、人の姿もない。
しばらく走ると、学校が見えてきた。自転車を駐輪場に止める。
その時、一人の生徒が登校してきた。
「おはよう」と声を掛ける。